今後の成長に期待
そうか~、どこで会ってたんだろうってずっと疑問だったんだけど、ここだったのか。
すっかり忘れていた。
自分の記憶を見て再度思い出すっていうのも変な話だけど、私とアイツとグリキの実にやっと繋がりが見えたわ。
これもきっとゲームのための予定調和なんだ…とは思うのだけど、いや、でもアイツは確かゲームでは隠し攻略キャラだったんだけどなぁ…隠しキャラというほど隠れていない。この後もたまに会っていたような…。
先ほど私たちにシネーと言ってきたあの少年は、ゲームでいうところの隠しキャラクターだ。『貴方が王様になるまで』には、ムウファとルドルフ王子を含め4人の攻略キャラクターがいた。その中に一人…主人公が誰とも親密度を上げないまま学園の中にある温室に通い詰め続けて、そこで初めて姿を現すキャラクターがいる。それがアイツだ、キアラだ。
キアラについて話す前に、私の魔法についての方を少し、話したいと思う。
私はどうやっても魔力が多くならなかった。ゲームでの『クリス』も戦力としては表に出ていないのだ。ゲームでは攻略キャラの語りや、過去の回想にしか出てこないクリスであったので、情報はあまり多くないんだけど。それでもやっぱり、並の魔術士を魔石で強化するよりも、ムウファのような強力な魔法を打てる者にその補助で魔石を持たせたいと思うのは当然のことだと思う。
でも私は違う、雷に打たれた(ご神木がね)あの日から、思いつく限りの実験を施した結果『魔石そのもの』を戦力とすることに成功した。自分の魔法の補助に使うのではなく、魔石そのものに魔法を維持してもらうのだ。
私は魔石の核となる中心にだけ自分の魔力を込めて、その魔力を使い魔法を使う。その魔法の『維持』は大気中の魔力を吸収し燃料とすることにしたのだが、そのような方向に自分の魔力操作でもって持っていくまでに、相当の時間と根気を費やした。
まぁでも、昔から一人で地道な練習というものには慣れていた(前世も含めてね)。そして初期の方で魔法系の授業をハブにされていたおかげで、余計な固定観念もできなくて良かったのかもしれない。だって、まず魔石は人の手を離れて魔法を維持することなんてできるわけがない、というのがこの世界の常識なのだから。
防御膜と名付けたそれは、純粋に私の魔力の塊のものから、初期の魔法がかけられているものもある。さきほど馬車にかけたのも防御膜だった。
私の魔力の塊で作った膜はどのような魔法もすべて弾く。というか、魔法の核となる魔力を吸収する。吸収したものはすべて地面にそのまま流れていくようになっている。避雷針に近いものであった。
吸収した魔力を私が再利用するようなことはできなかった。そんなチートなことはできない、私は脇役なのだ。
もう一つ、初級魔法がかかっている物は、物理攻撃を防ぐ目的で作った。私は雷と風がまだ得意な方だったので、常にその初級魔法を纏わせた薄い膜を張ったのだ。この膜にあたると人でも物でも、痺れや強烈な向かい風を感じる。
それでも無理に膜を超えようとすると、対象の勢いに比例して威力が強くなるように魔法を仕込んだ。最初に魔法を起動させる時には私の魔力が必要になるが、後の維持は勝手にやってくれる、エコな魔法だ。
これは攻撃を捨てて、防御にのみ観点を絞って特訓したことによって可能になった、いわば籠城のための魔法なのである。
今の私の精一杯の魔法について、村長にはある程度伝えると決めていた。村と、そして自分を守ってほしかったから。私はこの旅を通して村長に絶対の信頼を置いていたので、ムウファのことを除いても、傷ついて欲しくは無かった。
そして魔力の特性などは省いて、簡単に防御膜のことを説明した時の村長の一言が、なんとこれである。
「……うちの嫁にしておくには惜しいな」
飲んでいた牛乳を吹いた。私の魔法ってもう少し異端なんじゃないかと思っていたけれど、割と普通のことだったのかな?!
「なりませんて!!」
「そう言うな」
「良いですか?!もしもの時は!!この魔石を握って!!展開!!って言ってくださいね!!!」
「照れるな」
「照れてません!!!」
本当にもうこの話題をひっぱるのは止めてほしい!ムウファにも失礼だ!!と思いながら、私は魔石を二つ村長に手渡した。村に魔石を無数に置いてきたのだが、その全ての魔法を起動させるカギのような魔石だ。これに私の魔力を相当に込めてあるので、私がその場にいなくても、防御膜を展開してくれるのである。
これでまず、ものすごい戦力でも来なければテンの村は大丈夫、な、ハズ。
「これは何の属性なんだ。持ち手の想像力は必要ないのか?」
「もう全て込めてあるので、あとは起動だけなんです。なのでキーワードだけあれば大丈夫です」
そう、私がもう1つ一般的でないのは、魔法を使うときにあんまり何の属性なのか口にしないことだ。
本当は威力を強めたい場合、「炎よ!!焼き尽くせ!!」とか、「風よ、薙ぎ払え!!」とか言うものなんだけど、私は威力を強めることを目標にしなかったので。自分の想像力だけで、口頭での補助は必要ないようだったのだ。
もちろん普通に攻撃魔法を使う時には属性を口にしますけどね。
そして王都に着き、私たちも腰を落ち着ける宿を取れたので、村長はそのまま帰って行った。魔石はくれぐれも手放さないでほしいことと、いざという時は村から絶対に出ないことをお願いした。村長はうなずいて、私の頭をポンと叩いて帰って行った。村長、かっこいいなー。
そして今はなんとまた、新たな出会いを迎えているところである。
「ミスティー!!!!あぁぁ会いたかったわぁぁ!!!!」
「カリン!!!あんたカリンかい?!」
「………???」
今母に、ものすごく豊満な肉体をしたお姉さまが抱きついている。凄く久々の再開のようで、二人とも涙目だ。
そして少し垂れ気味の目に涙を溜めたこのお姉さんは、何というかものすごく…エロい。ふつうの服を着ているのに、何か艶を纏っている。ここは私たちが泊まる予定の宿の食堂のようなところだ。飲み屋では無い。この場におよそそぐわないこのお姉さんは一体…?!
「ああ、クリス紹介するよ、あたしの昔なじみのカリンだ。妹みたいなもんさ」
「んふふ、クリスくん?カリンよ。この宿のオーナーをしてるの。ヨロシクねぇ!…ん~~カワイイ!またえらくオトコマエなの産んだわねぇ~ミスティ!」
カリンさんが私に目線を合わせるために少しかがんでくれた。た、たわわな果実が目の前に…!!!
「カリン、その子は女の子だよ。まぁちょっとばかしお転婆になっちまったけどねぇ」
「んまぁぁぁ!!女の子なの?!いやぁぁぁかわいい~~!!!!」
か、果実の間に顔を挟み込まれた!!身動きが、とれないだと………?!?!
「カリン、そのままじゃクリスが死にそうだよぉ。少し緩めてやっとくれ」
「あらぁ、ごめんなさいね、クリスちゃん?」
少し体を話してくれたカリンさんは、ここのオーナーだという。職業違わない?!と思ったのはナイショだ。
……やっぱり世の中、女性が最強だと思います。そして私が自分の成長の無さ(特に一部)に、ひそかに…でも相当な不安を感じたのはしょうがないことだったのである。
ま、まだ10歳!ペタンコで当たり前だよね?!
説明回と、筆者の村長びいき回。