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14.5 前日準備

明日のためにも早く寝よう。


そう想い、MCOを抜けて約2時間日付はとうに0時を超えてしまった。


僕が生まれたのは、人が肉体を手放し、データとして存在することを選んだ未来。

だから僕には、戸籍も住所もない。

寝泊まり用の部屋を借りることもできないので、この休憩室が唯一の居場所だった。

まだなにもないこの休憩室が落ち着かなくて外へ出る。


(この場所に僕の物も増えていくといいな)


以前は考えなかった事をふと考えてしまうから深夜は怖い。それがまたいいのだが。



「今日はいつもより冷えるね」

「眠れない?」


ふと聞こえた声に後ろを向く。瀬戸さんが空伸びをしながら歩いてくる。わざわざ追いかけてきてくれたのだろうか。


「まぁ、そうですね眠れないです。」


ここで嘘を付く必要もないので淡々と答える。なぜ瀬戸さんがここに来たのかは分からないが。


「俺も眠れないよ。」

「考え込むことが好きだからね。」

「そう。例えば…」


「なぜこんなにも怪しい少女に誘われてゲーム配信する気になったのか」


「とかね。まぁこちら側としてはありがたいんだけれども。」


少しその言葉にドキッとする。

最初にミレイちゃんに誘われたとき一度スッと頭によぎった『未来を変えるということ』それは僕自身も弟も、両親も、友達も、いなくなってしまうこと。それでも、


師匠達を思い出す。あまりにも才能がなかった僕にもしっかりと教えてくれたあの人に、最後に何を僕に伝えたかったのか。


幸いなのか分からないが、あの人は老いていなかった。スキル…種族…何かしらは関係してるはずなのだ。

それがもし、この時代にでも生きていたらまた会えるのではないか…そんなことを考えてしまった。


「俺も美澪には言えないことがあるからさ、全然こっち側を利用してくれたって構わないよ。」

「でもこれだけは覚えておくんだ。」

「人を探してMCOに入っていった友人は戻ってきていない。」


もちろん体はあるから延命はしてるぞ?と笑いながらいうがあまりにも重すぎる。


少しだけ好印象を持った。


「じゃぁ、僕、先に寝ますね。」


「そ。じゃぁ明日は頑張れよ」



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