第四話 心の在処
楽しい日々は突然終わりを告げる。
読書感想文のために読んだだけの本だったけど、
そのワンフレーズやけに頭にこびりついて離れなかった。
夕焼けはいつもより赤く、公園の影がやけに長く伸びててどれも俺の友達を彷彿とさせた。
「お、いたいた」
俺はそう言って、駆け寄った。
いつの間にかこいつとの日常も当たり前になっていた。
「ごめんごめん。なんか、ぼーっとしてた」
そういう友達は、心なしかいつもより元気がなかった。
いつもと同じ距離、でもいつもと違う距離
ささやかな不安を胸に抱きながら、俺たちは喋っていた。
すると不意に友達は切り出した
「ねえ、ケイの家族ってどんな人なの」
「何だよ急に…」
頭の中は急回転だった。
昔おじさんに連れていかれたパチンコの音を不意に思い出した。
親父は…そんなおじさんを恥だと言ってた。
「俺の家は…厳しい…んだと思う」
「思う?」
「どうでも良いんだ、どうせ忙しくて家にいないし」
寂しい?
友達のその一言は、俺の心を更にざわつかせた。
「どうだろうなぁ〜…俺の家さ、親父も母さんも忙しくてなかなか家にいないんだよな。」
「家って…どんな感じなんだろう」
俺はしまったと思った。
興味ありげな友達と話しているとつい話し過ぎてしまう時がある。
「僕は、家に、帰りたいよ」
「お前…記憶が…」
友達は首を振った。
記憶が蘇ったわけではなかった。
ただ、それは俺たちの時間が進んでいくことを意味していた。
風が吹いた。
落ち葉が、足元を舞う
「なあ…俺の家、来てみるか?遊びに…、他に誰もいねーからなんか色々わかんないかもだけど」
「ありがとう…でもダメなんだ。」
え?と思わず声が出た。
友達のことだから、喜んでついてくるもんだと思ってた。
「僕さ、他のところにいけないんだ。眠っている時には誰にも見えず、起きている時にはケイにしか見えない…そんな感じ」
よく理解できなかった。そんなこと、考えもしなかった。
幽霊じゃないとか、俺にしか見えないとか、いつの間にかそんなことも忘れていた。
「…やってみた?」
「え?」
やめろやめろ。これ以上言うな。
でもまた、親父の言葉が頭を過ぎる…
『お前の事は、お前が決めろ』
友達の事は放って置けなかった。
伝えないといけないと思った。
「動けないかどうか、試してみないと…じゃん?」
「そんな事……考えたこともなかった」
友達は何かを探すみたいに空を見た。
「ありがとう、ケイ。僕にも、帰る場所が」
「俺!今日は帰るわ!ごめんな。ちょっと宿題やらねぇと母さんに怒られちまう。」
「あ…」
俺はこの時、なんで話を聞いてやらなかったんだろう。
楽しい日々は突然終わりを告げる。
そんな事はない、明日も会えるそう言い聞かせて俺は家に帰ろうとした。
「ケイ!」
俺を呼ぶ声。
どこか寂しさを持った声。
あぁ、終わったんだな、この時間は。
「ありがとう、ケイ!また…また明日!!」
「お、おう!」
夕焼けは、沈みかけていた。
「また…明日!」
俺は、そう言うしかなかった。




