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幕間

【ある砦にて】



「……ハァァ」

「おや、どうしたの?景気の悪いため息なんか吐いちゃって」



真っ赤な髪の毛を無造作に束ねた兵士らしき少年に、格式の高い軍服を着た、人形のように綺麗な顔をした金髪の少年が訊ねた。二人の身分差はその服装からも明らかだったが、今は部屋にこの二人しかいないためか礼儀作法も気にしていないようで、そのことからも二人がかなり親密な関係であることが窺い知れた。



「……クリスから連絡が来ねぇ」

「あぁ!なんだそのことか。僕はてっきり、さっき君がぶっ放した火炎魔法のせ

いで半壊した東門の始末書についてかと思っちゃったよ」

「っそれは悪かったって言ってんだろー!調子が出なかったんだよ」



ぶすっとした赤髪の少年に、金髪の少年はますます笑いが抑えられないといった様子だ。



「くっ…あははは!…まさか屈指の炎の魔術師として恐れられている君がそんなことで悩んでるなんて、誰が想像しているだろうね?!」

「あぁーうるせーな!だいたいアイツ、2年だ!とか言っといて全然こっちに来る気配ねーしここ何か月は連絡もよこさねーし…気になんだからしょうがねーだろ!」



赤髪の彼が故郷の幼馴染をとても大事にしていることを、金髪の少年もよくよく知っていた。



「だから、君のご父君に訊ねてみればいいじゃないか?」

「父さんに聞いても、自分で見に来い。とか言って何にも教えてくれねーんだよ!見に行ける時間があったらとっくに帰ってるってのに…」

「っふふ…それは本当に申し訳ないね。僕がムウファを独占してしまってるから」

「気持ちわりぃ言い方すんなよな…」

「クリスの魔石のおかげで僕も魔力切れの心配はまったく無くなったしね…だいぶ足場は固まってきたし、そろそろ行こうか?彼を迎えに」

「んあー…あいつまだ来る気あんのかなぁ…来る気ねぇなら、無理強いはしたくねぇなぁ…」



机につっぷして煮え切らない赤髪の少年の態度に、金髪の少年は強い口調で答えた。



「……ムウファ。いくらムウファの頼みでも、申し訳ないけれど彼もいずれは僕のもとに呼ぶよ。それに放っておいても彼は勝手に名声を上げていきそうだし?」

「は?」

「影からの連絡が来てね。王都のスラムで今話題になってる孤児院があるらしいんだ。」

「…?」

「急にスラムで子供が統率のとれた動きをするようになった。幸い大きな犯罪行為をしているわけではないみたいだけれど、その中にかなり高度な魔術を使う子供までが目撃されていてね?今までスラムには魔力がほぼゼロだと断定されたような子供たちしか居なかったのにだよ?魔力ほぼゼロって覚え無い?」


「…おい、まさか」


「子供たちは皆一様に『ある孤児院で素晴らしい先生に師事した』と言ってるらしい。今はせいぜいが子供のいたずらに使われるくらいのようだけど、彼らが兵士になったら将来が怖いと影は判断している。さっそく目を付けられて強引な勧誘に合っている子もいるみたいなんだ。それをまた子供たちで撃退しているようなんだけれど。スラムは結束が強いからね」

「おいおいおい」

「ちなみにだけど、一応僕も彼には定期的に安否確認の使者を行かせててね。その使者曰く、クリスは今王都に来ている」



部屋の中のろうそくがゆらゆらと揺れた。室内の温度が2~3度上がったようだ。




「…聞いてねーぞ…」

「クリスのやることは僕にも予想がつかないからね~。一応僕らのことは忘れていないようだけど?」



金髪の少年はまた、面白いものを見つけたように片眉を上げてそう言った。



「アイツ…また勝手に突っ走りやがって…」

「まぁ、まだ今は孤児院での『先生』が誰なのか、までは噂に上がっていないようだけどね。時間の問題かも」

「…とっとと王都帰ろうぜ」

「ぷっ…うんうん、そうだねぇ。帰るにはもう少し戦果を上げないとねぇ」

「くっそこの腹黒が…分かってるよ本腰入れるよ!」



そう話がまとまったところで、ドアの外から声がかけられた。



『ルドルフ殿下、ならびに烈火の魔術師におかれましては!援護及びに負傷者の治癒をお願いしたく要請が来ております!』



「呼ばれてるね。出番のようだ」

「とっとと蹴散らしてくるから、すぐ帰るって約束しろルディ」

「分かった分かった、準備はまかせて。気を付けるんだよムウファ」



二人は最後に拳をゴツンとぶつけ合い、扉を開けて颯爽と出陣する。その頃には部屋のろうそくは消えていた。




主人公の非常識さを現しきれなくなってきたので幕間という形にしてみました^^;

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