第41話
<アメリカ陸軍>
・カーチス・ルメイ少将:第20空軍第21爆撃集団司令官
<アメリカ海軍>
・ウイリアム・ハルゼー大将:第58任務部隊司令官
ハルゼー大将が、部下に4か所ある浜松北基地(三方原基地や囮の基地に付けた名称)のせん滅作戦を立案させていた頃、陸軍航空隊から暗号電文が送られてきた。文面を読み進めるうち、ハルゼー大将の顔は、いつものブルドックから、獅子舞へと変わっていった。
発:第20空軍第21爆撃集団司令官カーチス・ルメイ少将
宛:アメリカ海軍 第58任務部隊司令官ウィリアム・ハルゼー大将
先日、ハルゼー大将の指示の下、麾下の偵察機を用い、浜松に複数の飛行場が発見された。第58任務部隊においては、偵察に先立つ攻撃で多数の被害を受けていること、航空燃料を積載したタンカーと合流できていないこと、また現在低気圧の接近に伴い、海象の悪化による安全な離着艦が困難と予想されることから、攻撃は我が第20空軍第21爆撃隊のB29を用いることが適当と考える。
よって、第58任務部隊からの攻撃は、中止されたし。
なお、私に無断で偵察機を出撃させたことについては、戦友のよしみで不問とする。
以上
前任の作戦参謀は、広い人脈を使い素早く仕事をこなす男であったが、まさか最後にこんなミスをするとは!奴は、今頃本土で、のんびり休暇を楽しんでいるのだろうと考えると、更に怒りが募る!
ハルゼー大将は、まだコーヒーの入ったカップを、壁に投げつけた。
ここは、グアムにある第20空軍第21爆撃集団。司令官のルメイ少将は、今度の作戦についてコーヒーを飲みながら考えていた。
ターゲットが滑走路だから、普通爆弾の絨毯爆撃でよかろう。
何割か、時限信管(週単位でセット出来るもの)を付けて、復旧工事を遅滞させるのもよかろう。爆弾は使いたい放題だ。
浜松北基地は4か所だから、B29を20機も出せば充分だろう。ついでに浜松基地もつぶそう。
浜松基地には、ネイト(九七式戦闘機)しか配備されておらず、浜松北基地にはデコイの戦闘機しか確認されていないから、戦闘機のエスコートは不要。
ルメイ少将は、作戦の概要をまとめて作戦参謀に手渡し、5日以内に作戦要領にまとめ上げ、適当な作戦名を付けて提出するよう命じた。
4日後、作戦参謀から作戦要領が提出された。
作戦名は、“Grilled eel”(ウナギのかば焼き)であった。