第9話
<陸軍>
・池田公平陸軍大尉:新芙蓉部隊副隊長
<海軍>
・副島弘樹海軍大尉:新芙蓉部隊隊長
・高橋海軍少尉:技術士官、兵装担当。
・宮藤特務少尉:たたき上げの年配技術士官。高橋少尉とペアで仕事することが多い。
<軍属>
・おやじ:東海精機重工業 専務。根っからの技術屋。
ベーゼンドルファー製の治具中ぐり盤
スタインウェイ製の内径研削盤
ベヒシュタイン製のプラノミラー、縦フライス、横フライス
これらの工作機械は、世界を代表する高精度の物で、一流の工業製品を作るには、欠かせないマザーマシンだった。
また山葉の旋盤は、主軸の軸受けに工夫が凝らされ、高速度高精度の可能とした意欲作であった。
「これほどの機材、どのようにして調達したのだ?」
高橋海軍少尉は、驚きを押し殺して問うた。
おやじは、ニヤニヤしながら答えた。
「高橋少尉も、この凄さが分かりますか。これらは、金で買いました。」
「当たり前だ!資金の調達をどうしたのだ?大変な額だろう。」
「資本金の40倍の社債を発行して、資金調達しました。」
「40倍・・・・」
これは、まさに常軌を逸したことだ。しかし、戦後おやじが新たに興した会社は、資本金の30倍の設備投資をしているから、彼にとっては普通なのかもしれない。
「これらの機材を、君のとこの基地に移動して、片っ端から直してやる。」
今度は、宮藤特務少尉が驚いた。
「設置できる建て屋はあるが、床の基礎工事やら何やらで、数ヶ月の工事が必要だ。」
「日露戦争で旅順攻略では、28センチ砲の基礎工事を数日で終わらせたぞ。数十年後の海軍に、同じことができんのか?」
二人とも苦虫を噛んだような顔をした。
「冗談だよ。素人に大切な工事はさせられない。うちの者が作業をする。」
宮藤特務少尉が口を挟んだ。
「プラノミラーは、いらんよ。そこまで建屋が広くないし、あの縦フライスと横フライスがあれば十分だ。」
「ありがたい。あれは、でかいからな。」
こうして、三方原基地に隣接する偽装された工場内に、東洋でトップクラスの整備工場が備えられた。
交渉後、1週間後のことである。