第95話 頼もしい増援
限界突破――
スマホを魔動人形へと接続することで使えるようになる機能の一つで、俺自身の魔力を魔動人形へと注ぎ込み、一時的に限界を超えた爆発的な出力を得ることが可能となる切り札だ。
攻撃や防御、更には機動力など、あらゆる面で規格外の力を得られる機能だが、一つ大きな欠点がある。
その欠点とは、中断ができないことだ。つまり、一度発動すると俺の魔力を絞り尽くすまで止めることができない。
魔力が枯渇すると意識を失ってしまい、運が悪ければ死亡する可能性すらある。要するに諸刃の剣だ。
このリスクを回避するには、魔力が尽きる前に魔動人形を降りるしかない。だが一度降りたら最後、魔動人形の再起動にはクールタイムが必要なので、おおよそ五分間はこの壮絶な戦場に身一つで放り出されることになる。
つまりは、限界突破を使ったならば必ず相手を倒すしかないのだ。もしくは魔力が切れる前に安全な場所まで避難すればいいのかもしれないが、それじゃあリンを助けるという目的は果たせない。
「……よし、いくぞ」
不安な感情を全て飲み込み、スマホに手を伸ばしたその瞬間だった。
「ケイタ!」
「っ!? あれは……みんな!?」
聞き覚えがある声で名前を呼ばれたので、ピタッと動きを止めた俺は、声のした方向にメインカメラを動かしその姿を確認した。
そこには予想通り知り合いの姿……もとい四機の魔動人形の姿があった。
「おう坊主、久しいのう。ほいっと!」
「ゴードンさん! お久しぶりです」
「ハァイ、なかなかクレイジーなことになってるねぇ!」
「アイシャさん……はは、ちょっとマズイっす」
現れたのはコンペティションでチームを組んだメンバー四人。言葉は発しなかったものの、ゴリさんとキールの二人もちゃんといる。
それぞれが獣を蹴散らしながら俺へと近付いてきた。その活躍もあり、巨人が生成した獣の群れはほぼ殲滅することごできた。
(このメンバーならもしかしたら……)
連携の取れるこのメンバーなら限界突破を使わなくても済むかもしれない。そう思った俺はスマホに伸ばしかけた手を引き、操縦桿へと戻す。
そして早速彼らに協力を求めた。
「みんな、あの巨人を止めるのに協力してほしいんだ。頼めるかな……?」
「うむ、無論そのつもりでここまできたのじゃ。地下ではあやつが歩く度に大きな揺れが起こってのう。天井の一部が落下したりと、なかなかに悲惨な状況じゃよ」
「怪我人も少なくないわ。これ以上被害が拡大する前にアレを止めないとね」
「……手を貸そう」
「フン、しかたねぇな――って、おい。お前それは……!?」
四人と合流した俺は協力の要請をしたのだが、全員快く引き受けてくれた。しかし、約一名俺に言いたいことがあるようだ。
まあ無理もないだろう。なんせ今のサイクロプスにはキールの乗る機体、『ブルーテンペスト』の飛行ユニットを丸パクりしたバックパックが装着されているのだから。
俺なりのアレンジは加えたものの、見た目とかのベース部分はほぼそのままパクったので、キールが驚くのも当然だろう。
「まあ怒るなってキール。このあいだ見たときに気になっちゃってさ、俺も使ってみたかったからマネさせてもらったよ」
「な……マネだとか以前に、こんな短期間で作れる方がおかしいだろ!? この装備はウチの開発チームが数年かけて完成させたんだぞ!?」
「あー……まあ製造法方は企業秘密ってとで」
……そうか、そうだよな。
イマジナリークラフターも、俺のような特殊なスキルもないと、装備一つ作るのに数年はかかるか。俺の周りの環境が整いすぎていたので失念していた。
「お二人さん、世間話はそれくらいにしたほうがいいんじゃないかしら?」
「チッ、まぁいい。確かに今はお前のことなんて気にしてる場合じゃないな」
「……そりゃどうも」
幸い追撃などはなかったが、いつまでも話し込んでるわけにはいかない。急いで作戦を立てないとな。
「それで坊主。勝算はあるんじゃろ?」
「ええ。あの巨人の姿は、ある装置によって形成されています。その装置を止めることができれば、あの巨人は形を維持することができなくなるはずです」
「……その装置とやらが弱点ということか」
「はい……ただ装置を破壊するのでなく、引き剥がすのが俺の目的です。装置と一緒に俺の大切な人が囚われているんです」
「成る程……破壊するよりも困難じゃが、そういった理由なら多少無茶でもやるしかないのう」
「――ありがとうございます! 俺が接近してなんとかやってみますので、皆は援護してくれると助かります」
「オーケー、前と同じ作戦ね!」
「ホホッ、腕がなるわい」
こうして、奇しくも以前共闘した時と同じメンバー、同じ作戦で戦うこととなった。違うのは相手だけだ。
一人の時とは違う大きな希望を胸に、俺は再び巨人へと相対する。




