4.お義父さん
ベット以外は特に何もないはずなのにどこか美しい。
引き算の美学とはまさにこのことなのだろう。
…引きすぎている気がするが。
高級感が拭いきれないベットから身体を起こすと、トントントンと扉からノック音が聞こえて、男が円盤のようなものを持って部屋に入ってくる。
「おはよう。泉くん。」
「おはよう!光希くん!」
男があいさつすると同時に、ミレイちゃんが円盤から出てくる。
「ごめんね、ミレイに付き合ってもらっちゃって」
なるほど、この男が先ほど彼女が言っていたお義父さんとやらなのだろう。
となるとなぜミレイは円盤からでてきたんだ?
「ミレイが気になるかな?」
「あ、はい。すみません」
少し見過ぎていたのか男が円盤からでてきた理由を説明し始める。
男が言うには、この高級感漂うベットがある部屋は管理室の休憩所の一部で、美澪ことミレイはMCOの世界の次期“管理AI”なのだそうだ。
そして今さっきまでいた見知らぬ高校は『MCOの世界に新たに構築される予定の場所。』とのことらしい…
「だからバーチャル存在の美澪はMCOの世界以外では円盤を使う、もしくはスマホ・パソコン等のネットがつかえる所でしか行動出来ない」
「そしてここは休憩所と言っても管理室の一角。情報漏を防ぐために外部のネットワーキングサービスごとネットを遮断する設備が導入されている。つまり美澪は今、円盤でしか行動出来ない状況にあるのだ!!」
「あ、!ちなみにこの円盤作ったの俺ね?」
自慢げな顔がミレイちゃんとどことなく似ている気がする。
「私の話より先に義父の自己紹介はやらないのですか?」
ミレイちゃんが不思議そうに言うと慌てたように名刺を探し出す男。
「失礼。俺はこのMCO管理室の統括者をしている、瀬戸綾人というものだ。」
少し折れ曲がった名刺には二頭身くらいのミレイちゃんが写っている。
…よっぽどの親バカというものなのだろう。
「えっと、知ってらっしゃると思いますが、泉光希です。」
「ゲームを作った人ではなく統括者なんですか?」
統括者 あくまでも人を統括する立場。プログラマーなどとは少し違う気がする。と、質問してみたが流石に急すぎただろうか。頭を悩ませながら瀬戸さんは疑問に答えてくれる。
「そ~なるね。円盤とか実際にゲームをするための機器を作るのは僕だけどゲーム作成者は美澪だけを僕に預けてMCOの世界でデバックしてたんだけどねぇ、それから連絡がつかないから美澪が1人前、つまりMCOの管理権限が預けられる状況になるまではゲームに関わり人をまとめる必要ががあった。」
「それだけだよ。」
それだけと言うには瀬戸さんは、懐かしむ発言を誤魔化すように言葉を飲み込んだ気がした。
「いやぁ〜ありがとね?美澪と配信してくれるって言ってくれてよかったよ。衣食住はこちらで用意するからまずは楽しんでプレイしてみて?そんでもって全部解決してくれたら嬉しいなぁ…。。。なんて」
この人はなんか自分がやりたくないことは絶対やらない、自分とは違うタイプだなと正直思った。
誤字脱字があったら報告していただけると幸いです。