第一話 転生…?
異世界に転生した三兄妹の長男です。せっかくなので人生やり直そうと思います。の続編です。コウというキャラに焦点を当てた話になります。
暗い空間の中――元は死者を迎え送り出すために創られたその空間に、一人の天使が佇んでいた。整えられた長めの黒髪に、黒く透き通った瞳。名をコウというその天使は、何故か笑顔で虚空を見つめていた。
「……今日も元気ですね。###」
コウは静かに呟いて、瞳に映っている少年の名前を言った。――≪深淵の神剣≫を討ち果たし、存在が消滅してしまった異世界からの転生者、###……またの名を、ユウ。先日、コウは自らの仕える神の命により、神の計らいによって復活したユウの手助けをした。死者のサポートが仕事であるコウにとっては、なんてことのない日常茶飯事である。――そう、普通は。
「元気なのは良いことです。きっと、ルミに似たのでしょうね」
彼は、転生者の少女……エメルナの前世の名前を口にする。さながら、古くからの付き合いであるかのように。コウは笑顔のまま、少し顔を俯かせた。
「……もしも、その世界の俺が生きていたのなら」
コウは息を吐いて、両手で顔を覆った。
「###がここに来ることも、なかったのでしょうか――」
――――
ある所に 廃れた一族がいた
若き無垢な少年が生まれた
穢れも知らない 純粋な人間だ
少年は 憧れを持っていた
少年は 光に照らされた
だから その芽は摘まれた
少年の意志は 一族の意志
そう信じて疑わなかった
神を呼んだ
神を呼んだ
龍に祈った
龍に祈った
逾を呼んだ
逾槭r蜻シんだ
逾槭r蜻シ繧薙□…………
――――
「……思い出したかね」
低い男の声を聞きながら、俺――コウは何もない空間の中で頭を抑える。そうだ、俺は確か……死んでしまったんだ。
「は、はい……思い出しました」
俺は目の前の銀髪の男性……ホロウという男にそう答える。……少し補足をしよう。
俺はコウ。何処にでもいるような男子高校生である。別居している二人の姉がおり、割と仲は悪くない。……まぁともかく、俺は交通事故で死ぬという恐ろしい末路を辿ったのだ。そして今、不思議な空間に身を置いているのである。どうやらここはいわゆる死後の世界というやつで、死んだ魂が集まる場所……らしい。目の前の男性――名はホロウというらしい――はそう言っていた。
「それにしても、まだ若いというのにここに来るとは……随分と災難だったね」
「は、はい」
「畏まらなくてもいいよ。少しリラックスしなさい」
ホロウは落ち着いた様子でそう言った。そう言われても、さっき死んだというのに落ち着けるわけがない。それに敬語で喋るのが癖だからな……
「いろいろ思う所はあるだろうけれど、自らの行動を悔やむことはない」
「……えっと、あの後どうなったんですか?」
「君は病院に運ばれ、死亡と判断された」
「そう、ですか……」
こうして自分が死んだことを知らされると、込み上がってくるものがある。父さんは俺が死んだことを知ったのだろうか。ろくに親孝行も出来ず、先立ってしまったのが悔やまれる。俺が俯いていると、ホロウは気を遣うように声を掛けてくる。
「……顔を上げてくれ。君には、いい話があるんだ」
「え……?」
「若くして亡くなって、天寿を全う出来なかった者には、私から権利が与えられる。……願いを叶えられる権利が」
「願い……?」
ホロウの言う通り顔を上げると、彼は優しい表情で語り始めた。
「君は、異世界というものを知っているかい?」
「はぁ……一応、知ってますけど」
最近アニメとかを見ていたら、よく聞く単語だ。若くして死んだ日本人が、異世界に転生して――みたいな。俺もよくそういうのを観ていたので、頭には入っている。
「実は君は、とある異世界に転生することになっていてね。そこは君の生きていた世界とは別の世界。常識や生きている者が何もかも違う、異質な世界だ」
「転生、ですか」
「そこで、君には一つ頼み事をしたい。その世界に存在する、世界を滅ぼす力を持った存在……虚無龍というのを倒して欲しいんだ」
ホロウが指を鳴らすと、俺の目の前に漆黒の龍の姿が映し出された。禍々しく、全てを喰らうような姿をしていたそれを見て、俺は思わず身体を震わせる。ホロウが映し出されたものに手を突っ込むと、それは霧になって霧散した。
「……何でそんな事を?俺は、戦えるような力は持っていませんが」
「力はこちらで与える。それを駆使して、見事虚無龍を討ち倒したなら……願いを一つだけ叶えてあげるよ」
「願いを……?」
願い、と聞いて俺が思い浮かべたのは、死ぬ直前の時の事。まだ生きていたい。あの時はそれで頭がいっぱいだった。…………ホロウの話が正しければ、それが叶うんじゃないか?
「それって、生き返りたい、とかでもいいんですか?」
「もちろん。莫大な富を手に入れたいとか、名声が欲しいとか、そんな事でもいいよ。それで……どうかな?私の頼み事を聞いてくれるかい?」
……ホロウのその言葉を聞いて、俺の考えは決まった。
「……やります、やらせてください」
「決まりだね。……なら、全力でサポートさせてもらうよ」
こうして、俺の異世界生活の第一歩が始まったのだった。




