第20話
<陸軍>
・池田公平陸軍大尉:新芙蓉部隊副隊長
・東海林陸軍中尉:通信電子隊隊長
・伏木陸軍少尉:技術士官、整備担当
<海軍>
・副島弘樹海軍大尉:新芙蓉部隊隊長
・佐藤海軍大尉:整備隊隊長
・高橋海軍少尉:技術士官、兵装担当
・宮藤特務少尉:技術士官、整備担当
「はい!」
高橋海軍少尉が立ち上がって、説明を始めた。
「まず、現在までの装備数ですが、彗星一二型20機、夜戦型である一二戊型15機、飛燕Ⅰ型丁15機、同Ⅱ型が12機の計62機です。それぞれの機体には、戦闘機として使うのに問題がありますので、現在改修を施しています。」
「改修内容を、簡潔に報告したまえ。」
副島隊長が、高橋海軍少尉の性格を見透かしたかのように釘を刺した。
「はい。まず彗星ですが、爆撃機ですので、空中機動をする上で機体の強度には全く問題がありません。」
「爆撃機なのに、戦闘機動が可能なのかね?」
池田副隊長が質問した。
「はい。海軍では、爆弾を主兵装とする機体の内、急降下爆撃が出来る機体を爆撃機、それ以外を攻撃機と呼んでいます。ですので、彗星もかなり無理な機動が可能です。」
ささいな陸軍と海軍の用語の相違だが、こうした質疑応答を積み重ねていって、部隊の一体感は深まっていった。
「それで彗星の戦闘機化の為に次の改修を行いました。第一に、機体の軽量化ですが・・・・」
そこで宮藤特務少尉が、高橋海軍少尉の説明を遮った。
「細かな検討データは、こちらにまとめました。」
といって、ガリ版刷りの資料を参加者に配った。
そのデータを見て、参加者は一様に驚きを隠しきれなかった。
「速度は、ここまで向上するのか?」
副島隊長が、言葉を発した。
「実際には、その値より5%程度差し引いてください。」
「それでも、武装状態で600km/h以上いくのか!」
「エンジンの状態は、常に最上にしておく能力があります。稼働率8割以上で、その資料の体制を維持できます。」
副島隊長は、誇大な報告を絶対しない宮藤特務少尉の性格を知っていたから、より心強く感じた。
会議の参加者は、みな満足げだった。
否、説明の腰を折られた高橋海軍少尉だけは、少々いじけていた。