3.『配信』
『配信』――
少女が言うには、MCOというゲームで遊んでいる様子を投稿するもの…らしい。
「で、えっと……。」
どう呼べばいいのか迷っていると、少女は気を利かせるように話し始めた。
「自己紹介がまだでしたよね。私の名前は美澪。うーん……呼び方はミレイでもミレーでも、なんでもいいかな?あんまりそこらへん気にしないし。」
名前の呼び方を“なんでもいい”なんて言う子、ずいぶん自分に無頓着なんだなと思った。
「そうだね、じゃあ……ミレイちゃん。なんで僕なの?」
「え? 義父に言われたから?」
間髪入れずに、ミレイちゃんはそう答えた。
僕のことを知っていて、彼女に僕を紹介した人物――一体何者なんだろう。
「えっと……配信して何するの? ていうか、何の利益があるの?」
「うーん」と彼女は小首をかしげる。
「配信することで人を集められるでしょ? つまり“マンパワー”が手に入る! ってことは、バグが見つけやすい!」
「バグを見つけて何になるの? 僕のいたセカイに戻れなくなるのに。
それに君が得するわけでもないし。」
思わず言い返してしまった。
少し言いすぎたかもしれない、と俯いたまま彼女の表情を伺う。
けれど彼女は――爽やかな笑顔で、真っすぐ僕を見ていた。
「君自体がバグみたいな存在なのに?」
時が止まったように静寂が落ちる。
「だって、ここに来る前もそうでしょ?
あっちのセカイじゃ、自分を危険に晒すような行動、取れなかったはずだもん。
その分、君は強くて、優しくて、人を惹きつける。現に今、私も好感持ってるし!
どれだけ優秀な弟くんよりも私なら君を選ぶよ。」
彼女は胸を張るように自慢げに言った。
……調べ尽くした上で、僕に話しているのだとすぐに分かった。
「私は未来予知なんてできないし、義父みたいな権力もまだ持ってないけどね。
――だからまぁ、とにかく。どう? 興味、持ってくれた?」
目を輝かせ、彼女は僕を見つめる。
まるで“君ならそう言ってくれる”と確信しているように。
……それでも正直、興味はあった。
一つの“セカイ”しか存在しなかったリアルから来た僕にとって、
この“知らない”で満たされた世界は、あまりにも魅力的すぎた。
「仮に配信で人気が出なかったとしたら?」
「君は人気になるよ。絶対に。」
その一言は、不思議と心に響いた。
ぼやかされた気もするけど……どうせ、もう戻れない。
「わかった。――どうせ戻れないし、配信、やってみるよ。」
その言葉を口にした瞬間、周囲が白く霞み始めた。
急な視界の変化に思わず目を閉じる。
――そして、目を開くとそこは。
またもや“知らないベッドの上”だった。
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