第11話
<陸軍>
・池田公平陸軍大尉:新芙蓉部隊副隊長
<海軍>
・副島弘樹海軍大尉:新芙蓉部隊隊長
・佐藤海軍大尉:整備隊隊長
・高橋海軍少尉:技術士官、兵装担当。
・宮藤特務少尉:たたき上げの年配技術士官。整備担当。高橋少尉とペアで仕事することが多い。
<軍属>
・おやじ:東海精機重工業 専務。根っからの技術屋。
佐藤整備隊長が、落ち着いた声で問いかけた。
「きみ、ピストンがどうしたのだね?」
入社したての川崎の技術者が、半泣きになりながら答えた。
「ピストンの直径が、4mm大きく仕上がってきたのです。製作図面の修正個所が多くなり見にくくなったので、原図更新(訂正個所を反映した図面に一から引き直すこと)したのですが、寸法を転記する際、数字を書き誤ったようです。更に、ピストンピンも長く出来上がっています。ハ40にもハ140にもアツタにも使えません!」
「しようがない。ピストン等の保守部品は、愛知から供給を受けることにしよう。」
すると愛知の技術者がすまなそうに答えた。
「弊社の製造工程は全力生産状態で、これ以上余分は作れません。」
「アツタ32型発動機は、供給できるのか?」
佐藤整備隊長が聞くと、
「はい、現在でも月産50台作られており、新型の彗星には金星62型が用いられているので、全数芙蓉部隊とこちらに回せます。」
「では不調な発動機は、新品アツタに交換することで対応しよう。」
「キ61は、どうしましょう?」
先程の川崎の新人が、真っ赤な目をしながら尋ねた。
すると宮藤特務少尉が、
「ハ40もハ140もアツタも、元はDB601。発動機架など、外観は一緒だ。若干の手直しで、アツタを飛燕に載せられるよ。」
そして、続けた。
「オシャカのピストンとピストンピンを、俺によこせ。それとおやじ!ちょっと手を貸せ!」
おやじは、宮藤特務少尉の考えを理解したのか、ニヤリと笑って頷いた。
佐藤整備隊長は、
「またこいつ、やらかすぞ!」
とニヤリと笑った。
3人のニヤリ笑い、他の者には、やや薄気味悪い光景だった。