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第六話 遺跡探索


遺跡に来た俺達は、順調に調査を進めていた。道中、何度か魔物に出会うことが会ったが、ほとんどシェリィが片付けてしまった。俺がやっていることといえば、ギルドから渡された調査書に遺跡の様子を書き込むくらいだ。……ちなみに、俺はホロウによってこの世界の文字などは理解出来ているので、読み書きをすることは可能だ。ただ慣れていないので、文章は稚拙なものになってしまうのだが。俺は調査書を纏めながら、辺りを見渡す。

「……広い遺跡ですね」

「そうね。これ程までに大きい遺跡は、なかなか見つかるものじゃないわ。……一応帰り道は把握しているけど、はぐれないようにしてね」

シェリィは松明を持ちながら俺に注意をする。辺りは真っ暗で、少し進んだだけで道が分からなくなりそうだ。

「シェリィは、こういう調査に慣れているんですか?」

「まぁ、パーティーを組んでいた時に、ちょっとね。わたしはよくこき使われていたから、安全確保とかはお手の物よ」

シェリィはそう言って、何故か暗闇に向かって剣を振るう。すると、何かが崩れたような音がして、俺達の前に石ころが転がってきた。……これ、もしかして魔物か?

「こういう遺跡は、よく小さいゴーレムが彷徨いているわ。もしもそいつに襲われたら、赤く光る部分を狙うのよ」

「は、はい」

この人、あの暗闇でゴーレムの位置を把握したのか。やっぱりとんでもない人だな……

「調査書はどう?ある程度は出来てきたでしょう?」

「はい。シェリィに言われた通り、簡単な地図も書いてます」

「どれどれ……なるほど。この調子だと、あと少しだけ進めば最深部にたどり着きそうね」

シェリィは俺に、調査書には地図を書いておくように、と釘を刺していた。理由は攻略の糸口になるし、調査書を纏めやすくなるからだ。ギルドが求めているのは遺跡がどのように広がっているか、どこまで広がっていくか、魔物の生態系はどうなっているか……ということを知りたがっているので、地図を書いておくと評価に繋がりやすいのだとか。そしてこういう遺跡というのは大抵構造が決まっているらしいので、自分が今どの程度まで進んでいるか分かりやすい。全部シェリィからの受け売りだ。

「コウ!ゴーレムが来たわ!」

「分かりました!はぁっ!」

俺はゴーレムの赤く光る部分を剣で斬りつける。ゴーレムはすぐに動かなくなり、石ころの塊になった。

「ふふん、なかなかやるじゃない。わたし程ではないけどね」

「あはは……ありがとうございます」

……さっきからだんだんゴーレムが増えてきたな。もしかしたら、最深部が近づいてきたのかもしれない。警戒心を高めておかないとな。

「シェリィは凄いですね。大分長い時間歩いているのに、息切れ一つしないなんて」

「あなたが貧弱過ぎるのよ。わたしはもう三年も冒険者やってるんだから」

「へぇ……シェリィは俺と同い年ですよね。ということは、十二の頃から冒険者を?」

「そうよ。十二歳で冒険者になって、そこからパーティーを組んだりレベルを上げたりしていたの」

……だとすれば凄い話だ。俺は昔から身体が弱くて、小学生の頃はほとんど外に出られなかったからな。ようやく外に出れるようになったのは中学生からだ。そもそも、普通の十二歳が未知の遺跡の調査や魔物討伐なんて聞いたことがない。

「……シェリィって、やっぱり凄いですね」

「あら、随分と素直に褒めてくれるのね」

「凄いと思ったのは事実ですから」

「……ふーん、そう」

シェリィは先程とは違い、あまり嬉しく無さそうな顔をしながらそっぽを向いた。……あれ、何か間違ったことを言ってしまったのだろうか。うーん、分からない。


――――

(……こいつ、変わってるわね)

隣を歩くコウを横目で見ながら、わたしは内心そんなことを思う。思い出すのは、さっきのコウの言葉だ。この男はわたしの事を素直に褒めてくれる。自分が凄いと自負したことは何度もあるが、こうやっていざ褒められるとどう反応したらいいか分からなくなる。それでも、悪い気分はしないが。

(今まで村のやつも、パーティーメンバーにも、褒められたことなんてなかったな……)

生まれた時から類まれなる才能を持ち、十二の頃に冒険者に抜擢されたわたしは妬み嫉みの対象だったらしく、仲良くしてくれる友人も、親しくしてくれる先輩後輩もいなかった。だから、仕方なく強さを求めるパーティーに入って、馴れ合うこともなく活動したんだっけ。だから、始めて褒められた言葉が、妙に嬉しく感じ――

(……ハッ!いやいや、何を考えてるの、わたし!褒められて喜ぶとかそんなお手軽女じゃないでしょ!?)

そう、断じて違う。ちょっと褒められて喜んでるとか、顔が緩んでしまいそうとか、そんなんじゃないのだ!決して!

(こいつは駒なんだから。情が移ったら面倒なことになるわ!)

わたしはしっかり気を引き締め、コウの隣ではなく前を歩くようにした。変な勘ぐりをされないためにね……!


「……そろそろ、最深部かしら」

シェリィの後ろを歩いていると、そんな呟きが聞こえた。ようやく目が暗闇に慣れてきたので、俺は辺りを見渡してみる。……確かに、この先は行き止まりになっているようだ。空間も広いし、おそらくここが最深部なのだろう。……と、そんなことを考えていると、突然、辺りが明るくなった。壁にかかっている燭台に、何故か一瞬だけ火がついたのだ。

「うわっ!?なんでいきなり……シェリィが付けたんですか?」

「違うわ。コウが火を付けたんじゃないの?」

俺の問いに、シェリィは首を横に振って否定する。……妙だな。燭台が勝手に火を付けた訳でもあるまいし……ここ、俺達の他に誰かいるのか?

「っ、コウ!伏せなさい!」

「え?うわっ!?」

シェリィが俺の肩を組んでしゃがむ。すると、短い音と共に、凄いスピードで何かが通り抜けたのが見えた。

「あれは……魔物!?」

「いいえ、あれはただの魔法よ。……どうやら、本当に最深部に来たみたいね」

シェリィは誰もいない虚空を見つめると、そこに向かって剣を振るった。

「姿を見せなさい!――≪ブライトソード≫!」

光を纏った斬撃が、虚空に向かって飛ぶ。それは途中で何かに当たって姿を消した。……それと同時に、一気に辺りが明るくなる。

「……やっぱり、ゴーレムがいたようね」

シェリィの見ている方を見ると、黒い岩で身体が構成されたゴーレムが立っているのが見えた。ゴーレムの腕はまるで銃のような形になっていて、ゴーレムはその腕をこちらに向けて止まっていた。

「な、なんですか、あれ……」

「スナイパーゴーレム。目立たない場所から凄いスピードの炎魔法を放ってくる危険な魔物よ。さっきの燭台に火がついたのは、多分あいつの魔法が当たったのね」

スナイパーゴーレムはシェリィの説明通り、腕をこちらに向け、魔法の準備を始める。それを見たシェリィさんは、さっと柱に隠れた。

「柱に隠れなさい!スナイパーゴーレムの炎魔法は、当たったら燃えるだけじゃ済まないわよ!」

その言葉通り、先程魔法が当たった燭台は、焦げて一部が炭になっていた。俺は急いで柱に隠れ、ゴーレムの攻撃を避ける。ちらりとゴーレムを見ると、ゴーレムはその赤い宝石で出来た瞳を輝かせながら辺りを見渡していた。

「何とかならないんですか?これじゃあ最深部に辿り着けませんよ!」

「……あいつは、あの瞳に写った人間に魔法を放つの。だから普通は、物陰に隠れて不意をついて、瞳を破壊して倒すんだけど……ここは広いし、遮蔽物がほとんどないわね」

俺達が隠れている柱からは、スナイパーゴーレムから遠すぎる。加えてその間に柱がないので、迫る間に魔法を撃たれてしまう。手を出すのは危険だ。

「じゃあ、引き返しましょう。あいつが見ていないうちに」

「……無理よ。部屋の出入り口まで距離があるし、出入り口には遮蔽物がないわ。あいつの狙いは正確ではないけれど、向かう間に撃たれて終わりでしょうね」

ほぼ詰みじゃないか。――どうする?このままここで膠着するわけにもいかないし、ゴーレムに撃たれて殺されるのも真っ平御免である。……仕方ない、こうなったら……!

「シェリィ。この前やってくれた身体強化の魔法、お願いします」

「……え?別に良いけれど……何をするつもりなの?」

「ゴリ押しします。この前ツインベロスを足止めしたみたいに、俺が囮になって、シェリィに倒してもらいます」

「ごりおし……?いや、ちょっと待って!いくら何でも無茶よ!それに、わたしの魔法の射程じゃ……!」

「じゃあ俺が瞳を破壊します。この剣も大分固いですし、あの瞳も砕けるでしょう。それに、シェリィが援護してくれれば安心です」

シェリィにそう言うと、彼女は何処か不満そうな表情を浮かべてこちらを見る。しかし、それしか手段が残っていないことを悟ったのか、彼女は表情を崩してため息を吐いた。

「……分かったわよ。死んでも知らないからね」

「ご心配なく。まだ死ぬつもりはないですよ」

俺はドンと胸を叩いて、自信満々にそう告げるのだった。













  



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