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ウィッチ☆プリンセス 過去編

第4話「ふしぎな思い出」

作者: 園 詩音

毎日おねいやおばさんが心配して、わざわざお部屋までご飯を運んできてくれて、一緒に食べようって言ってくれたんだけど、私はほとんど食べられなくて残しちゃったんだ。


せっかくおねいやおばさんが、ご飯作ってくれてたのに…ほんとに私わがままだったよね。

ママの事で頭がいっぱいで、他は何も考えられなくて…。


そんな時突然部屋のドアを乱暴に開けられて、ご飯やおかずを乗せたおぼんを持った隼人が入ってきたの。


私は隼人が怖くて、少しひるんでしまってシーツをぎゅっと握り締めた。


隼人は何も言わず、ご飯を乗せたおぼんを机の上に置くと私を見下ろしてきたんだ。

バッチリ目が合ってしまった私は怖くて目をきゅっと閉じた。


「食うか食わないかは好きにしろ。だがな、いつまでそうして泣いてるつもりだ。泣いていても何も変わらないぞ」


「っ…だって…だって…急にママ…かえって…こないから…ぐすっ…」


隼人の言葉が凄く冷たく感じられて、私はさらに泣いてしまったんだ。

でも私は凄く甘えていたんだと思う。おねいや、おじさん、おばさんが優しいから、不安や悲しい気持ちをぶつけてたんだと思う。本当はおねいも不安なのに…。きっと隼人はこんな私の気持ちを見抜いていたんだ。


それから隼人は何も言う事なく、静かに部屋を出て行って、一人取り残された部屋で、また私はしばらく泣いていたの。


でも隼人の言う通り、私は最近ずっと泣いてばかりで何もしていなくて皆に迷惑ばかり掛けて…。そうだよ、泣いてばかりじゃダメ。私も皆と同じようにママを探すの。


もしかしたら、どこかで迷子になってるかもしれない。


あれから泣き疲れて少し眠っていたみたいで目を覚まして、ふと時計を確認すると、今は夜中の0時…少し怖いけど、ママがどこかで迷子になってるのかもって考えると、いてもたっても入られなくて、パジャマのままそっと家を飛び出したの。


「ママっ…ママ…」


行くあてもなく、私は夢中で走ったの。ただママに会いたいっていう気持ちで胸がいっぱいだった。


何も考えずに走ってきたせいで、全然知らない道に入ってきてしまって…。道は凄く細くて、周りには街頭や家もほとんどなくて真っ暗な中、私はポツンと一人立ち尽くしてしまう。


急にじわじわと不安が胸に広がって、泣き出してしまいそうになるのをぐっと堪える。


ちょうど、その時深い森の奥から物音がして、暗い影が見えたの。


「…もしかしてママ…?」


もしかするとママはこの森に迷っちゃったのかも…。もしそうだとしたら早く助けてあげなきゃ。


深い森の中に入るのは怖かったけど、勇気をだして森の中へ入っていったの。


けど森の中は想像以上に真っ暗で、ザワザワと冷たい風も吹いていて、今にもおばけが出そうな雰囲気に怯えてしまう。


「でもママが待ってる。頑張らなきゃ…」


ぎゅっと拳を作って森の中を進んでいく。


そういえば前に学校で先生が近くの森で蛇が出るから、森に入って遊ばないようにって言ってたけど、この森だったのかな…。


森をあちこち見渡していると、ふと何か黒い物が凄い勢いで横切ったの。


「きゃううっ」


驚いた私はその場に尻餅を付いてしまう。


ぎゅっとつむった目をゆっくり開けると、目の前には黒猫がじっと私を見つめていた。

先の黒い物の正体はこの猫さんだったみたい。


不思議そうに猫さんを見つめていると、猫さんは尻尾を振りながら先を走って行ってしまったの。


それが何だか私に付いて来いって言っているように見えて、慌てて立ち上がって猫さんの後に続く。


「あ、ちょっと待って!」


深い森の中をしばらく進んでいくと、猫さんがふいに立ち止まる。


そこはお月様の光が差し込んだ綺麗な場所…。そしてそこにはうさぎさんに猫さん、わんちゃんにリスさん、他にはキツネさんやオオカミさん、とにかく沢山の動物がいたの。


「わぁー、可愛い!」


「今夜は人間のお嬢ちゃんが、お客さんだ」


私をここまで案内してくれた黒猫さんが、突然しゃがれた声で話したの。


「えっ、え、猫さんが喋った…」


突然お話をした猫さんに驚いてポカンとしていると、そんな私の様子がおかしかったのか他の動物さん達も皆、笑っているの。


ますます訳が分からなくなった私はぼんやりと立ち尽くしていると、黒猫さんはニヤリと笑って手招きをした。


「まぁ、そんな所に突っ立ってないで、こっちに来て座るといい」


「えっ、あ、はいっ」


黒猫さんが手招きした先に訳が分からないまま、切り株の上にちょこんと座る。


隣に座っていたうさぎさんや、りすさんも「よろしく」と挨拶をしてきたので、少し戸惑いながらも私も挨拶をする。


「よ、よろしく…です。あの私は美月って言います。あのどうして皆はお喋りが出来るの?」


すると黒猫さんが、じっと私の目を見て呟いた。


「お嬢ちゃん、儂らが話せるのではなく、お嬢ちゃんが儂らの声が聞こえる…といった方が正しいかもしれんな」


「???」


私は黒猫さんの言っている事が分からなくて、首を傾げると私の向かいに座っていたたぬきさんが手をぽんぽんと叩いた。


「まぁ細かい事はいいだろ?今夜は久々の客人だ。乾杯しようぜ」


そしてすぐ隣に置いてあった、大きい瓶のお酒をグイッとそのまま飲み干した。


た、たぬきさんがお酒を飲んでるよ!はわわわ、大丈夫なのかな?


私が驚いていると、たぬきさんの隣にいたうさぎさんは呆れたように言ったの。


「あんたはただお酒が飲みたいだけでしょ?」


「あはははっ、バレちまったか」


たぬきさんが照れ笑いを浮かべると、他の動物さん達も一斉に笑いだして…、そんな皆に釣られて私も少し笑っちゃったんだ。


黒猫さんはそんな私を優しげに見つめて言ったんだ。


「ようやく笑ったな。お嬢ちゃん、浮かない顔をしていたぞ。何かあったのか?」





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