30.毒と薬
(はぁ……楽しい……油断すると顔がにやけちゃうな)
50階くらいのときに会った、けーしぃさんとの戦いでは、はっちゃけすぎて冷静さを失っていた。
だから今度は落ち着いて戦っていきたい――そう思っているのに、楽しいとどうしても顔がにやけてしまう。
スキルが使えるようになると、戦略が一気に増える。
次に何が来るのか予想できない――その不確定さが、今の楽しさの理由でもある。
そんなことを考えながら、クナイの個数を確認する。
彼女の背中に刺さっている一本を除き、25個すべて回収済み。
欠損や紛失がない限り新たに支給されないため、投げて外したものは必ず拾いに行く。
もちろん、回収中にも攻撃は飛んでくる。
拾ったクナイをとっさに相手の剣へ投げつけると、金属がぶつかる不快な音が響いた。
「およ?今度は当てたと思ったんだけどなぁ……」
実際には少しだけダメージが入っている。けれど、それを悟られないように表情を隠す。
「こっちとしても、ダメージ入れたと思ったんですけど!」
なんて言ってはみるが、実際にはそんなことはない。
(普通に上手い……)
内心の驚きを隠せないまま、今度はクナイに薬を塗り、自分の利き手の手首に軽く刺す。
一瞬だけ痛みが走るが、それでいい。
薬の効果で動きが研ぎ澄まされていく。
相手――彼は少し驚いたように目を見開き、何かブツブツと呟きながら、再び大剣を構えた。
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