雪見
さ〜く〜ら〜さ〜く〜ら〜
歌が聞こえる
いずれ散るのならばいっそ、咲かなければ良い
季節外れの桜、何を急く事があったのだろう
その短い命、何を行き急ぐ事があったであろう
3月だというのに天候次第では息が曇る
雪かきなんてめんどうな事を今更、何故春を間近にしてせねば成らぬ
童子のはしゃぐ声を疎ましく思いながら愚痴と雪を片付ける
さ〜く〜ら〜さ〜く〜ら〜
歌が聞こえた
回覧板を隣人に届けるついでふらり、と声のほうへ足を向ける
消えかかった小さな足跡達だけが残る新雪を踏みしめ見上げた
「成る程、雪見桜。」
童子が問う
「雪見桜?」
「たまには、桜も雪と戯れたかったのだろう」
「おっちゃんうちらと遊ぶかー!?」
「こら坊主、口の聞き方には気をつけろ?」
わぁーきゃぁーと声をあげ童子達はかけていく
いずれ散るのならばいっそ、咲かなければ良い
季節外れの桜、何を急く事があったのだろう
短い命と知って尚、そのように在る事ができるのか
振り返り雪化粧を纏った桜に
見事だ
とだけ告げわたしは隣宅へと向かった




