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第八話 予想外


「……ママ……?俺達が……?」

「違うの?」

少女は首を傾げながら、俺の両手を自分の両手で包む。

「……外の門番を倒すことが出来る、()()()()()……前のママは、そうやって新しい人が来るって言ってた」

何を言っているんだ、この人は。俺とシェリィは、首を傾げながら顔を見合わせた。その様子を見て、少女はパッと両手を放す。

「……自己紹介、してなかった。ワダツミはワダツミ。またの名を、≪ID:12385924 試作型アルケミストゴーレム666号≫という。どうぞよろしく」

「ゴーレム……?」

長ったらしい名前の中で、俺はその言葉だけが耳に入ってきた。どうやら目の前の少女は、人間ではないそうだ。

「あいでぃ……?しさくがた……?」

シェリィは困惑しているのか、目を点にしながらワダツミの言葉を繰り返している。シェリィの様子を見たワダツミは、胸に手を当ててこう言った。

「……人間界の言葉で言うと、ゴーレムの一種。理解できた?」

「……あなた、ゴーレムなの?」

その通り(exactly)、ママ」

やけに綺麗な発音で何故か英語を喋り、シェリィの事をママと呼ぶワダツミ。全く意味の分からないこの状況に、流石に俺はついていけなくなった。

「そっちのママも、よろしく」

「え……俺もですか?」

ワダツミに一礼され、俺はただ首を傾げることしか出来なかった。


遺跡の調査を終えた俺達は、報酬を受け取るためにギルドに戻って来た。遺跡の大まかな全体像を記した地図と、シェリィの報告によって、俺達は少し割増で報酬を受け取ることが出来た。……ただ、一つだけ問題が生まれてしまった。

「ママ、頼まれたもの運んできた」

「……ワダツミ?外では、ママって呼ばないでくれるかしら?」

「じゃあ、なんて呼べばいいの?」

「普通に名前で呼びなさい。わたし達の名前は教えたでしょ?」

「了解した、シェリィ」

遺跡で出会ったゴーレム――ワダツミは両手で荷物を抱えながら、シェリィの後をついていく。彼女はどうやら、あの遺跡で作られたゴーレムらしく、亡くなった主人に代わる人物が来るまで眠りについていたそうな。彼女が抱える荷物――遺跡に置いてあった研究記録のようなものの中にそう書かれていた。ちなみに、日本語で書かれていたのでシェリィは読めなかったのだが、俺が読めることを伝えると、「この謎の言語が読めるの!?」と言ってたいそう驚いていた。閑話休題。

「ねぇ、ママ……コウ」

「どうかしましたか?ワダツミ」

「……これ、邪魔」

ワダツミは自信の顔を隠しているパーカーのフードを、ペシペシとはたいている。……先ほど言っていた問題とはもちろん、ワダツミの事だ。俺達を「新たな主(ママ)」として認識した彼女は、何故か俺達についてくるようになったのだ。いくら人間と寸分狂わぬ見た目をしているとはいえ、魔物を連れて行くのはどうなのだろうか……そう思った俺達は、ワダツミを置いていこうとしたのだが。

「ワダツミを置いていくなら、侵入者と見なしてここで眠ってもらう」

なんと、突然豹変したワダツミが脅してきたのだ。ゴーレムである彼女にとっては、戦闘はお手の物らしく、何万通りもの戦闘パターンが記録されていて、並の魔物や人間には負けることはないそうだ。スナイパーゴーレムならともかく、彼女と戦うには分が悪いと感じた俺は、彼女を連れて行くことを認めたのだった。回想終了。

「我慢してください。ギルドに登録してもらったとはいえ、あなたの見た目は目立つんですから」

「……ワダツミ、目立つ?」

「はい、それはもう」

ワダツミを連れて行く妥協案として、彼女の着ていたパーカーのフードで顔を隠してもらうことにした。万が一魔物であることがバレたら騒ぎになるし、顔もそれなりに整っているので、変なやつに絡まれたりしたらまずい。これが人間なら放っておく所だが、ワダツミがその対象となると面倒くさいことになる。……一応、魔物を使役することはギルドに認められているのでそこまで心配する必要はないが……無用なトラブルを防ぐに越したことはない。

「……分かった。命令に従う」

「はい、お願いしますね」

ワダツミは素直に頷いてくれ、フードを深く被った。……どうやら、このパーカーはかなりサイズに余裕があるようだ。フードは彼女の顔の半分を隠し、パーカーの裾でギリギリ下が見えるか見えないかという程だ。……まぁ端的に言ってしまうと、かなり際どい格好に見える。周囲からの視線を感じるし、服を用意する

 必要があるかもしれないな……

「シェリィ、なんだか頭が痛くなってきました……」

「……奇遇ね、わたしもそうよ」

俺とシェリィは顔を見合わせ、互いにため息を吐くのだった。


「う、うーん……」

「……起きろ!アカリ!」

「うぇ……?ビャク姉?」

ゆっくり目を開けると、僕を覗き込んでいるビャク姉と目が合った。身体を起こし、凝った肩をほぐすように腕を伸ばす。

「ここどこ……?」

「わからん。だが、私達のいた場所ではないことは確かだな」

辺りは霧に包まれていて、自分のいる場所以外の全容が見えない。……なんだここ。なんで僕はこんなとこに……あっ。

「青い、勾玉……!」

そうだ、確か祭壇にあった勾玉に触れて……そこで意識が途切れたのだ。いやー、スッキリした……あれ、ビャク姉?なんか顔が怖いような……?……あ……

「ア・カ・リ……?」

「は、はは……ビャク姉?なんでそんな怖い顔してるの?」

「理由は……言わずとも分かるだろう?この状況をどうするつもりだ、アカリ?」

「ご、ごごごごめんなさい……!」

僕はその場で土下座した。あの勾玉、普通の勾玉じゃなかったんだ……!触るんじゃなかった!

「……はぁ。まぁ、怒っても仕方ない。とりあえず、ここがどこか調べないとな」

ビャク姉は頭を抱えながらも、冷静にそう判断をする。これ以上睨まれることが無くなったと知り、僕は内心ホッとする。

「……ちなみに、この状況をどうにかしたら、話があるからな?アカリ?」

「は、はい」

……流石に、お咎めなしとはならなかったようだ。




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