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第41話 タンク×タンク

『――――と……とんでもない攻撃だぁ! フラムローゼ様の駆るガレオニクスの必殺の一撃! その凄絶なる猛炎にさらされ、地面が溶けてしまったぁ!』


 実況者の声で、茫然自失だった俺は、はっと我に返る。

 危ない……何もせずに終わるところだった。


 ガレオニクスへと視線を送ると、マント状だった六本の背部バインダーが左右へ扇状に展開していた。

 そして、バインダーをはじめ、機体の各部から蒸気と思わしきものが噴出していたので、おそらく排熱をしているのだろう。


「――さすがに、反動があるってことか」


 あれだけの攻撃だ、攻撃後は動けなくなるぐらいのデメリットはあるだろう。

 攻めるには絶好のチャンスである。が、残念ながら俺たちも同様に、しばらくはまともに動けない。


 魔動人形(マギアドール)は魔力残量が(から)になると、一時的に一切の行動が取れなくなる。魔力を動力源としているのだから当然の話だ。


 魔動人形の魔力は、どういう理屈か知らないが自然回復する。計器に表示された魔力が尽きたからといって、そこで機能停止になるわけではない。


 だが、理屈はわからないが、一度空になった魔力の自然回復量は平時と比べて倍以上遅い。

 一割程度回復すれば、機体を動かすことは可能になる。だが、魔力を用いた兵装やスラスターの使用はセーフティがかかるのか、制限されてしまうのだ。


 回復量が三割を越えた時点で、制限が解除され、自然回復量も元に戻る。こんな感じで、かなりのペナルティを負ってしまうので、戦闘中は常に魔力残量を気にしなければならない。


「シルヴィア、まだしばらく動けなさそうか?」

「はい、まだ少しかかります」


 ガス欠から既に十秒は経過している。幸いなことにガレオニクスの僚機は守りに徹しているのか、こちらに近付く素振りは一切ない。

 だが、ガレオニクスの方は排熱を終えたようで、展開していた部分は元のマント状態に戻っていた。


「よくぞ躱しきりましたね。ですがその悪運もここまでですわ」

「へっ、よく言うぜ。あれだけの大技を放ったんだ、ガレオニクスだって魔力が尽きる寸前だろう?」


 あれほどに高出力の技を放ったのだ、向こうだって魔力残量はギリギリのはずだ。


「確かに、わたくし一人ならアークフレアブラスターは一度きりの大技。排熱が終わったあともしばらく動けませんわ。……でもお忘れかしら? この戦いはタッグマッチでしてよ」

「――なっ!? まさか!?」


 まさかと思い、もう一機の魔動人形へと目をやると、いつの間にやらガレオニクスとケーブルのようなもので繋がっていた。


 あれは……まさか魔力の譲渡か!?


 しまった……そういうことか。あの僚機は盾役(タンク)であり、魔力貯蔵機体(タンク)でもあったってことか!

 まったくと言っていいほど攻めてこなかったのは、余計な魔力を消費しないため……盾役と補充役の役割をまっとうするためだったのか。


 蒸気を目眩ましに使って、すぐにガレオニクスの魔力を補充する。予めそう決めていたのだろう、抜かりがない戦術だぜ……!


「フフッ、お察しの通りですわ。さて、既に動きの取れないあなたたちを葬るくらいの魔力まで回復しましたし、そろそろ終わりにして差し上げましょう」


 ガレオニクスはケーブルの接続を解除し、そのまま剣を抜きながら、一歩、また一歩とこちらへ近付くいてくる。

 

 俺たちは、まるで死刑宣告を受け、ただ座して死を待つ囚人のように頭を垂れるしかなかった。

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