第44話
<陸軍>
・池田公平陸軍大尉:戦闘九一一飛行隊副隊長
・佐久間陸軍中尉:飛燕第一中隊隊長
・田島陸軍大尉:飛行第二二戦隊隊長
<海軍>
・副島弘樹海軍大尉:戦闘九一一飛行隊隊長
・浅田海軍中尉:彗星第一中隊隊長
<学徒動員>
・山野いづみ:飛燕隊の迎撃管制の担当
・石岡智子:敵機の位置の連絡担当
<飛行第二二戦隊 田島陸軍大尉>
我々の装備機は、最新鋭の疾風。故障でまともに飛べない飛燕とは格が違う!飛燕は上昇速度が低いので、我々は、高度を徐々に上げながら全速で接近し、上から被せて下限高度とサインドイッチしてせん滅すればよかろう。発動機は相変わらず絶好調とは言えないが、潤滑油が温まればマシになるだろう。
<飛燕第一中隊 佐久間陸軍中尉>
モーターのように滑らかに回る発動機。アメリカのガソリンと潤滑油、それに合わせた発動機の改修の効果は、絶大だ。地上で2000馬力、高度1万mでも1800馬力を維持しているそうだから、鬼に金棒。13時になった。
「全機離陸、我に続け!」
70度近い急角度で、加速しながら高度を上げていくのは小気味いい。脱落機はない。3000m付近の雲の層を突き抜け、5分後に石岡さんから相手が高度1500mで三方原基地に接近している旨連絡を受けた時、既に高度6000mに達していた。
<飛行第二二戦隊 田島陸軍大尉>
田島陸軍大尉は、わずかに動揺していた。12機中4機脱落したこともさることながら、飛燕が見当たらない。飛燕の性能や信頼性を考えると、3000m付近の雲を突き抜けているはずはない。
「各員、周囲の監視を厳とせよ。発見時は、各自攻撃!」
しかしいくら目を凝らしても飛燕は見つからないので、自機を先頭に、直径1500mで時計回りに旋回を始めた。3周旋回して見つからなければ、雲上に出よう。
<飛燕第一中隊 佐久間陸軍中尉>
石岡さんから、相手が旋回を始め索敵を開始した旨連絡がきた。
また、山野さんから、高度を4000mに下げ、相手の旋回と同じ軌跡になるように誘導してもらった。
「飛燕管制局。相手は、まだ上昇の気配はないか?」
山野さんは、すぐに答えた。
「相手は、同一高度で旋回中」
彼女、潔いな。さて攻撃が遅れると、相手は雲上に来る恐れがあるので、速やかに次の一手だ。
「第1第2小隊、雲の下の敵を攻撃。2撃加えた後、全速で退避。第3小隊は、第1撃開始5分後に攻撃を実施。急降下に伴う過速で相手の前に出るな!無線機のチャンネルを撃墜コール用に変更。私に続け!突撃!」
<飛行第二二戦隊 田島大尉>
6時上方から突然現れた飛燕に、私は背中に冷たいものを感じたが、即座に
「敵機後方、散開!」
と命じた。私は、スロットルをいっぱいに開け、機体を横に滑らせながら相手の攻撃を避けていた。一方見方機は、次々と撃墜されていった。
「くそ、奴らはどうやって雲越しに我々を見つけた?」
気が付いて後ろを見ると、新たな飛燕(1小隊程度か?)が、私を狙っていた。
私の対抗戦は、ここで終わるのか?