13.配信者ヲタク配信者
その日、MCOの関係者たちは大いに盛り上がっていた。
自分たちの知らない、幾数年ぶりの**未知の職業**を持つ少年――その動画と共に。
それは、一本の投稿から始まった。
―――遡ること一時間前。
MCO配信者であり、同時に“配信者オタク”としても有名な『和木カナタ』の視聴者による、おすすめ同時視聴のリクエストがきっかけだった。
「[コウキっていう人の動画見たんだけど、業界内でも未知スキルかつ未知職業だと思うから、カナタくんに見てみてほしい]」
「え〜誰だろ? ちょっと待ってね……」
「あ、見つかった。再生回数はそんなでもないけど、動画コンパクトで見やすそうやし、見てみるか〜」
少し不慣れな喋り方。
私にも、こんな時期があったなぁ……と懐かしみながら再生を押す。
〈ん!クエストあった〉
「ん? あれって……」
[クエスト︰凶暴化した獣]
――MCO最初の村の中でもレベルが高く、報酬も少ない。
プレイヤーの間では“スルー推奨クエスト”として有名なやつだ。
「報酬が見えないときって、たしか数%の確率で『敵のレベルが倍に上がるけど、良いものがもらえる』ってパターンだったよね?」
コメント欄に[間違いないぞ]の文字が流れる。
「レベル倍って……これ大丈夫? 運悪いね」
[職業次第。]というコメントが流れた直後、
コウキさんが静かに口を開く。
〈そういえば、僕の職業お見せしてませんでしたね〉
「かし……の回帰者?」
「え? なにそれ?」
「スキルとか見えないのかな?」
画面には「職業以外はMCOの規約によりお見せできません」と表示されていた。
他の職業なら通常、スキル欄も表示されるはずなのに。
明らかな異変。
そして、どこか自信のなさそうなコウキさんの声。
――MCOの経験が浅いのだろうか?
画面の中で「とらえる」と呟いた瞬間、物音の方向にいた狂犬が空中で静止した。
「……は?」
思わず動画を止める。
コメント欄にも、私と同じように混乱の声が溢れていく。
「……い、いやいやいや、え?」
一拍置いて、私は深呼吸をして言った。
「一旦、進めよ!」
再生を押すと、コウキさんは強化された獣を相手に、明らかにランクの低い片手剣でその首を切り落とした。
「え? あの剣、そんなに切れるランクじゃないよね?」
そして、彼は手を合わせてクエスト報酬を受け取る。
〈拙いところもあったと思いますが、また見て頂けると幸いです〉
そう言い残して動画は終わった。
――私と、騒然とするコメント欄を残して。
「これ……は……逸材?」
まだ彼の素性は誰も知らない。
だが、その話題性は圧倒的だった。
私の配信も、彼の動画も、視聴時間は増える一方だった。
誤字脱字があったら報告していただけると幸いです。




