第47話
<陸軍>
・池田公平陸軍大尉:戦闘九一一飛行隊副隊長
・佐久間陸軍中尉:飛燕第一中隊隊長
・明治陸軍中尉:飛燕第二中隊隊長
・東海林陸軍中尉:通信電子隊隊長
・伏木陸軍少尉:技術士官、整備担当
・田島陸軍大尉:飛行第二二戦隊隊長
<海軍>
・副島弘樹海軍大尉:戦闘九一一飛行隊隊長
・浅田海軍中尉:彗星第一中隊隊長
・森永海軍中尉:彗星第二中隊隊長
・宮藤特務少尉:技術士官、整備担当
<軍属>
・住吉兼吉:哨戒船「第三日和丸」船長
B29出撃の報を聞き、浜松基地に着陸していた戦闘九一一飛行隊及び飛行第二二戦隊の機体は、三方原基地に移動を始めた。発動機不調で飛べなかった飛行第二二戦隊の疾風は、伏木陸軍少尉とその部下の整備支援もあり、演習中に全機三方原基地への移動をしていた。そして、伏木陸軍少尉は、三方原基地へ戻る際、疾風で用いる機銃弾を持ち帰った。
三方原基地では、宮藤特務少尉が先頭になって、整備を指揮していた。
「飛燕と彗星は、特燃料だぞ!疾風は、いつもの奴だ!」
(特燃料とは、アメリカの座礁したタンカーから回収した140オクタン価のガソリン。『いつもの奴』は、海軍が使う93オクタン価のガソリン)
「潤滑油は、古い潤滑油を抜いてから新品を給油して発動機始動。3分回した後、再び潤滑油を抜いて、新たに潤滑油を入れろ!2度目の給油、絶対忘れるな!」
そして宮藤特務少尉は、田島陸軍大尉を捕まえて説明した。
「田島大尉、潤滑油のことで説明したいことがあります。」
「どうしたんだね?」
「現在、疾風を含む全機に、新品の潤滑油が給油されています。」
「戦前に輸入された、使い古しではないのか?」
「はい、たまたま米軍が使用している潤滑油が入手できたので、それを入れています。」
「入手先については詮索しないとして、何か注意点があるのか?」
「はい。この潤滑油の粘度は低く、かつ油膜が中々切れないので、今までより滑らかに回るようになります。ただ、いつものようにスロットルを操作すると、過回転を起こすかもしれません。また、高回転を維持した状態だと油温が過昇する恐れがあります。」
「分かった。部下にも伝えておこう。」
宮藤特務少尉に礼を言いながら、田島陸軍大尉は、部下の集まる廠舎へ向かった。腕時計を見ると、19時を指していた。
その時、防砂林電探基地から三方原基地の戦闘九一一飛行隊司令部へ通信傍受の報が入った。
発:哨戒船「第三日和丸」
宛:帝都防空司令部
1900時、B29、20機。父島南方50キロノ上空ヲ、北上中。
父島南方50キロに停泊していたサンマ漁船「第三日和丸」は、軍に徴用され、他の漁船らと共に、本土に向かうB29を監視していた。船長の住吉兼吉は、太い腕でがっちり固定した双眼鏡で、B29を発見、通信士に電文を打つよう命じた。
「さて、一旦父島に引き上げるか。」
仲間の漁船は、電文を打つと、しばらくして米海軍機が来襲し、撃沈されていた。住吉船長には、見つかってしまう理由は分からないが、電文を打ったら移動することで、今まで生きながらえてきた。今回もそうしなくては。
「機関長、機関全速!航海長、方位0、父島へ向かえ!」