第16話
<陸軍>
・池田公平陸軍大尉:新芙蓉部隊副隊長
・軍曹:レーダー担当。朗らか。
<海軍>
・副島弘樹海軍大尉:新芙蓉部隊隊長
・上等兵曹:レーダー担当。寡黙。
<軍属>
・ハインリッヒ・フォダス:ドイツ、テレフンケン社のレーダー技師
・津田忠:日本無線社のレーダー技師
一方、フォダスと津田技師は、すでに描いていた電探の配置図に従い、配置を進めていた。
まず、最前線である遠州灘を望む中田島砂丘の防砂林の中に、海軍の二一号電探が、5基配置された。
格子状のアンテナは、周囲にある魚を干すための竹製の棚によく似ていて、遠目には識別困難だった。
「5基も、よくそろえられましたね!」
陸軍の軍曹が質問すると、海軍の上等兵曹が答えた。
「載せる艦が、なくなったんだ。沈められたり、工事中止になったり・・・・」
二人が暗くなる中、フォダスが、明るく技師に質問をした。
「レーダーは、デリケートなものだ。こんな潮風に曝される場所に設置して大丈夫かね?」
すると、津田技師も明るく答えた。
「なにを言ってます、フォダスさん!このレーダーは、艦船用ですよ!海風なんか、屁でもありません。」
それを聞いた上等兵曹が、ポツリ。
「でも、砂対策はやっておかないと。太平洋の真ん中に砂は、吹き込みませんから。」
津田技師は、折角ジョーク1つ言わないフォダスが、ケルン大聖堂から飛び降りる気持ちでジョークを言ってくれたのに、この性格の暗い上等兵曹ときたら!砂対策なんか、フォダスも承知しているに決まっている!この人は、電探のプロだぞ!
「ああ、そうですね!上等兵曹さん、ありがとう。」
フォダスがそう答えると、津田技師の思考は、数秒停止した・・・・
二一号電探の設置が終わったころ、1台の見慣れない電探がトラックから降ろされた。
「あれが新型の電探?」
上等兵曹が言うと、軍曹が答えた。
「そうらしいです。フォダスさんの協力の下完成した、我が国が所有する最高精度の電探・・・・」
「ウルツブルクの2号機だ。初号機と3号機は、また別の所に設置される。今回の作戦の要諦だ。」
津田技師が答えた。
そう話している横で、フォダスは、ウルツブルクを満足げに眺めていた。