9.運、時々大吉
[クエスト完了]
[スキル︰編集][Skill Rank︰D]
[カメラで撮ったものを編集することができる。]
「やっとだ……」
[まさか、おばあさんのお願いを最後まで聞くことになるとは……]
〔いや、こっちのセリフすぎる。〕
[そうとう、運がないのでしょう!]
[あ!称号がついてますよ!]
[称号︰カメラマスター]
[カメラを使いこなす者にしかこの称号は得られないだろう。]
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[スキル︰撮影が“カメラマスター”に影響されました。]
[んなっ!運が良いですね!]
〔何が? 意図して掘り返してたなら、結構なお手前の冗談だな。〕
[いや違くて!これは最初に称号を取った人にだけ与えられる“進化”でして……もうとっくに取られてると思ってたんですけど、光希以外に運が悪いプレイヤー、いなかったみたいですね!]
〔……それ貶してるよね?やっぱり意図的?〕
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[スキル︰撮影がスキル︰トラエルへと進化します。]
[スキル︰トラエル][Skill Rank︰A]
[カメラ以外でも“とらえる”ことができるようになったようだ。]
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何度もスキル説明を見てきたが、いつもながら簡潔すぎる。
ほとんど一文で書かれていて、結局何ができるのか分かりにくい。
〔スキルって、もう少し説明ないのか?〕
[うーん、MCOのスキルは“会得したプレイヤーの想像”によって変わるんです。それこそ編集だって、レベルを上げれば“事実”を編集できるのですよ。]
[まぁ、対象を変えるだけで、できることはひとつなんですけどね]
──どうやら、あくまでMCOの“セカイ”で認められた範囲内でしか使えないらしい。
「スキルを生かすか殺すかは、プレイヤー次第ってことか」
[トラエル]……どう使うべきか、まだ見えない。
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[まぁ、とにかく配信するためのスキルは取れたわけですし! 一旦こっちに戻ってきましょう!]
また周囲が白く染まり、視界が切り替わる。
気づけば、あの“測定所”に戻っていた。
……もう測定は終わったのだから、そろそろ別の名前を付けたほうがいい気もする。
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それはさておき、「配信準備が完了した」と瀬戸さんから連絡が来る。
今の時間は僕が回帰する前──18時頃からだいぶ経ち、すでに3時を回りそうだった。
「う〜ん、とりあえずアカウントだけ作っておきますか」
「アカウント?」
「はいっ!あなたは“存在するはずのない人物”なので、他のプレイヤーもですが、特定を避けるために外見と名前を設定したほうが都合がいいんですよ!」
なるほど。そういうものか。
やっぱり、元いたセカイとはモラルやマナーが違うんだな。
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「じゃぁ外見は私にお任せくださいねぇ〜」
ふっふっふっ、と不穏な笑みを浮かべながら近づいてくるミレイちゃん。
なにこれ、怖い。
キラキラした目は、いつも以上に僕を“とらえて”いた。
誤字脱字があったら報告していただけると幸いです。




