第36話
<陸軍>
・池田公平陸軍大尉:戦闘九一一飛行隊副隊長
・伏木陸軍少尉:技術士官、整備担当。
<海軍>
・副島弘樹海軍大尉:戦闘九一一飛行隊隊長
・高橋海軍少尉:技術士官、兵装担当。
翌日、高橋海軍少尉を隊長に、伏木陸軍少尉、そして海軍陸戦隊10名ほど(基地警護のための兵の一部。陸軍からの支援が得られなかったため、海軍から兵を出していた)で、多くの敵機が撃墜された地点(彗星隊や飛燕隊が死闘を繰り広げた空域の下。三方原飛行場 東南東約20km)まで、トラックで移動していた。
目的は、敵航空機の無線など電子機材の回収と、捕虜の逮捕である。
現地に着くと、赤土の荒野に、バラバラになった敵機が突き刺さった光景は、まるで地獄のようだった。
「敵兵に警戒!陸戦隊、前方50m、左右100mに散開!」
100式短機関銃もしくは38式歩兵銃を持った8名の兵は、さっと前方に散開。97式狙撃銃を持った狙撃兵は、近くの窪地に身を潜め、周囲の監視を始めた。
高橋海軍少尉は、腰から念入りに磨いた14年式自動拳銃を上に向け1発発射後、
「アメリカ軍航空兵の諸君!君達は、日本軍の勢力下にある。素直に投降せよ。さもなくば、発砲する!」
あちこちから、クスクス笑いが聞こえてきた。伏木陸軍少尉が、バツが悪そうに言った。
「アメリカ人には、日本語は通じないだろ?」
高橋海軍少尉は、顔を真っ赤にして
“Surrender or die!”(降服か、死か!)
高橋海軍少尉の雄叫びは、むなしく響き、それを安全の証拠と捉えた高橋海軍少尉は、前進を指示した。もちろん狙撃兵を除いて。
高橋海軍少尉と伏木陸軍少尉は、墜落した機体の調査を開始した。飛行高度が低かったことと、アメリカ製機材がタフだったことで、無線機や逆探、無線帰投方位測定器等を得ることが出来た。
一方陸戦隊は、周囲の捜索を始めた。
すると、甲高い叫び声が聞こえてきた。
声の主は、拳銃を持っていた。