12.特殊クリエイト 瑕疵の回帰者
「うーん……」
どうしたものか。危険区域に入ったはいいものの、なかなか見つからない。
適当に話していた話題も、もう尽きてしまった。
あっ。
「そういえば、僕の職業、まだお見せしてませんでしたね」
「ここをこうして……っと」
[職業クリエイト︰瑕疵の回帰者]
[選ばれし運命の回帰者。MCO唯一の一人限定クリエイト。本来ならば回帰者とは最強格のクリエイトだが、瑕疵状態ではほとんどの恩恵を受けることがない。本来このクリエイトが選ばれるはずがない。何故ならば、回帰は禁忌であり瑕疵は欠陥なのだから。]
[専用スキル︰賢者の瞳[Skillrank A]Lv.1、予知[Skillrank B]Lv.1]
[その他のスキルは発見されていません。]
出た……見えてるんだろうか?
その直後、耳が物陰からの微かな音を拾う。
ミレイちゃんの[映っていないです…!]というウインドウサインには気づかなかった。
[賢者の瞳]
――これは、最初に職業を見たときに発見したスキル。
倒せるレベル+20までの相手の情報が分かるらしい。
[予知]
――こっちは、生き物について理解を深めることで、その行動パターンから未来予知のような現象を起こすスキルだという。
にしても、瀬戸さんもミレイちゃんも気づかなかった職業なだけあって、スキルの発見は未知数だそうだ。
専用スキルはレベルが上がると「精度」が上がり、普通のスキルは「可用性」――つまり使い勝手が上がる、らしい。
物音が近づいてきた。反射的に武器を構える。
最初の村では質の良い装備が少ないため、ミレイちゃんに貸してもらった片手剣を音の方向へと向けた。
その瞬間、物陰から獣が飛び出す。
バランスを崩しながらも咄嗟にスキルを発動させた。
〈トラエル〉
「獣を捕縛」
その瞬間、見えない何かによって獣の動きが止まる。
〈賢者の瞳〉[対象︰獣]
発動と同時に情報が流れ込んできた。
[狂犬︰Lv.5]
[突然変異した子犬。もう理性はないようだ。]
[スキル︰犬歯Lv.2、爪攻撃Lv.1]
[特殊異常︰凶暴化、催眠、奴隷]
……特殊異常? 催眠? 操られているのか。
「可哀想に。すぐ楽にしてやるからな」
そう呟き、狂犬の首に剣を当てた。
そして、もう動かない子犬に手を合わせる。
「これで、クエストは終わりですね」
[クエスト完了]
[クエスト報酬]
[称号︰最初の村の便利屋]
[硬貨︰1,000]
「えっと……どうでしたか?拙いところもあったと思いますが、また見ていただけると嬉しいです」
そう言って締めの言葉を残す。
称号については、後でゆっくり確認しよう。
そう思いながら、撮影用の〈トラエル〉を終了するのだった。
誤字脱字があったら報告していただけると幸いです。




