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第51話 シルヴィア回想編④

「ゴガァァァァァーーーーッ!!」


 魔物のの咆哮が反響し、辺りに響きました。

 

「おっかねぇ……ドラゴンだ。くそっ、魔動人形の支給でもしてくれりゃあいいものを……あんなのに狙われちゃかなわねぇな」

「そうだな……おい、馬車を一旦止めろ。しばらく動かずにやり過ごすぞ、周囲の警戒も怠るな」


 ドラゴン……もう魔物でもいい。私ごとで構わないから、この馬車ごと襲ってくれないかと、半ば自暴自棄になりながら停止する馬車の荷台で私は俯いていました。


 ――全てを諦めかけていたその時、天からの助け……いえ、救世主様が私の目の前に現れたのです。


 バサバサと、帆を突き破り荷台へと降り立った人物がひとり。


「いててて……い、生きてる?」


 黒髪黒目とこの辺りでは全く見かけない珍しい特徴の男の人。

 この窮地に突如現れた人物に、思わず目を丸くしてしまいました。


「あれ……? お邪魔でしたか?」

「んー! んー!」


 どこか呆けたような声色のその男性に、クロードが必死に訴えかけていました。そうです、この方がどなたかは存じませんが、助けにきてくれたのだとしたら、これはまたとない好機……!


「おい、なんだ今のは!? 何か降ってきやがったぞ!」

「崖崩れで岩でも落ちたか……? ったく、ドラゴンもいるし、ここはろくなとこじゃねぇな」

「人質を運んでる途中だ、万が一のことを考えて一応中の様子を見てこい。怪しい奴がいたら殺して構わない」


 まずいです……このまま野盗が戻ってきたら彼はきっと……!


「人質……? あー……これってもしかしなくてもヤバい?」


 彼はどこかぼんやりとそう呟くと、ふと私と目が合いました。


「か、可愛い……」


 か、可愛いって……私がですか!?

 そんな急に言われましても――はっ、そんなことを考えている場合ではありませんね。

 

 彼は何やら見たこともない道具を手にしています。

 神様が使わしてくれた御使い様なのでしょうか。ですが今はそのようなことを考えている場合ではありません。

 実力不足の私ではなくクロードを先に助けるよう、目で訴えかけます。

 

 私の訴えを理解していただいたようで、すぐさまクロードへと近付き、不思議な道具を使い鎖をあっという間に断ち切ってしまいました。

 

「あ? 誰だお前? 何をしてやが――」


 野盗が荷台を覗く頃にはクロードの拘束は完全に解かれていました。

 そして、人質のいないクロードを止められる者はこの場にはいなかったようです。

 あっという間に野党を叩き伏せ、窮地を脱しました。

 

「ご助力感謝致します。あなた様のおかげでお嬢様を拐われずずに済みました」


 クロードが馬車へと戻り、救世主様にお礼を言いました。


「あ、いえ。成り行きというかなんというか……大したことはしてないんでそんなに畏まらなくて大丈夫ですよ」


 そんな……命の危険がありながら助けていただいたというのに、大したことはしてないだなんて……なんて謙虚なお方なのでしょう。

 これほど勇気のある行動は誰にでもできることではないというのに……。


 その後私の拘束も解いていただき、野盗の馬車を拝借して、そのまま家へと引き返すことになりました。

 クロードは御者台に座っていたので、実質救世主様と二人きりでしたので、お話をする機会を得ます。


 感謝の意を伝えると、なぜだか顔を赤らめてらっしゃったので理由を伺うと、『可憐で見とれてしまった』との理由でした。


 トクン、と心臓が跳ねたのを感じました。

 

 なぜならその言葉はお世辞などではなく、本心からの言葉だというのが理解できたからです。

 というのも、救世主様は私が見てきたどの殿方とも違うタイプで、言うなれば『純粋無垢』と形容するのが適切でしょうか。


 争いの無い平和な世界で、どこか幼さを残しながら大人になったような……そんな方でした。


 そう言われ、この場は平静を装い返事をしたのですが……救世主様には私の感情が露呈していないかが心配です。

 ふしだらな女性だと思われてはなりませんからね!


 その後お互いに自己紹介をしました。


 救世主様のお名前は『ケイタ・サガミ』様。

 あまり聞かない響きのお名前でしたので、出身を伺ったところ、どうも名前以外の記憶を失ってしまったそうなのです。


 それを聞いた私はこれ幸いと、ヴァイシルト家に来るようお誘いしてしまいました。

 私たちを助けたことを、さも当然のことのように言われていたので、このまま別れたら二度と会えないように思えたからです。


「すみません。ではお言葉に甘えさせてもらいます」


 ケイタ様から肯定の言葉が返ってきたので、思わず顔がほころんでしまいました。

 

 ――こうして、私とケイタ様の関係が始まったのでした。

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