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第34話 共同作業

「えーと、シルヴィア? ほ、ほんとに見てるの? 俺はかまわないんだけど……時間かかるし、つまらないと思うよ?」

「はい、大丈夫です。実は人形技師(ドールマイスター)のお仕事を一度近くで見てみたかったんです。今までいらした技師の方は気難しい方で、作業を見るのはお邪魔になると思って遠慮していたのですけど……ケイタさんなら……その、家族みたいなものですし、お許しいただけるかと。――あっ、もちろん嫌でしたら諦めますが」


 俺が作業部屋へと向かうと、何故かシルヴィアも付いてきた。理由を伺うと、俺の作業の様子を見学したいそうだ。

 俺としては別に問題はないのだが……正直女の子が見てて面白いようなものでもないと思う。ソースは妹。

 それに作り方だって、この世界でちゃんと勉強したわけではないので、俺独自のやり方だ。あまり参考にはならないだろう。


 ……まあなんだかんだ言い訳っぽく考えたが、結局のところ特に断る理由はない。見られてると思うと緊張するけど、そのうち慣れるだろう。


「邪魔だなんて思わないよ。あっ、そうだ。なんなら一緒に作る?」


 シルヴィアが乗る魔動人形(マギアドール)だ。自分の手が加わった方が愛着も湧くというものだろう。

 そんな軽い気持ちで言ったのだが、返ってきた反応は予想より大きなものだった。


「わっ、私がですか!? む、無理ですよ……経験もないし、技術もないですし……」


 手のひらと首を振りまくって、自信がないことをアピールするシルヴィア。

 魔動人形を作るのに特殊なスキルなどは必要ないはずだ。ならシルヴィアだって魔動人形を作れるだろう。

 というか誰でも人形技師になれるんじゃないか? あまり人形技師の数は多くないようだけど、そんなに難しい作業が必要だとも思えない。


「大丈夫、俺が教えるよ」

「ほ、本当ですか? 見学したいと言っておいてなんですけど……一般的に、人形技師の方は技術を盗まれるのを好みません。食い扶持を失うことに直結しますので……」


 ああ、そうか。皆が作れるようになったら仕事にならないもんなあ。まあ俺の作り方はスキルありきだし、広まっても問題ないか。


「構わないよ。それに、誰かと一緒に作るのは初めてで楽しそうだからね」

「はっ、はい! では、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いしますっ!」


 シルヴィアは俺に向かって深々と頭を下げた。いやいや、そこまで畏まらなくていいんだけどなぁ。

 

 んじゃまあ、早速始めますか。今回は、エドワルドさんが設計図と言う名の取説を用意してくれたから、シルヴィアに教えやすくて助かる。


 しかもランナー数が多いからか、さっき見たときに『ランナータグ』や『ナンバータグ』が付いているのを確認した。これは一般等級にはなかったものだ。


 ランナータグとは、AやBなどアルファベットが各ランナーごとに付いていて、それでランナー見分けるのだ。

 ナンバータグは、各パーツごとに振られた番号を示すものだ。例えばAー14と取説に表記があれば、Aのランナーの14番のパーツを探せばいい。


「それじゃあまずはアーティファクトを開けて、中身のランナーを…………えーと、これってランナーって名前で合ってる?」

 

 そういえば俺のプラモデル知識を基準として、ランナーやらゲートやらと勝手に呼んでたけど、正式名称ってあるのだろうか。


「すいません。私は知識が無くて……ケイタさんがそう呼ばれるのなら、その名称で間違いないのでは?」


 そういえば俺は記憶を失った人形技師の設定だったっけか。シルヴィアさんや、これは俺の前世での知識なんですわ。

 ……と、言うわけにもいかないか。いつか本当の事を話せたらいいとは思うが、今はその時じゃない。とりあえずこの場は俺の呼び方で統一しよう。


 俺はアーティファクトを開封し、ランナーを全て机に広げた。


「じゃあ改めて……このパーツが集まった板状の集まりをランナーって言うんだ」

「ランナー……はい、覚えました」

「うん。そしたら取説……じゃなくて設計図を見ながら組み立てていこう」


 俺は巻物状になっている設計図を開いた。そして、その中身を見て驚愕した。


「げっ! なんじゃこりゃ……!」


 広げた巻物に書かれていたのは、俺の頭の中で想像していた説明書の内容とは全く異なっていたのだ。

 現代日本における一般的な説明書は、大半がイラストで初心者にもわかりやすくデザインされているが、この『設計図』とやらは、ほぼ文字で構成されている。


 日本版の取説に慣れ親しんだ俺としては、逆にわかりにくくなってるまである。結構な文字数あるし、読み込むだけで半日かかるんじゃないかこれ。

 

「……」


 俺は巻物をそっと閉じた。だって見てると頭痛くなってくるんだもの。


「ケイタさん!? ど、どうかしたのですか?」

「あーと……その、なんだ。真の人形技師はこんなものに頼らないのさ」


 言い訳にしては苦しいが、シルヴィアは「なるほど」といった表情で頷いている。ピュアっピュアやんけ。俺が守ってあげないと! ……って騙した俺が言うなってね。

 

 セルフノリツッコミはさておき、実際問題この設計図とやらは役に立たない。まあカンで作れるでしょ。

 本来なら望ましくはないが、こればっかりはしょうがない。俺の経験からパーツの組み方を予想していこう。説明書がある場合よりかは多少時間はかかるが……あんなの読み込むよりはましだろう。

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