厨二病の国ヴァルナユ帝国
「そういや、あの魔術師?はなんだったんだ?」
堂宮が疑問を告げると同時に
ウィンドウが開く
黄昏の蜃気楼
黄昏時に森へ現れ、魂を見抜き
その場に居るものの魂を自身の魔法の氷で
狩り尽くす。
魔法を使うまでは青白い布で幽霊のようだが、魔法を使うとその姿は一変し
一つ目がつき帽子やローブといった
魔術師の姿へとなる。
或る特定の森では、倒せばスキルを貰える
「魂……だから隠れてても見つかったのか?」
「……ずるくねぇか??」
(ゲームならクソゲー確定だな)
「しかも形態変わるとか初見殺しだろ……」
文を読みながら文句や愚痴が口から出る
そして1番下の文を見て
「スキル……?」
(ここが特定の森かは知らんが、見てみるか)
少しの好奇心で
「ステータスオープン」
スキル 蒼き矢、穿つは我の敵、殲滅せよ
氷柱の雨
先程はHPとMPしか見ていなかったからだろうか
気づかなかったのだろう
「厨二病かよ?!」
(俺のスキルもだけど!!)
語彙力のある厨二病というのはこういったものに全力投球なのだ
「てか、アイツ別にこんなの言ってなかっただろ」
(なんで俺は言う必要あるんだよ……?)
(敵は無言とかか…?余計クソゲーじゃねぇか)
そんな事を思いながらも
近くに小さな湖を見つけて
汗をかいた顔を洗う
(そういや、顔も見れるんじゃねぇか?)
顔を上げて、湖の表面を見る
そこには金髪緑眼の容姿端麗な少年がいた。
「は!?」
(この顔……!?)
堂宮が驚いている理由、それは
前世で自分の前世はこんな容姿だったと話していた容姿だからだ。
それに前世での顔とは全くもって似通っていない
それも驚いた一因だ
(マジで前世のことを持ってくるの辞めろ!!)
一生の恥、忘れたいぐらいなのに
何故か思い出させてくる
(業か?!前世での業なのか!?)
羞恥心により悶える堂宮
そのまま20分程休憩し、体力は十分とは言えないが回復した堂宮は動くことにする
「……そろそろいいか」
だがしかし
「ここどの方向だ……?」
周りは高い木々葉は覆い茂っており
無我夢中で走ったせいで明かりが見えていた方向が分からない堂宮は、
直ぐに項垂れ座り込むことになった
「嘘だろ……」
その時
空から爆発音のような物が聞こえてくる
「爆発…いや、花火か!」
葉の途切れている箇所から空を見れば少し白い煙が漂っていた。
「これなら行けそうだ……!」
音の聞こえる方向は堂宮の向いていた方向と真反対で、下手に動かなくて良かったと心から思う堂宮
「よし、行くぞ……」
ここからは獣や魔術師に見つかることも無く
茂みを潜り、方向を誤らないように
進んで行く
そしてようやく
「抜けれたぞ……!」
森を抜け、見えたのは少し苔むし古びた薄黄色の城壁と巨大な木の門
空には大輪の火の花
「……まて、これパスポートとか……」
前世では国を渡るにはパスポートが必要
無ければ、密入国者として
「逮捕……」
「……とりあえず、門番とか居るはず」
(話しかけるだけ話しかけてみるか……)
止めていた足を動かし、前に進む
そうしたら門に近づく堂宮に気づいた男の門番であろう人物が腕を組み城壁へ寄りかかったまま話しかけてくる。
「おい、この先はヴァルナユ帝国」
(やっぱ止められたか……)
「えっと……俺、何も持ってなくて門番さん…どうしたら入れますか……?」
「いや、私は門番じゃないが?」
「え?」
(門の前に立ってんのに?!)
「入るなら入れば良いだろう」
「あの、入国審査とかは……?」
「なんだそれは」
(無いのかよ?!)
「えっと……入って良いん、ですか?」
「勝手にしろ」
「あ、ありがとうございます……?」
「ちなみに…なんで門の前に……?」
「ふっ……四大精霊なる龍の降臨へと挑む為よ」
「は、はぁ……」
「ありがとうございました……?」
困惑しながらも礼を告げて門の中へ入る
国は賑わっており、屋台なんかも出ていた
「なんかの祭りでもやってるのか……?」
キョロキョロと周りを見回しながら歩く
すると
「なんだあれ……?」
ある屋台へ人だかりができていた為
堂宮は気になり、覗き込んで驚愕した。
(俺が前に持ってたようなやつじゃねぇか!?)
思わず後ろに下がり、屋台を見回す
周りにある屋台の看板は
現の終焉
闇夜に輝く
死霊漂う館、敵を落とす為の引金
自らを焼く業火
神々の庭園
察する人間も居るだろうが
上から
夕食屋台
光るブレスレット
お化け屋敷
射的
たこ焼き
綿あめ
となるのだが
厨二病であった堂宮には
当たり前の如く読めてしまい
(この国頭おかしいだろ!!!?)
脳内で国へと八つ当たりをする
(人は並んでるし、疑問にも思ってなさそうだな…商品自体はおかしくないし……)
たこ焼きを売っているおばさんが堂宮へと話しかけてくる、至って普通のおばさんのようだ
「業火、どうだい?」
額に手を当て椅子に足を組んで座って来なければ
「俺お金持ってなくて……」
(名前業火なのかよ…?確かにたこ焼き熱いけど……しかもアンタも厨二か!)
「金なんざ良い、やるよ」
入れ物であろうものを渡してくるおばさん
その腕には何らかの紋様のタトゥーと緩んだ包帯
(腕にタトゥー入れすぎだろ?!包帯で隠せてねぇよ?!てかわざとか??)
「……あ、ありがとうございます」
「包帯、解けてますよ……」
受け取ってから一応言ってみる
「おっと危ない危ない、封印した邪神が出てくるところだった」
「ありがとうな」
直ぐに包帯を巻き直すおばさん
「いえ……」
(わざと……か??でも巻き直したんなら、違うのか……?)
とりあえずたこ焼き改め、業火の入った入れ物を持ち人の居ない所へ行くと
ベンチがあったのでそこに座る
(箱に入ってる……ちょっといい所のに見えるな)
開けて見えたのは至って普通のたこ焼き
「うわ、うまそ……」
それでも1日、何も食べていなかった堂宮には
とても美味しそうに見えた
手を合わせ
「いただきます」
そう言ってから
付いてきたフォークに刺して息をふきかけ、少し冷ましてから食べる
「あっつ……!」
確かに業火と言いたくなるような熱さだが
とても美味しい
顔を綻ばせそれを訴えているかのようだ
「うま……」