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発進、戦艦揚羽

 無事に再会を果たした悠、梨乃、凛花の三人はそれぞれの想いを胸にはじまりの場所へとMigrationWitchcraftマイグレーション・ウィッチクラフトを行う。

 彼女たちの想いとは、彼の願いとはいったいなんなのか、そしてそこで彼らが見るものとはいったいなんなのか――

 さらに彼女たちに襲い来る謎の艦隊もすぐそこまで迫っていた。

再会を果たした三人はとある場所へと移動した、そこはいまだに緑に囲まれた美しい自然溢れる草原だった。

しかし、もともとここには大きな街が存在し繁栄を極めていたのだが先の天災の影響で今は大きなビル郡、住宅が緑に覆われて廃れている。

その光景を久しぶりに見た悠は目を細めて懐かしんだ。

「ここは変わらずなんだな」

「えぇ、ここはあたくし様にとっても悠や梨乃にとっても大事な地なのだから」

「そしてここからわたし達の戦いがはじまるわ」

「それじゃあ――天羽々あまのはばきり

 悠は目を閉じて右手の中指にはめられた指輪に精神を集中させると、晶術紋が浮かび上がるとそこから長身の剣を出現させて手に取る。

「では、わたしも――」

 梨乃は方にひっさげていた布に包まれたそれを手に取ると布を解いてそれは姿を現す。

「さぁ、これが名弓『雷衝動らいしょうどうよ』

 二人はそれぞれの武器の先端を合わせると凛花に目線を送る、しかし凛花は何も出さない。

「それも約束だったな」

「えぇ」

「それじゃあ、はじめますか」

 無事に二人の幼馴染と再会を果たした悠は改めて彼女たちと十五年前の約束を確認する。

「俺は」

「あたくし様は」

「わたしは」


――今より日本を倒し新たな国として瑞穂を建国する!


「天上島から……いえ、この堕落しきった日本を倒さなければ新しい未来は切り開けない。

あたくし様は友人とこれからその一歩を歩むの」

「わかってる、俺はそのためにここを離れたのだからな」

「わたしもここでいろいろ学ばせていただきました」

 そして梨乃は不意にしゃがむと足元にある扉の取っ手に手をかける

「そしてこれがわたし達の戦艦、揚羽あげはよ」

 扉を開けるとそこには小さなレバーがありそれを力いっぱいに引くと――


 地面が激しく揺れ動き轟音とともに土が盛り上がるとそれは姿を見せ始める。

「これが――」

「えぇ、KTCそして北條院財閥が十五年をかけて知識と資金と労力その全てを――総力を挙げて完成させた最新鋭艦よ」

 悠はその姿に圧巻される、今からこれに乗るのかと思うと不思議と心が踊った。

「いい? あたくし様たちはこれからこの腐った日本を倒して本当の幸せをこの手に掴むの。

それにはそれ相応の覚悟もいるし、もしかしたらあたくし様たちの誰か一人が死ぬことになるかもしれない。

それでも――」

「わかってるさ、だからこそこの十五年があったんじゃないか。

俺は死なないし死なせもしない、凛花を守り理想に近づくために俺たちは俺たちの道を歩むんだ」

「そうです、悠ちゃんは凛花ちゃんの矛となりわたしは楯になる。

凛花ちゃんはわたし達の帰る場所となるのよ」

 三人はそれぞれの思いを口にした、そして――

「おねえちゃーん!」

 ふと遠くから少女の声が聞こえる。

「あの声まさか」

「おーい! お兄ちゃーん!」

 どうやら戦艦の管制放送から流れてきてるようだ。

「あの声は?」

「ふふ、妹の桃花ですわね。

桃花も悠の帰りをどれほど待ちわびていたか」

「そうだったのか」

「管制室までの召喚術式を送るねー」

 少女がそう言うとすぐ様艦から転送用晶術紋が送られる――

「さぁ、艦内を案内しますわ」

「あ……あぁ」

 悠はその晶術紋の上に乗るとすぐに視界は管制室に映った。


――管制室。

 そこには複数人の人たちがこちらを見ている、悠はすこし照れながらも一礼をする。

「お兄ちゃん! ひさしぶりだね!

あたしもういてもたってもいられなくって」

 そう言って悠に抱きつくポニーテールの金髪に右目が赤眼のオッドアイが特徴の小さな少女。

「お前……桃花か?」

「うん、そだよ?」

 桃花はニコリと笑みを悠に向ける。


(ここまで成長するとは……十五年とは恐ろしい……)


 悠は驚いていたがすぐに冷静さを取り戻す。

「じゃあ、艦内ブリッジへ案内するわ、みんなは発艦準備に備えてちょうだい」

了解ラジャー

「少しお待ちください、凛花様」

 案内をしようと管制室から出ようと扉を開けようとするとまた一人の女性がその行く手を阻んだ。

「なにかしら?」

「その者は本当に凛花様の言うようなご武人なのですか?」

 銀髪のショートカットの少女は鋭い目つきで悠を睨みつける。

「なにを言いたいのかしら?」

「このわたしにはその方がそのような力量を持っているとは思え難いのです」

「言葉を慎みなさい、この方はわたしの友人でもあり凛花ちゃんのお友達なの」

「だからです! 我々はこれから死地へと出向くのに友達感覚では命を投げ出す方々には大変失礼にあたると言うもの、そんな感覚で戦艦に居座られると迷惑なのです」

「――なるほど、君の言いたいことはわかる。

確かに一理あるな、だとすればどうする?」

 悠はその少女に問いかける、すると――

「腕試しさせていただきたい」

「腕試し――ね」

「それとも戦わずしてこの艦から降りるか?」

 挑発を続ける少女、それに凛花は口を静かに開ける

「いいですわ、だったら二人で刃を交えてみなさい。

もちろんこれは決闘……ですわ」

「え、ちょっと凛花?!」

 凛花の一方的な取り決めに困惑した悠だったが、これも凛花に自分の力を見せるチャンスだと言うポディティブ精神の元に受けて立つことにする。

「まぁ、いいや。

で? ルールはどうする?」

「ルールねぇ……」

「こういうのはどうですか?」

 凛花が顎に指を添えて考える、しかしその横で梨乃が提案があるかのような口ぶりで凛花に声をかける。

「なにか提案でも?」

「えぇ、二人ともちょっとこっちに来てもらえる?」

「?」

 梨乃は二人を並べさせてると両手を二人に向ける、すると彼らの腕や脚そして胸に額にそれぞれ魔法陣が刻まれた。

「決闘のルールとしては二つだけ、あなたたちの各体の部位に特殊魔法をかけさせてもらいました。

そしてあなたたちの目的としては一つ、あまり時間もないから発艦までの時間内つまり三十分以内に先により多くの魔法陣を潰した者が勝利」

「なるほどね」

「これならば文句の言い様がないな、承知した。

軍師殿の言うとおりこのルールで行こう。」

「じゃあ、それを踏まえて約束事よ。

勝利した者はその要望に答えることにする、これでいいかしら?」

 凛花は二人の顔をそれぞれ見渡すと二人は小さく頷き納得した。

「ではさっそくだが甲板にでてもらうわ、審判は梨乃お願いできるかしら?」

「わかりました、公正な判断ができるのは今のところわたししかいないようですし」

 凛花の要望を受け入れる梨乃はさっそく甲鈑に出る転送用晶術を出現させた。

「さぁ、これに乗って」

 二人はそれに乗ると甲鈑へと移動した――


――甲板。

 二人はそれぞれ向い合うように移動されるとそれを挟むようにモニターが現れる。

『聞こえるかしら?』

 モニターには梨乃そしてその奥には艦長席には凛花がふんぞり返っていた。

『ねぇねぇ、お姉様……

わたしも参加したい!』

『だめよ、これは力試しでもあるの。

第三者の介入は認めないわ』

『えー! つまんない!』

 モニターの向こう側で駄々をこねる桃花。

『じゃあ、さっそくだけど始めさせていただくわ。

スタートの合図は各々の合図で始めてください』

 梨乃はそう言うとモニターを切り替え二人を挟むように二つに分離させるように配置する。

「本当にいいんだな?」

「今更なにを言う、こちらとしてはいつもでもきてもらって構わない所存」

 二人は互いに距離をとりながらも身構える。

「いくぞ!」

 少女は力いっぱい足を踏み込んで突進してくる、悠はそれを容易く避けてみる。

「逃げてばかりじゃ先には進めないぞ!」

「さぁ……どうするかな……あ、そうだ」

「なんだ?」

「ところで名前聞いてなかったな、君の名前は?」

「決闘最中に会話をするとはわたしを馬鹿にしているのか? それとも余裕の現れか?」

「いやいや、名前を聞かないと言うことこそ失礼にあたるんじゃないかなってね」

 剣筋を見事に避けながらも言葉を続ける悠。

「なるほど、武人としての心構えはあるようだ。

いいだろう、わたしの名は福島……福島ツナだ。

主の名前はもう存じている、高槻悠殿」

「殿ってやめないか? そんな古来の戦国じゃないんだし」

「なにを言うか! わたしはこれでも古人を尊敬しているのだ。

古人を馬鹿にするものではない、まだまだ頷かされることも多々あると言うのに」

 ツナは刀を右へ左へと巧みに操るが一向に相手に届かない。

「どうしてだ? どうして刃を抜かない?」

「抜いてもいいのかい?」

 ツナの要求に対して逆に問いかける悠、しかし彼の周囲になにやら不穏な空気が流れ込み始める。

『お姉ちゃん、お兄ちゃんにいったいなにが?』

『だまってなさい、桃花』

「なっ……なぜ」

「はぁ、そろそろ時間だしささっとやっちゃおうか」

 悠は片手を天高くかざすと魔法陣がその姿を現す。

「来い! 天羽々あまのはばきり!」

「アマノハバキリだって?……主はなぜそのようなものに」

「なぜって、これは師匠の忘れ形見だからな。

それに師匠に学んだことをそう簡単に見せるわけにもいかないだろ?」

 悠は天羽々切を右手に持ちサッと構えととる。

「それじゃあ、行くぜ!」

 悠はツナに向けて走り出した――


――そして艦内ブリッジでは

「発艦準備は?!」

「はい、もうすぐ出られるかと!」

 クルーの一人が凛花に伝える、すると凛花は梨乃に視線を向ける。

「来ました! 協会の僧兵たち船です!」

 艦内ブリッジに映し出される映像に一隻の船が確認される、現代の船とは少し容貌が違い和風の船だ。

「来たわね、桜ケ嶺ブリリアント支教艦隊」

 背もたれにもたれかかる凛花、梨乃は弓を片手に前に出る。

「発艦準備を急がせなさい、わたしも出ます。

桃花は悠の元に向かいなさい」

了解ラジャ!」

「凛花ちゃんはそのままここで指揮をとってちょうだい」

「わかっているわ、戦場での指揮は貴女に任せたわ」

「了解」


(来るとは思っていたけど予想以上に早い展開ね。

まっ、これもプランの一つに入っているけれどね……どっちにしても避けて通れない分岐点だわ)


「わたしの弓兵部隊はすぐに物見櫓に配しなさい!」

「梨乃、頼むわね」

「えぇ、任せてくださいな」

 梨乃はそう言うとブリッジから退出した。

「――ふぅ、初戦闘が発艦前って……まぁ、これも腕試しだと思えば」

 凛花はモニターを静かに見守った――


――場所は戻り甲板では激しい戦闘が繰り返されていた。

「でやああああ!」

 悠は天羽々切を振り上げるとツナはそれを刀で防ぐ。

 刃と刃がぶつかり合って火花を散らす、キーンと言う甲高い音が鳴り渡る。

「なるほどな、アンタもなかなかの良い太刀筋だ」

「くっ、主もさすがこれでは認めざるおえないではないか」

「まぁ、切りつけるだけなら誰でもできるけど――な!」

 悠はサッと身を引くと今度は天羽々切に魔法陣を展開する。

「それは――」

「これが俺の師匠仕込みの流派『高槻流剣術』だ!」

 長身の剣の刃の部分に根元から計五つの魔法陣が形成されるとその間から丸いものが現れる。

「ふふ、行くか!」

 横に大きく剣を構えると空気を切るように天羽々切を振りかぶる。

「行けっ! 水刃翔すいじんしょう

「くっ!」

 剣先から順に放たれた玉状のそれはツナ目掛けて襲いかかる、ツナは後方に飛び退く。

「まぁ、こんなの囮りだけどな」

 後ろに飛び退くツナの背後に瞬時に移動する悠は刃をツナ目掛けて振り下ろした。

 すると割れ物が割れたような音と共にツナの背中に刻まれた魔法陣が割れるように砕け散る。

「これでワンポイント――っと」

「くっ、やるな……主……ん?」

 フラフラと立ち上がるツナだったがふと何者かの気配を感じ取るり空を見上げた。

 すると二人の男女が空から舞い降りたのだ。

 一人はかなりの長身の持ち主で白髪の顔の整った美男、もう一人は片目が隠れているがショートカットの髪型に右手が謎の布で覆われているのが気になる少女だった。

 二人は十字架が刻まれた特殊な鎧に身を包んでいる。

「やぁ、どうもはじめまして。

私はブリリアント支教艦隊の先遣部隊長を任されているバナード・レ・サウザントと申します、そしてこちらが――」

「マリー・アグレイアスと申します」

 二人は礼儀正しくお辞儀をする、悠とツナは剣を持ったまま彼らに対峙する。

「まさか北條院財閥の関係者が日の本にご謀反されるとは……どういった了見ですか?」

「ふん、アンタはこの日の本になにが起こっているかわかっているのか?」

 バナードの質問に質問で返す悠。

「わかっているつもりではいるのですがね、我々教団としてもこの謀反にはいささか理解できぬものがある」

「理解……だと?」

「えぇ、わたしたち教団は強気を抉き弱気を助ける団体でもあります。

もう少し話し合いの余地はないのでしょうか?」

 マリーは切なそうな表情で悠を見る。

「それにしても随分と物騒なものも引っさげて話し合いに来たものですね、バナード僧兵長ともあろうお方が」

「梨乃か!?」

 悠は後ろに振り向くと高台に彼女の弓を構えた姿が見えた。

「おやおや、桂家の巫女様がここにおられるとは……お初にお目にかかります」

「名前は聞こえていました、それにわたしたちのこの行動を止めようと思うのでしたら無理ですよ」

 睨みつける梨乃、彼女の毅然とした態度に覚悟のようなものを感じ取った悠はバナードに向けて一言。

「そう言うこった」

「安定した日の本に戦乱を呼び込むという行為は我が教団としても黙って見過ごすことはできない、それでも戦闘行為を行うというのであれば……」

「なにを言っているの? あたしたちをその行動に出させたのは紛れもない内閣府なのよ!

教団はその事実すら把握していないの?!」

 艦内から姿を見せた桃花が声を荒げる。

「内閣府はこれでも国民のために一生懸命になっているの、お子様が事情も知らないのに首を突っ込まないで」

 マリーの一言に桃花は槍を片手に飛び出した。

「くっ! この……自分のことしか考えない教団がなにを偉そうに!!」

「やめなさい! 桃花!」

 梨乃の制止も聞かずにマリーに槍を向けて突っ込む桃花。

「待てよ桃花。

いいか? アンタたちはどう思っているかわからないが今の日の本ではいずれ国家崩壊につながってしまうことは明らかだ。

今でも不自由な暮らしをしている国民だってたくさんいる、アンタたちはそう言った人々を救えるのか?」

 悠の質問にバナードは――

「教団でもたくさんの支援を行っている、全員を救うことだって可能なはずだ」

「そんな支援なんて雀の涙じゃない……」

「では謀反をお止めになられない――っと言う回答でいいのですね?」

 マリーは再確認をする。

「えぇ、それで構わないわ」

 梨乃はハッキリと言うと二人は顔を見合わせると手にリモコンらしきものを持つ、すると――

 遠くから何やらドンッドンッと言う重い音がしたかと思うとその次には激しい衝撃とともに艦内が揺れ動く。

「それでは仕方がありません、みなさんには申し訳ないですがここで捕縛させていただきます」

 バナードはそう言うとその手に銃と剣を携える、一方でマリーも槍を片手に身構えた。


――一方で艦内ブリッジでは衝撃によって伴われた被害状況が逐一報告されていた。

「被害状況は!?」

「かろうじて被弾場所が晶術璧で守られていた場所なのでほとんど無傷です!」

 凛花は急いで状況把握に務める。

「そう、じゃあこれから飛空航行に入るわ。

全員衝撃に備えなさい!」

 凛花はそう命令するとみんなが衝撃に備える。

 するとキイイイイインと言う甲高い音と共に船体が大きく傾く。

「浮上成功! これよりフェイズツーに移行!

術式エンジン最大出力及び各スラスター開放!」


(僧兵たちの驚く顔が頭に過ぎるわね)


凛花はクスクスと小さく笑った――


――そして場所は戻り甲板

「くぅっ!!」

 ツナはマリーの槍術に押され気味であった、それもそうだ何せ相手はリーチのある槍に対してこちら側はリーチの短い刀なのだから。

「ツナ! くそ!」

 悠はバナードの攻撃をなんとか防いでいるが相手は銃も使用しているために迂闊に行動に出られない。

 そんな時だった、船が上昇し始めた。

「おわ!」

「きゃああ!」

 船体は揺れ動き甲板にいる者たちは一斉にバランスを崩す。

「晶術!重心安定起動!」

 梨乃はそう叫ぶと甲板の全ての場所が安定化する。

「悠ちゃん! ここはわたしに任せてすぐそこまで支教艦隊が来ます!」

「お、おう!」

 梨乃は指示をすると彼女率いる弓兵部隊は一斉に矢を降り注がせた。

「さすがは弓術にはこの人ありとまで言われた御人だ。

我々もその覚悟に敬意を表しなければ」

「しかし、バナード様。

このままだと所詮は多勢に無勢……」

「わかっているさ、それに転送魔法を使えるのはやつらだけではないさ」

 バナードは手を前に突き出すと甲板上にいくつもの魔法陣が姿を現す。

「来るわ! 全員弓を構えて!

いい? 姿を現した瞬間に弓を射るのよ!」

 弓兵達は一斉に弓を構える。

「さぁ、ここからはマリーの出番さ」

「了解、仕方がないですね」

 マリーは槍を捨てると片腕の布に手をかける。

「なんだ?」

 悠は目を凝らす、マリーはその布を一気に破るとそこにはとても人とは言えないおぞましいものが姿を現す。

「なんなのあれ?」

 桃花も自らの目を疑った、それそうだ彼女の片腕は人の腕ではなく機械的なものであったのだから驚くのも無理はない。

「行きます、ZOHALゾハルextendエクステンド

 彼女がそう言うとその指が自在に伸び始める、伸びた指は梨乃に襲いかかった。

「なっ!」

「させるか! 桃花!」

「了解!」

 悠は桃花に声をかけると二人同時にマリーを抑えにかかったがその前にバナードが立ちはだかる。

「――なっ!」

「甘いですよ、まぁ? 僕がこれをしなくてもマリーなら余裕だったろうけれど」

 そう言ってバナードは二人の刃を難なく受け止めた。

「なんてやつなの?!」

「俺の剣を銃身で受け止めるなんて――」

「どうだい? 君たちはまだまだ子供だ。

大人にはまだまだそんな剣技じゃ通用しない」

 あくまで余裕を見せるバナード、圧倒的な戦力に差があるにも関わらずこうして戦況を有利に進められるのも経験の差がものを言っているのであろう。

「絶対に勝てると言う自信は捨てなさい、そして自ら死ぬと言う考えも捨てなさい」

 マリーがそっと口を開ける。

「俺たちに説教か?」

「いいえ、これは説教ではないです。

ただそれでは生まれて来きた意味がない、無駄死にするだけだと教えに来ただけです」

「説教じゃねぇか! 

まぁ、いいや……それよりもだ、こっちにも策はあるんだ」

 悠はそろそろと言った感じでブリッジに目を向けた。

「まっまさか!?」

 バナードは後方を見ると嫌な予感がまさに的中した。


――そして揚羽から500m離れた桜ケ嶺上空

「目標発見、これより攻撃行動を開始します」

「了解!」

 KTC製のパワードスーツに身を固めた十数名で構成された部隊が支教艦に向けて特攻をしかける。

「行っくよぉ! それそれ~」

 パワードスーツに装備されている晶術式長距離用電磁砲(しょうじゅつしきちょうきょりようでんじほう)を一斉掃射する、すると――

「やふー! やりましたよぉ!」

 攻撃を命中させて喜ぶ彼女は小清水林檎こしみずりんご、KTC部隊を任せられた隊長である。

 支教艦は黒煙を上げ始める、艦内の僧兵たちはあたふたと慌てて指揮系統を完全に失っている。

「まさか、指揮官が不在なんてねぇ。

それに……」

 林檎は後方に浮かぶ揚羽に振り向く。


(悠様はどうでるのかな? 興味ありありだなぁ)


 林檎は揚羽船上で行われている様子が気になって仕方がない様子だった――


――そして場所は戻り揚羽、甲板では――

「やられたか――、まさか本船を狙うとはなかなかの戦術だ。

でもなぜ狙ったのかな?」

「それは指揮官がいないと判断したからよ」

 梨乃は自信たっぷりに答える。

「なぜ? もしいたらどうなっていたかそれくらいの予想はできていたでしょう?」

 感心するバナードと逆にいたらと言う仮説を前に意見を求めるマリー。

「いたら? そんなのありえないです。

なぜならあなた方の支教艦は最初の砲撃以降は一発も撃ってこないのは明らかに不自然、それすなわち最初の砲撃はあなた方が指示を送っていたからです。

でなければこの艦も甚大な被害が出ていたはずです」

 梨乃は自分の推理を二人に説明をする。

「なるほど、桂家の巫女様はただものじゃないですね。

感服した、では改めて――」

 バナードは一歩前へ進むと膝を落とししゃがみこんだ。

「なっ!」

「バナード様?」

 それは同じ同士でもあるマリーも驚いた。

「どうか、国内をお救いくださいませんか?」

「…………」

 突然のバナードの懇願に甲板にいる全員が驚き思わず沈黙が流れる。

「いいでしょう、そのお願いを聞いてあげてもいいけれど理由を教えてくれるかしら?」

 っと突然晶術紋が現れたかと思えば凛花が姿を現した。

「我々教団も日の本を救うべく様々な支援を送って参りました。

しかしながら今の教団は国民を苦しめる内閣府と共謀するものへと変貌し、そして国内を蝕む教団に変わった今となっては我らは到底これ以上の仕打ちに我慢できずにいたところを北條院家のお嬢様が立ち上がられたと以前よりお耳にいたしましたのでその力量、手腕を試させていただきました」

「なるほどな、それで俺たちになにをしろと?」

 悠は疑問を率直に投げかけるとバナードは息を飲み決意をしたように表情を強張らせた。

「内閣府を打倒すると言うのなら我らは喜んで微力ながら支援したいと思っております。

そしてその証にこのマリーを艦に載せてほしいのです」

「バナード……わたしは――」

 口をはさもうとするマリーを片腕で制止する。

「いいでしょう、あたくし様がその面倒をみさせていただきますわ」


(要はマリーを人質にだしたってわけですね)


 梨乃は自分なりに納得する。

「それと、悠?」

「ん? あっあぁ、わかった」

 悠はASMを呼び出し林檎と通信を行う。

「あーあー、聞こえるか?」

『はい、聞こえますよー?』

 頭に訴えかけてくるように声が聞こえる、まさに林檎の声だ。

「こっちはいつでもいけるけど、そっちはどうだ?」

『うんうん、こっちは全て終わってるよ。

いつでもどうぞー』

「それじゃあ退避してくれ」

『了解!』

 通信を切ると悠はバナードを見る。

「いったいなにをするつもりで?」

「まぁ、見ればわかりますよ」

 梨乃はそうバナードに諭した、バナードは悠の行動を見守るように彼を見つめる。

「んじゃ、行くか」

 悠は天羽々切を大きく縦に振り上げる、すると――

獅子水刃ししすいじん!」

 彼の目の前に魔法陣が現れそれを剣で大きく斬った、その衝撃は凄まじく切れた魔法陣からは凄まじい量の水が溢れ出し衝撃と共に支教艦に向けて放たれた。

 操舵ができなくなった艦はその直撃を受けて縦にまっすぐ切れると共に四散し粉々となってその眼下である桜ケ嶺海上へと落下していった。

「これであなた方は教団本部から何の疑いもかけられずに過ごせますわ」

「これは……まさかそこまで考慮してくださるとは……」

 凛花は船を落とすことによって教団側を裏切ったと言う事実を物的証拠を消滅させたのであった。

「それと、そこにいる悠は本気になれば一人でも艦隊を相手にできるほどの力を持っているの」

 凛花の自らに対する処遇に感激するとともに先程まで刃を交えていた悠の力を見せつける。

「では悠とやらはこれまで手加減していたと言うのですか?」

「はは……そんな大層なもんでもないだろ?」

「いやいや、これは大したものです。

だったら尚更のこと、感服しました。

これからもどうかマリーをよろしくお願いいたします」

 深々と礼をするバナード、に凛花は満面の笑みを浮かべて答えた。

「あたくし様に抜かりはないわ! 任せておきなさい!」

「ところでツナ」

「なっなんだ?」

「お前ってその言葉遣いなのに驚いたときは可愛らしい悲鳴を上げるんだな」

「うっうるさい! 忘れろ!」

 そう言ってツナはおもいっきり握り拳を作ると溝落ちに叩き込んだ。

「ぐっ――さすが……だな」

 ガクッと倒れこむように膝まづく悠を見て周囲は笑いに包まれた――

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