第28話
<陸軍>
・池田公平陸軍大尉:戦闘九一一飛行隊副隊長
・佐久間陸軍中尉:飛燕第一中隊 中隊長
<海軍>
・副島弘樹海軍大尉:戦闘九一一飛行隊隊長
・浅田海軍中尉:彗星第一中隊 中隊長
<学徒動員>
・島崎夏美:彗星隊の迎撃管制を担当
・山野いづみ:飛燕隊の迎撃管制を担当
・石岡智子:敵機の位置の連絡担当
・碇奈津子:見方機及び敵機の飛行経路計算を担当
<アメリカ海軍>
・ロバート・スピネッカー大尉:SB2Cヘルダイバー急降下爆撃機隊 隊長
・ミズン・ウォーターマン:SBD-5ドーントレス急降下爆撃機 隊長
・スタン・ヨルゲンセン中尉:TBM-3アベンジャー雷撃機 隊長
・ボブ・ストライカー大尉:F6Fヘルキャット艦上戦闘機 隊長
<第一彗星中隊 浅田隊長>
薄い雲の中におぼろげに見える敵機。スパンスケール越しに見た敵機の大きさからもうすぐ射点に着く事は明らかだ。無線のスイッチを入れ列機に指示を出す。
「二八号爆弾、安全子解除。発射10秒前・・・5,4,3,2,1,撃てっ!」
10発の二八号爆弾(空対空ロケット弾)を搭載した12機の彗星から、次々とロケット弾が発射された。実際には、7発不発射だったが、不発射率10%未満であるのは、許容範囲か。そして、目標に達する手前で2・3発早発(予定より早く爆発すること)が発生したが、気にしなかった。
「全機、発射機を投棄の上、退避のこと。」
二八号爆弾の発射機は、空中で投棄が可能であり、身軽になった愛機のスロットルをいっぱいに開け、その時、東海地方上空のどの軍用機よりも速い速度で、対地高度50mの超低空を疾走した。
<ドーントレス急降下爆撃隊隊長 ミズン中尉>
ドーントレス急降下爆撃隊は、爆撃隊の右翼を編隊飛行していた。
「3時方向にFLAK!(高射砲)、しかし遠いです。」
ミズン中尉は、後部射手のホイットニー曹長の報告を受け、まだこの辺にもFLAKがあるなら報告をしないと考え、ニーボードに付けてあるメモ用紙に記録をとり始めた。
「日本陸軍浜松飛行場東方に、FLAKの拠点が・・・・・」
メモをしている最中、彼の機体は、真っ白い閃光に包まれ、続いて搭載していた1000ポンド(約450kg)爆弾が誘爆した。ミズン中尉も彼のメモも、空母に着くことはなかった。
<ヘルダイバー急降下爆撃隊隊長 ロバート大尉>
「ジャップのFLAK攻撃が始まった!かなり激しいぞ!これ以上の前進は危険だ。全機投弾の後、帰投せよ!」
爆撃隊の周囲で砲弾(実際は、彗星隊が発射した空対空ロケット弾)が多数爆発する中、ヘルダイバー部隊、ドーントレス部隊、アベンジャー部隊が、赤土と森しかない地域に40トン近い爆弾をばら撒きながら、一目散に南下を始めた。
しかし、空対空ロケット弾の爆発や、運悪く僚機の落とした爆弾に触れ爆発した機体、空中衝突した機体等が多数発生し、16機(出撃時の約1/3)が浜松の荒れ地上空で消えた。
(後日軍法会議で、敵機から身を守るため、必要以上に接近した密集編隊が空中衝突の原因とされた)