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第4話

<陸軍>

・池田公平陸軍大尉:新芙蓉部隊副隊長

<海軍>

・副島弘樹海軍大尉:新芙蓉部隊隊長

 陸軍浜松基地飛行場を飛び立った三式指揮連絡機には、二人の士官が乗っていた。

 一人は、芙蓉部隊で副長を務め、「新芙蓉部隊」の指揮官となる副島弘樹海軍大尉。そして、陸軍から飛行第56戦隊から新部隊の副長として派遣され池田公平陸軍大尉である。

目的は、新部隊の根拠地となる三方原飛行場の空中からの視察である。

「それにしても真っ赤な土だなぁ。こんな所に畑を作って、何が採れるんだ?」

副島海軍大尉が呟くと、地元出身の陸軍の操縦者が言った。

「ここら辺の赤土は、水はけが悪いので、馬鈴薯位しか採れません。」

「なるほど。ところで、基地はどこら辺りだ?」

副島海軍大尉が再び聞くと、

「先ほどから旋回しているここが、三方原飛行場です。」

「んっ?ここがか?」

副島海軍大尉は、地上を凝視した。眼下に広がるのは、ジャガイモ畑にしか見えない。

池田陸軍大尉は知っていたと見えて、ニヤニヤしていた。そして、説明を始めた。

「三方原飛行場は、様々な意味で特殊なんだ。ここを根城にする航空機は、黄や青や茶を散布するための物で、某所にて実験結果の収集をしている。滑走路自体も、実験の場だ。米軍が簡易に滑走路を敷設する時に使う穴あき鋼板を参考に作った「簡易滑走路敷設用鋼板」が敷いてある。800m×800mの矩形滑走路になっている。その上に薄く赤土をまいて、周囲の畑と同化させているのだ。」

「マーストンマットか。でも、握り拳大の石、じゃがいもか?が、散乱しているようだが?」

「あれは、近所の子供に作らせた土団子だ。なかなかいい出来だろ?子供達は、お国のためと一生懸命作ってくれるよ。」

副島海軍大尉は、やや複雑な表情で子供の話を聞いた。軍人が行うべき戦争に、子供も動員されているとは・・・・それを察してか、池田陸軍大尉は付け加えた。

「2月の空襲で、米軍に対して敵愾心を持っているのは、子供も同じだ。それに土団子作りは、子供達の遊びも兼ねている。納期も何も課していないが、たくさん持ってきてくれるよ。」

副島海軍大尉は、少しホッとしつつ、眼下の特異な飛行場に、改めて自分の任務の特異性を認識した。


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