第5話
<陸軍>
・池田公平陸軍大尉:新芙蓉部隊副隊長
<海軍>
・副島弘樹海軍大尉:新芙蓉部隊隊長
副島海軍大尉と池田陸軍大尉を乗せた三式指揮連絡機は、ジャガイモ畑同然の三方原飛行場の滑走路に着陸した。滑走路の見た目の割には、滑らかな着陸だった。
「タイヤの上の主脚カバーは、外した方がいいかな?」
副島海軍大尉が聞くと、連絡機のパイロットは、
「これまでは付けた機体も普通に飛ばせていましたが、梅雨時の実績がないので、外した方が無難だと思います。」
「ありがとう。」
連絡機を降り、滑走路の周囲に目をやると、福島海軍大尉は、またも目を見張った。
それを察して、池田陸軍大尉は説明を始めた。
「周囲の林の中には、20機分の格納庫が2つ、弾薬庫が2つ、容量30万リットル地下燃料タンクが3つ設置されている。また、この基地の他に、この基地より滑走路の偽装が甘い偽物の飛行場が4ヶ所ある。」
「それでは、隣の浜松基地以上の規模じゃないですか!」
「元々この飛行場は、航空機からの毒ガス散布の技術を研究するための物でしたが、南方における前線航空基地の迅速な建設の必要性から、資材の試験用として使われるようになり、現在に至ったのです。」
副島海軍大尉は、池田陸軍大尉が機上で「黄や青や茶を散布」と言ったのを思い出した。黄は糜爛性ガス、青は窒息性ガス、茶は青酸ガスを意味する。やはり尋常じゃない飛行場だな。しかし、いい基地だ。
基地の偽装に関し、芙蓉部隊の美濃部隊長に徹底的に叩き込まれた副島海軍大尉の目から見ても、偽装は十分だった。