第34話
<陸軍>
・池田公平陸軍大尉:戦闘九一一飛行隊副隊長
・佐久間陸軍中尉:飛燕第一中隊 中隊長
・東海林陸軍中尉:通電隊隊長、防風林電探基地にて指揮
<海軍>
・副島弘樹海軍大尉:戦闘九一一飛行隊隊長
・浅田海軍中尉:彗星第一中隊 中隊長
・高橋海軍少尉:技術士官、兵装担当
「次に、戦闘状況について報告。浅田中尉!」
「はい!報告いたします。当時は、敵爆撃機編隊の飛行高度付近に薄い雲がかかっていましたので、敵編隊左後方から接敵。約1000mの距離で二八号爆弾を発射しました。不発射もありましたが、およそ100発の二八号爆弾が発射され、敵編隊付近で爆発しました。戦果は、雲により視界が制限されていたため、確認せず、退避に移りました。」
「よろしい。敵機は、浜松に墜落するのだから、後日陸軍歩兵部隊に確認させればよい。」
副島隊長は、浅田海軍中尉の判断を評価した。
続いて池田副隊長が、
「次!飛燕隊の佐久間中尉、報告!」
「はい!敵戦闘機隊が南下したことを無線で知り、敵爆撃機隊に対し、ロッテ戦法(2機1組で戦う戦法)で、4撃に渡る攻撃を実施し、撃墜10、不確実8の戦果を挙げました。無線の状況は良く、連携した戦闘が容易になりました。そして、海軍の20mm機関砲の威力は素晴らしく、弾道もよく低進しました。『全弾曳光弾』だったこともあり、敵の動揺ぶりは、見ものでした。」
「兵装担当の高橋少尉!全弾曳光弾とは、どういうことだ!」
池田副隊長の問いに、高橋海軍少尉は、
「補給廠の誤りで、大量の曳光弾が届いたものですから、全弾曳光弾としました。敵に発射速度を見誤らせる効果や、焼夷効果もありますから、あながち悪い選択ではないと思います。」
池田副隊長は、ウ~ンと唸りながら、
「そういう特異な運用は、事前に飛行隊長に報告するように。」
とだけ言い、高橋海軍少尉の今後のびっくり装備の実施を承認した。
副島隊長は、一通り報告を聞いた後、
「飛燕隊の攻撃中、グラマンが引き返してこなかったのは、燃料の制限もさることながら、防風林電探基地からの無線妨害も大きな役割を果たした。」
副島隊長は、一息ついて言葉を続けた。
「今回は、薄雲に救われて大戦果を挙げたとも言えなくもない。だが、今後はそうはいかないだろう。今後も戦術については、日々研究を続けよう。」