第69話 初日
「おお、ここが会場かぁ。思ったより小さいな」
翌日、俺たち三人は地上にあるコンペティションが行われる会場へと到着した。
王国のアリーナと比べればこぢんまりとした場所だが、それもそのはず。ここはGODSの所有する魔動人形試運転用の施設なのだそうだ。
そのため、当然ながら観客席なんてものは存在しない。それ故に、アークライト王国にあるアリーナと比べると、だいぶ小さく見えてしまうのだ。
「まあ初日だし、こんなもんだろ」
「初日……? 何日もやるのか?」
『勝てばいい』とは聞いていたが、そういえば詳細なルールなんかは聞いてなかったな。
「ああ、わりぃ。言ってなかったな。 このコンペティションは各カンパニー毎に代表者一名が無料でエントリーできるんだ。大半のカンパニーは賞金や、GODSに取り入ろうとして参加するのさ」
無料で参加できるんだったらそりゃあ参加するだろう。
賞金が手に入らなくても、活躍できればカンパニーの宣伝にもなるだろうしな。
アリーナと同じ環境らしいので、負けても命の安全は保証されているので、とりあえず参加だけ……って人も多いだろう。
「オレらのような小さなカンパニーも含めると、参加者は百や二百じゃ収まらねぇ。だから選考は数日に渡って開催されんだよ。確か……初日は十ヶ所の会場で同時に開かれんだったかな」
「えっ、そうなのか!? それじゃ今日は予選みたいなものなのか?」
「まあ、そう考えてもらって間違いないぜ。今日の選考を通過すれば、後日開催の第二選考に進むことができるんだ」
今日で全部終わるものだと思っていたので、それなりの心構えはしていたけど、どうも違うらしい。
少しばかり気が楽になったので、俺は安堵のため息をついた。
「……ん? でもそんな人数がいるなら、今日はいったい何回勝てばいいんだ?」
「一回だ」
「えっ、いや参加者数を考えれば一回戦じゃ済まないだろ」
会場がいくつもあるとはいえ、全部で数百の参加者がいるのに、試合が一回で終わるわけがない。
「あ……まさか!?」
一つ思い当たる方法があった。
それは――――
「そう、一対一じゃねぇ、全員が一斉に戦う……バトルロイヤルってやつだ」
やっぱりバトルロイヤル方式か。数も多いし、時間をかけずに選考するには最適なやり方だろうな。
「と言っても魔動人形はデケぇからな。さすがに全員いっぺんにってことはねぇよ。数回に分けられて勝ち残ったヤツだけが次の選考に進めるんだ。オレたちの出番は……最後のグループみたいだな」
会場の入り口付近には今日の組み合わせが掲示されていた。そこには各カンパニーの名前が綴られており、AからEまでの五つのグループに組分けされている。
キャッツシーカーの名前はEグループにあった。
「ねーねー、はやくいこ?」
小難しい話に飽きてしまったのか、リンは俺の服の裾を引っ張りながらそう言った。
「そうだな、ここまできたら対戦形式がどうだろうと関係ないか。頼んだぞ、カティア」
「……ん? 言ってなかったか? ケイタが出場するんだぞ」
「えっ? はぁ!? なんで俺が!?」
そんなの初耳なんだが……。
俺はてっきりカティアが出場するものばかりと思っていた。なぜなら、戦闘に関しては彼女の方が俺より圧倒的に優れているからだ。
「なんでって……俺は魔動人形の操縦が苦手でな。なーんか思い通りに動かすことができねぇんだよ。リンも乗れるけど、戦いに慣れてないし……まあ、アレだろ?」
「リンは……まあ、うん」
リンが魔動人形に乗ったら好き放題やって収拾がつかなくなるような気がしてならない。選択肢から外れるのは納得だ。
……それにしてもカティアが魔動人形の操縦が苦手だってのは意外だな。スフィアに触れて念じるだけで自在に動かせるはずなんだけどな。
魔動人形がカティアの動きのイメージに追い付けていないのか?
カティアの獣のようなしなやかな動きを再現するには、相当な可動域の広さが必要になるだろうし……。
いや、今はそんなことを考えていても仕方ないな。
そういう事情なら俺が出るしかないだろう。今回作った魔動人形を一番熟知しているのも俺だしな。
「……わかった、俺が出るよ」
「わーい、ケーくんがんばってね!」
「頼んだぜ、ケイタ」
二人の激励を受け、やる気は十分に高まった。
よーし、やってやろうじゃないの!
「あ、くれぐれも正体がバレないよう気を付けろよ。密入国がバレたら死刑もあり得るからな」
「…………」
……いや一言余計ですよカティアさん。
高まったモチベーションを瞬時に失いつつも、出場のため、俺は一人で選手控え室へと向かうのだった。




