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第91話 敵地侵入


「はぁっ!? なんじゃありゃ!?」


 カティアを追いかけてようやく地上に出たと思ったら、パッと見一番高い建物が音を立てながら崩壊しているのが目に入った。

 それだけでも驚きなのだが、その建物の内部から、所狭しと謎の巨人が姿を表しつつある。


「でっけぇな……! あれは魔動人形なのか? いや、それよりまさか、カティアが向かったのはあの場所なのか……?」


 この距離からでもわかるその巨大さは、魔動人形など比べ物にならない。

 もしそんなものが暴れるような場所にカティアたちがいるのだとしたら、命がいくあっても足りないだろう。


「――くそっ! カティア、リン、無事でいてくれよ……!」


 近付くのは明らかに危険だが、二人の安否を確認しないことには逃げ出すことはできない。


 ここまでの疲れなど吹き飛んでしまったかのように、俺は全力で黒い巨人の元へと駆け出した。

 


「ここは……やっぱりGODSの敷地内か。入っても大丈夫かな」


 幸いなことに、あの巨人は出現地点を離れ、俺の進行方向とは別の場所へと歩いていったおかげで、かち合うことはなかった。何事もなく目的地へと辿り着くことができた。


 だが問題は、ここがGODSの本社がある敷地だということだ。なぜわかったかというと、会社のロゴが描かれた大きな看板がそこらじゅうて威張り散らしてるからだ。

 しかし、周囲は高い塀で覆われており、とてもじゃないが俺の身体能力じゃあ上れそうにない。


「お、あそこに入口っぽいのがあるな。いやでもさすがに正面からは無理か……?」


 どこか入れる場所がないかと辺りを見回すと、大きな門が開いているのが目についた。ここで突っ立ってても仕方ないので、とりあえず様子を伺うために近付いてみる。


「こんにちは――うわっと!」


 ちらりと中を覗いてみると、誰かが凄い勢いで走って出てきたので、軽くぶつかってバランスを崩してしまった。

 その人は俺のことを気にすることなく、そのままどこかへと走り去ってしまう。


「いてて……随分慌ただしいな」


 改めて中の様子を確認すると、喧騒やら悲鳴やらで随分と混乱している様子だった。

 その影響か、門番の一人や二人は居るものだと思っていたが、現在この門には誰も付いていないようだ。


「この慌てよう……あの巨人はGODSとは関係がないのか? いや、それよりこれはチャンスだ。混乱に乗じて忍び込もう」


 あの巨人の出現はGODSにとって想定外の出来事だったのだろう。よく見れば巨人の出現した建物以外にも、ところどころ被害が及んでいるようだ。あれがGODSの所有物であれば、ここまで慌てる必要はないはずだ。

 これを千載一遇の好機と解釈し、思いきって敷地内へと侵入する。


 ちょいちょい人とすれ違うが、さっきぶつかった人もそうだったように、誰も俺のことを気にかけてはいないみたいだ。きっと自分のことで精一杯なのだろう。


「これならあまりコソコソしないで大丈夫そうだな」


 逆に、他の人たちと同様に走り回っていたほうが怪しまれないだろうと思い、倒壊した建物の近くに手掛かりがあるだろうと当たりをつけて、真っ直ぐ現場に走り始めた。

 

「――っ!? カティア!? おい、大丈夫か!?」


 瓦礫だらけの場所に到着し、辺りを見回すと、倒壊した建物の周辺にカティアらしき人物が倒れているのを発見する。

 美しかった銀の髪には赤が混じり、遠目からでもわかるほど傷を負っているのがわかる。


「うぅ……」

「カティア! こんな怪我して……! いったい何があったんだ!?」


 血だらけで倒れていたのは、やはりカティアだった。

 崩落に巻き込まれたのだろうが、あまりに出血がひどい。顔色も血の気が失せて蒼白だ。このまま放置していては命に関わるだろう。


「なんとかしなきゃ――あっ、そうだ! 確かポーションがあったよな……」


 そういえば初心者用ポーションとやらを所持していたのをふと思い出した。最初に使って以来、怪我することもなかったので完全に忘れていた。

 初心者用と銘打ってるので、回復量は心許ないかもしれないが、なにもしないよりかはマシだろう。


「ほらカティア、ポーションを飲んでくれ」


 スマホを操作し、アイテムストレージからポーションを取り出し、カティアの上体を起こしながら口元へと近付ける。

 大半がこぼれてしまったが、それでもいくらかが口内へと入り、うまいこと飲み込んでくれたようだ。


 ポーションは即座に効果を発揮し、淡い光がカティアを包み込み、蒼白だった顔色に血が通い元通りになった。


「ん……ケイ……タ?」

「ああ、俺だカティア! 体はどうだ? 動けるか?」

「――治療してくれたのか。……ああ、問題ない」


 カティアは背中を俺に支えられたまま、手を閉じたり開いたりして異常がないか確認していた。

 血が消えたわけてはないので一見重傷に見えるが、本人いわく問題はないらしい。あの怪我が一瞬で治るとは異世界のポーション恐るべしだな。


「――――で、お前はなんでここにいるんだ?」

「……へ?」


 などと感心していたのも束の間、カティアの口から予想外の言葉が発せられたのだった。

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