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第57話 プラセリアへ

「んぁ……!?」


 ガタンと、大きな揺れに俺は目を覚ました。


「ここは……?」


 目を開くと知らない場所だった。っていうか空。

 横を向くと景色が高速で流れていき風を感じる。かなりのスピードが出ている乗り物に乗っていることがわかる。……いや、乗っているというか、仰向けで縛り付けられているみたいだ。首は多少動かせるけど、身体がまったく動かせない。


「よぉ、やっとお目覚めかい?」


 聞こえた声の方へと頑張って目線を送ると、視界の端には銀色の髪がちらっと見えた。この髪、この声は……カティアか。

 ……そうだ、思い出したぞ。カティアが俺を訪ねてきて、煙の中俺は気を失って……え、これって拉致?


「わりぃな、実力行使させてもらったぜ。……にしてもちょっと寝過ぎじゃねぇか?」


 あ、やっぱそういう感じですか。

 寝過ぎって……外はまだ明るいしまだ半日も経ってないんじゃないか?


「丸一日寝てたんだよ。……まぁおかげさまでオレとしては手がかからなくて楽だったけどよ」

「丸一日!? どうりで頭がすっきりしてると思ったよ」


 首トンで一日気を失ってるとか俺の体貧弱過ぎない?

 それとも気付かないうちに疲れが溜まっていたのかな?

 

「あー、まあその……身体は大丈夫かよ? そんなに力入れたつもりはなかったんだが、こんな長い時間目を覚まさないから、死んじまったかと思ってさすがに心配したぞ……」

「あ、うん。とりあえずこれほどいてもらってもいい?」



「うん、問題なさそうかな」


 とりあえず手近なところに停まり、俺を縛りつけていた

縄をほどいてもらった。


「――そうかよ。それにしてもアンタ、自分の置かれている状況理解してんのか?」

「……え? 拐われたんじゃないの?」

「わかっててそんな呑気にしてんのかよ……」


 カティアはあっけらかんとした俺の態度に、呆れたように肩をすくめた。


 まあ、正直驚いていると言えば驚いていると言わざるを得ない。けど、なんとなく危機的な状況って感じはしないんだよな。

 今だって、逃げ出すかもしれないのに拘束を解いてくれたし。


「ほら、俺のこと心配してくれたし……カティアって優しいから安心しちゃったのかも?」

「――バッ、バカヤロウ! 誰が優しいって!? オレの仕事はアンタを無事送り届けることだ、それだけだから勘違いすんなよな!」

「顔赤くしちゃって、結構可愛い――ぶべっ!」


 その先の台詞は、カティアにアイアンクローされたことによって中断された。

 まったく、誉められて恥ずかしがるなんて、やっぱ可愛いいててててててて!


「それ以上言うと握りつぶすぞ」

「痛い痛い、もうやってるって! なんも言ってないのにぃぃぃっ! やめて、ギブギブ!」


 なんでだ!? 心の中で考えていただけなのに、まさか、魔法とか!?


「――なんか良からぬことを考えている気がしたんでな」


 野生的直感っ!?


「わかったわかった、もう頭の中でも考えないから!」

「――フン、やっぱ変なこと考えてやがったじゃねぇか」


 仕方なく、といった感じで手を離すカティア。

 いてて……見た目は普通の女の人なのに、めっちゃ力強いな……獣人ってみんなそうなのか?


「……ほら、あそこを見な。そろそろ到着だ」


 俺が痛みのあまり顔をさすっていると、カティアがなにかを指し示したので、言われるがままに彼女の指の先へと視線を移した。

 

「おお……!」


 そこには思わず驚嘆の声が漏れてしまうほどの光景が広がっていた。

 遠くに見えるのは、大きな建物が集合した都市。遠目からでもわかるほどに、その都市にはあちこちに煙突があった。

 大小様々な煙突から漏れなく立ち込める煙、この距離からでも僅かに香る鉄の臭い。


 パッと見ただけでもアークライト王国とは文明レベルが違うことがわかる。少なくとも産業においては数世代先を行ってそうだ。


「あれがプラセリアの首都、『メイクス』だ。……さて、そろそろ国境だ。こっからは別ルートでいくぜ」


 未だ興奮冷めやらぬなか、カティアがなにやら気になることを言ったのだった。


「別ルート?」

「あぁ……とっておきの近道だ」


 カティアはどこか妖艶さを感じさせる笑みで、自慢気に俺にそう言った。

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