第6話
<陸軍>
・池田公平陸軍大尉:新芙蓉部隊副隊長
<海軍>
・副島弘樹海軍大尉:新芙蓉部隊隊長
<軍属>
・ハインリッヒ・フォダス技師:ドイツ、テレフンケン社のレーダー技師
・津田忠:日本無線社のレーダー技師
副島隊長と池田副隊長が、三方原基地に降り立ったころ、隣接して建つ廠舎の会議室には、この基地に配属された士官たちが、三々五々集まり始めた。何となく海軍と陸軍の士官が分かれているのが、組織の頂点で対立する陸軍と海軍の末端の姿を象徴していた。
もっとも、軍属の津田技師とフォダス技師が皆に声をかけると一同和んで、互いの徽章を確認しながら、黒板を先頭に職種別に縦列を組んでいた。陸軍・海軍の差はあれ、ここにいる者は皆、前線で苦労した者である。
皆が整列したところで、副島隊長と池田副隊長が入室した。
「全員、注目!私が、三方原基地の隊長である海軍大尉の副島である。諸君、早速陸海軍の垣根を乗り越えて、既に上手くやっているようだな。上の方は気にせず、お互いの持つ能力を出し合って、敵の殲滅に努めよう!」
副島隊長の訓示の後、続いて池田副隊長が続いた。
「私が、三方原基地の副隊長の陸軍大尉の池田である。特に我が帝国陸軍は、機材の性能不足、員数不足を精神力で補おうとするきらいがあるが、それが近代戦たる今次大戦、特に航空戦で歯が立たないことは、君達も知っての通りである。君達には、論理的に考え、敵の虚を突く効率の良い戦闘に努めてもらいたい。隊長及び副隊長は、君たちが戦いよいように全力を尽くす。君たちは、互いの頭脳を結集し、技術を駆使し、300ノットの槍となりて、敵を痛撃せよ!」
池田副隊長の名調子に、一同感心しながら、池田副隊長の勇猛な性格を再認識した。激戦地ニューギニアを生き抜いた名指揮官だからだ。
一方口数の少ない副島隊長は、水偵出身でフィリピンなどを転戦した猛者で、彼は列機を1度も失わなかったという記録を持っていた。戦闘機ならいざ知らず、ゲタバキでこれを成すのは、並外れたことである。
寡黙な副島隊長と、豪快な池田副隊長。共に勇猛果敢な指揮官であるが、もう一つ重要な共通点があった。それは、徹底した合理主義者であることだ。
その後、各員の自己紹介が始まり、それが終わると、酒宴が始まった。