第7話
<陸軍>
・池田公平陸軍大尉:新芙蓉部隊副隊長
<海軍>
・副島弘樹海軍大尉:新芙蓉部隊隊長
・高橋海軍少尉:技術士官、兵装担当。
・宮藤特務少尉:たたき上げの年配技術士官。
<軍属>
・おやじ:東海精機重工業 専務。根っからの技術屋。
顔合わせの後、高橋海軍少尉と親子ほど年が上の宮藤特務少尉は、95式小型乗用車に乗って、ある工場に向かっていた。酒好きな宮藤特務少尉を横に乗せ、下戸のため酒を飲まなかった高橋海軍少尉が向かったのは、浜松基地に居る陸軍の整備関係の士官に教えられた東海精機重工業。車の修理を始め、プロペラの自動切削装置を開発して、軍から表彰を受けたような会社だ。
二人は、さぞかしすごい会社だと思って期待していたのだが、目の前の会社は、町工場のちょっと大きい感じの工場。鋸歯型の屋根の建物が、2棟だけ。
二人が車から降りて少しがっかりしていると、
「おい、そこの海軍さん!グラマンの地上掃射の的でもやっているのか?」
高橋海軍少尉が振り向き、
「あなたが専務の、ほ・・・・」
「おやじって呼んでくれ!社内では、おやじで通っている。」
高橋海軍少尉は、自分より10歳程度しか離れていない専務を「おやじ」呼ばわりするのは気が引けたが、そう呼ぶことにした。
「私は、高橋少尉。こちらは宮藤特務少尉。この度は、御社が高い技術をお持ちとのことで、ぜひ我が部隊の重修理に類する作業の支援を依頼したく参った。」
おやじは、二人を一別すると、
「宮藤さんはいいや。あんたが鍛冶屋なのはすぐ分かる。高橋さん、あんたは工場を知らない学士様だろ?俺の試験にパスしたら、手伝ってやる。」
曲がりなりにも軍からの要請に対し、この態度。浜松基地の連中の態度がおかしかった理由は、これか。高橋海軍少尉は、言った。
「学士の上の修士様を負かせるもんなら、やってみな!」