第15話
<陸軍>
・池田公平陸軍大尉:新芙蓉部隊副隊長
・伏木陸軍少尉:技術士官、整備担当。
<海軍>
・副島弘樹海軍大尉:新芙蓉部隊隊長
・佐藤海軍大尉:整備隊隊長
・高橋海軍少尉:技術士官、兵装担当。
・宮藤特務少尉:たたき上げの年配技術士官。整備担当。高橋少尉とペアで仕事することが多い。
<軍属>
・おやじ:東海精機重工業 専務。根っからの技術屋。
20mm機銃のデモンストレーションが終わり、高橋海軍少尉の所に伏木陸軍少尉と宮藤特務少尉が集まってきた。3人は、会議室まで歩きながら話し合った。
「大成功だったな!正直、海軍の九九式があれほどの威力とは思わなかったよ!」
伏木少尉は、驚きを隠せなかった。
「B17に九九式を発砲した際、信管が鋭敏で十分な破壊力を発揮できなかったんだ。そこで信管を着発から遅動信管に変えたわけだが、B29では、それでも威力不足であった。ということで、延時時間を少し伸ばしてみたわけさ。」
高橋海軍少尉の回答に、伏木陸軍少尉が、
「戦闘機に命中して、炸裂せず貫通してしまうことはないか?」
「鹵獲したグラマン(F6F)を使って試験したところ、胴体はもちろん、主翼でも炸裂した。アメちゃんが、丈夫に作ってくれたおかげだ。」
伏木陸軍少尉は、ほっとした。
会議室につくと、宮藤特務少尉が、模造紙を机に広げ、
「さて、彗星と飛燕の改修内容をまとめましょう。まず、飛燕から。」
主に伏木少尉が意見を出し、宮藤特務少尉が書き留めていった。
・20mm機銃の換装(九九式二号四型)
→改修は、三方原基地
・発動機をアツタ三二型改に換装
→エンジン改修は、愛知航空機殿及び東海精機重工殿。換装は、三方原基地
・操縦席後方の防弾鋼板、板厚増
→改修は、三方原基地
・ラジエターを胴体から離し、境界層侵入を防ぐ
→改修は、川崎航空機殿。なお、P51を参考に、川崎航空機殿にて設計完了。
・主脚のタイヤカバー取り外し(滑走路の赤土詰まり防止)
→改修は、三方原基地。
「こんなところでしょうか。次に彗星です。」
今度は高橋海軍少尉が意見を出し、宮藤特務少尉が書き留めていった。
・後部座席及び計器、旋回機銃などの除去(一二戊型の斜め銃は、残す)
→改修は、三方原基地
・発動機をアツタ三二型改に換装
→エンジン改修は、愛知航空機殿及び東海精機重工殿。換装は、三方原基地
・操縦席後方の防弾鋼板、板厚増
→改修は、三方原基地
・爆弾倉扉周りの部品を除去。爆弾倉扉を1枚板で蓋をする。
→改修は、三方原基地。
・二八号爆弾(空対空ロケット)の発射機取り付け
→改修は、三方原基地。
・着艦フック取り外しと、外板整形
→改修は、三方原基地。
・主脚のタイヤカバー取り外し(滑走路の赤土詰まり防止)
→改修は、三方原基地。
こうして、新芙蓉部隊の機体の改造指針が決まった。
作業は、翌日午前中に佐藤海軍大尉の承認を受け、速やかに実施に移された。
後日、アツタ三二型改を搭載した飛燕が、改修のため川崎航空機に戻ってきた時、社内の技術者はその変わり様に騒然としたという。
設計主務者の土井武夫氏は、つぶやいた。
「燕が、鷲になった・・・」