第52話
<陸軍>
・池田公平陸軍大尉:戦闘九一一飛行隊副隊長
・佐久間陸軍中尉:飛燕第一中隊隊長
・田島陸軍大尉:飛行第二二戦隊隊長(疾風隊隊長)
<海軍>
・副島弘樹海軍大尉:戦闘九一一飛行隊隊長
・浅田海軍中尉:彗星第一中隊隊長
・森永海軍中尉:彗星第二中隊隊長
<学徒動員>
・島崎夏美:彗星隊の迎撃管制を担当
・山野いづみ:飛燕隊の迎撃管制を担当
・石岡智子:敵機の位置の連絡担当
・碇奈津子:見方機及び敵機の飛行経路計算を担当
<アメリカ陸軍>
・トーマス・クラウン中佐:"Grilled eel"部隊隊長 第1編隊編隊長 「バーバ・ヤガー」機長
・ウィリアム・バーディーン少佐:"Grilled eel"部隊 第2編隊編隊長 「ナッツクラッカー」機長
・ジョン・ブラッデン少佐:"Grilled eel"部隊 第3編隊編隊長 「ブラックスワン」機長
・ウォルター・ショックレー少佐:"Grilled eel"部隊 第4編隊編隊長 「ペトルーシュカ」機長
・ゴードン・ムーア少佐:"Grilled eel"部隊 第5編隊編隊長 「コングリーブ」機長
<彗星第一中隊隊長 浅田海軍中尉>
「敵編隊、高度9000mを北上中。彗星中隊の約10時方向。距離4000m」
島崎さんからの情報が届く。
「了。」
10時方向下方に視線をやると、B29の銀色の機体が、左右に広がっている。
「彗星各中隊。左右に散開!」
左右に散開したのを確認すると、矢継ぎ早に、
「緩降下の命令の後、各自正面のB29を照準。射撃命令により、二五号爆弾を発射。第一中隊は、そのまま降下して帰投。第二中隊は、B29の進路と90度右に旋回しながら退避。飛燕隊、疾風隊の攻撃後の残敵掃討を実施せよ。」
「第二中隊、了」
森永海軍中尉から、すぐに回答が来た。
「よし、降下!」
<第5編隊長 ゴードン・ムーア少佐>
「3時上方より敵機、約20機!距離は、まだ遠いです。」
機銃手の報告に、ゴードン・ムーア少佐は、ゾッとした。20機の敵機に対し、機銃で武装しているのは、この1機だけ。第一、なぜ日本機が、優位な位置に居るのだ?まるで、待ち伏せでもしているように。まず、部隊長に報告しなくては。
「『バーバ・ヤガー』、こちら『コングリーブ』。日本軍機接近中。約20機。」
「『コングリーブ』、こちら『バーバ・ヤガー』。迎撃せよ!最善を尽くせ。我々は、爆撃に向かう。」
「『バーバ・ヤガー』、こちら『コングリーブ』。意見具申します。『コングリーブ』が迎撃する間に、他編隊は、爆弾を投棄の上、帰投することを提案します。」
「『コングリーブ』、こちら『バーバ・ヤガー』。迎撃せよ!あらゆる手段を用いて、任務を完遂せよ。我々は、爆撃に向かう。」
ゴードン・ムーア少佐は、腹を決めた。
「高度33000フィートまで上昇。進路、方位0.射撃準備!」
「機長、新たな敵です!6時上方、約10機。距離は、まだあります。」
「『バーバ・ヤガー』、こちら『コングリーブ』。新たな日本軍機。約10機。」
しかし、『バーバ・ヤガー』からの応答はなかった。
その時、3時上方に閃光と認めた。
<彗星第一中隊隊長 浅田海軍中尉>
「撃てっ!」
24機の彗星が、浜松に向けて旋回を始めた約20機のB29に対し、各々10発の二五号爆弾を発射した。
「各中隊、発射機投棄!第一中隊帰投!」
<彗星第二中隊隊長 森永海軍中尉>
「第二中隊、右旋回、高度8000mまで降下。中隊長機に続け!」
「二五号に異常発生。1発の発射薬が燃焼するも、発射機より離脱せず。」
第二小隊第一分隊の僚機からの連絡に、森永海軍中尉は、脊髄反射的に、
「脱出せよ!自爆を禁ず!」
当該機は、素早くロールして背面飛行し、キャノピーが開いた。が、同時に左翼に残ったままの二五号爆弾の時限信管が作動、彗星の短い主翼を吹き飛ばした。
森永海軍中尉は、息を飲んだ。最悪の事態が頭をよぎった時白い落下傘が、月の光の下、クラゲのように目に映った。
森永海軍中尉は、脱出を確認すると、部隊の集合状況を確認していった。
(後日、脱出した搭乗員は、駿河湾で操業していた漁船によって、遺体として発見された。戦闘九一一飛行隊初の戦死者であった)