幕間②
豪華な調度品に囲まれた部屋で、金髪の少年は、彼よりも年かさに見える青年と向き合っていた。
青年と少年は何となく雰囲気は似ているものの、色が全くもって違っていた。金髪の少年が華やかな色を纏うのに対し、青年は全体的に色素が薄い。銀の色を纏っているのである。
「…ふぅん、成程…うちの魔術師長がよだれを垂らして研究材料にしたがる素材だな」
顎に手を当てた青年は、面白そうな顔をしながらそう切り出した。
「彼女はそれを独学で成し遂げたのだろう?……ふぅん」
「……兄上、絶対あげませんからね?」
「まだ何も言っていないが?」
「顔がそう言っています。彼女はダメですよ。私の切り札ですからね!」
そう切り返す、自身にとっては大切な弟でもある少年に向かって、青年はさらに笑みをこぼした。
「くくっ…切り札なのか。ではしょうがないなぁ…。それならばルディ、お前の妃にでもするか?」
それだけの功績があれば、どこぞの伯爵の養女にするのも容易いぞ。と、にやにやと人の悪い顔をした青年は続ける。
「………」
「なんだ、その気がないわけでも無いのだな」
「…いや、そんなことを言ったら、ムウファが怒り狂うなと…」
「烈火の、か。ふぅむ…それは少々厄介かな…」
「ムウファも僕の大切な友人です。手出しは無用ですからね、兄上?!」
またも顎に手をあてて、思案顔になる青年に向かって、少年は少し焦った顔で釘を刺した。
「…ではルディ、お前自身で魅了してみせるということかな?」
「…いえ、それは」
「烈火のが大切にする女性を妃にできたならば、彼がこちらを裏切ることはこれから先万が一にもないだろう」
「…ムウファは裏切ったりしません」
「はは、若いなぁ我が弟は。良い、まずはお前の思う通りにやってみよ。私は何もしないことを約束する」
「本当ですね?約束してくださいよ?!」
「本当だとも、なんとも私は信用が無いな。……そうだな、あと3年の間にお前がどう布陣を固めるか、見てから決めることにしよう」
「…わかりました、必ず兄上の役に立つように力を蓄えてみせます」
強い瞳の少年を見て、青年は満足したようだった。
「では私はもう行こう。政務が残っている」
「お時間をいただきありがとうございます、兄上」
「良い。…最近ルイネイルの周りに動きがあったようだ」
その場には誰もいなかったが、それでも少し声のトーンを下げて、青年はそのように切り出した。
「…義母上ですね」
「おそらくはな。…隣国とつながっている可能性がある。これからさらに慎重に行動せよ。……くれぐれも気を付けるのだよ、ルディ」
「…ふふ、ありがとうございます。自由に動けない兄上の手足として、恥じないように立ち回るつもりですよ」
安心してくださいと笑う弟に、フ、とかすかに笑いかけ、今度こそ青年は颯爽と部屋を出て行った。
「……クリスを妃に、なんて言い出した瞬間に燃やされるな~僕……」
どうしようかな~と、笑顔のまま少し頭をかいて、少年もまた部屋を出ていく。
その姿を見ることができるのは、いつも彼らの影に潜むものだけであったのだ。
ここまでが一つ前からの流れのつもりだったのですが、幕間を入れないと色々回収しきれない^^;そしてタイトルセンスの無さ…。