第54話
<陸軍>
・池田公平陸軍大尉:戦闘九一一飛行隊副隊長
・佐久間陸軍中尉:飛燕第一中隊隊長
・田島陸軍大尉:飛行第二二戦隊隊長(疾風隊隊長)
<海軍>
・副島弘樹海軍大尉:戦闘九一一飛行隊隊長
・浅田海軍中尉:彗星第一中隊隊長
・森永海軍中尉:彗星第二中隊隊長
<学徒動員>
・島崎夏美:彗星隊の迎撃管制を担当
・山野いづみ:飛燕隊の迎撃管制を担当
・石岡智子:敵機の位置の連絡担当
・碇奈津子:見方機及び敵機の飛行経路計算を担当
<アメリカ陸軍>
・トーマス・クラウン中佐:"Grilled eel"部隊隊長 第1編隊編隊長 「バーバ・ヤガー」機長
・ウィリアム・バーディーン少佐:"Grilled eel"部隊 第2編隊編隊長 「ナッツクラッカー」機長
・ジョン・ブラッデン少佐:"Grilled eel"部隊 第3編隊編隊長 「ブラックスワン」機長
・ウォルター・ショックレー少佐:"Grilled eel"部隊 第4編隊編隊長 「ペトルーシュカ」機長
・ゴードン・ムーア少佐:"Grilled eel"部隊 第5編隊編隊長 「コングリーブ」機長
<疾風隊 田島陸軍大尉>
目の前で起きていることが信じられなかった。彗星によるB29側面からの噴進弾攻撃、そして「あの」飛燕によるB29後方からの噴進弾攻撃に続く銃撃で、ものの数分の内にB29が半分以下になっている。
「敵機、上昇中。現在高度10000m。」
石岡さんの報告が入った。このままでは、高度が並んでしまう。
「本部、佐久間中尉、及び森永中尉。これよりB29に攻撃を加える。」
「1撃加えたら、帰還せよ。時間的に2撃目は困難だ。なお特攻は厳に禁ず。」
戦闘九一一飛行隊隊長の副島大尉の声だった。見透かされていたか!
「疾風隊、B29に突撃。攻撃は、1撃1殺!しかし、特攻は禁ず。全機、かかれ!」
<第5編隊長 ゴードン・ムーア少佐>
3時方向から突然現れたフランク(疾風のアメリカ側名称)の攻撃は、苛烈だった。最初に視界に入った機体は、20mm機関砲を撃ちながら第一編隊の殿の右主翼に激突。B29の右主翼を切断しながら墜落していった。他の機体も20mm機関砲を発砲しながら激突。自衛火器はなく、爆装で鈍重なB29は、次々と葬られていった。唯一反撃をする「コングローブ」を無視して。
我々は、フランクを2機撃墜することが出来たが、味方機を4機失った。空中カミカゼで。
残りは、第一中隊の3機と「コングローブ」の4機。
衝突せずに(出来ずに)降下していったものは戻らず、フランクの攻撃は1撃で終わった。
さて大きく深呼吸をして、部下に命令だ。
「フルスロットル!味方3機の腹に付いた虫を取りに行くぞ!」
<飛燕第一中隊隊長 佐久間陸軍中尉>
田島大尉、何てことをしてくれたんだ!
「特攻を禁ず」と言いながら、自ら特攻していったではないか!自分はパラシュートで脱出したようだが、他の者はどうなのか・・・
「こちら彗星第二中隊。現在斜銃で攻撃中。飛燕隊の支援求む!」
森永中尉の声だった。
「飛燕第一中隊、これより敵機まで誘導します。」
飛燕担当の山野さんの声だ。
「速力650km/h。方位300度で進行。3分で敵が前方に見えます。」
「速度は、もっと出せるぞ!時間を稼ぎたい。」
「彼我の速度差が大きいと、敵機を捕捉した際、追い越してしまう恐れがあるとのことです。」
「了解、全機聞いていたな!我に続け!」
<彗星第二中隊 森永海軍中尉>
改良されたアツタ型発動機。軽量化された機体。威力十分な、全弾曳光弾の九九式二号20mm機銃の斜銃。そして12機の味方と、4機の敵機。
さほど苦も無く全機撃墜できるはずだった。しかし射撃出来ないのだ。
射撃位置は、B29の主翼の下斜め後方。風防にB29の主翼がいっぱいに見えるまで接近し、曳光弾を頼りに弾着を修正しながら攻撃する。しかし、反撃してくる1機のB29によって、射撃位置に留まることが出来ない。
そのB29は、12.7mm機銃でB29が撃墜できないことをいいことに、味方に銃弾が当たることも意に介さず、躊躇なくこちらを撃ってくる(おかげでB29が1機、友軍の銃撃で、発動機を1基オシャカにする始末)。
結局、そのB29は撃墜出来たが、燃料が怪しくなってきた。
「三方原基地、こちら彗星第二中隊。燃料不足のため帰還する。」
「彗星第二中隊、帰還を許可する。また、飛燕第一中隊も帰還のこと。」
飛燕第一中隊の佐久間中尉の返事が聞こえた。
副島隊長の声だった。できれば、彗星担当の島崎さんの方が良かったな・・・
「彗星第二中隊、帰投するぞ。続け!」