第27話 一般常識
アリーナでの戦いから一ヶ月。
俺はシルヴィアの家で世話になりながら、屋敷の書庫でこの世界の常識を勉強していた。
ちなみに今更だが、俺はこの世界の文字が普通に読めている。明らかに日本語ではないのに、何故か読めるのだ。
翻訳的なスキルは持ってないんだけど……まあそこは気にしないでおこう。
いろいろ調べてわかったことだが、この世界は大きく分けて三つの大国が幅を利かせているらしい。
ひとつは今俺がいるこの国、『アークライト王国』。
領土は他の二国に劣るものの、魔動人形の元となるアーティファクトが未だ多く発見されるので、多くの冒険者が集まり、国力は未だ衰え知らずのようだ。
次に、技術に優れた国、『プラセリア共和国』。
『獣人』と呼ばれる、獣の特徴を持つ人たちが集まってできた国で、優れた人形技師が多く在籍しているようだ。俺も同士として一度は行ってみたい。
……決してケモ耳とかしっぽモフモフをしたいわけではない。決して。
最後に、『ドグマリオン帝国』。
世界で唯一現存する、伝説等級の魔動人形を保有する国のようだ。
過去の大戦で猛威を振るい、各地の小国を吸収合併してできた国であり、その領地の広さは地図を見たら一目瞭然。あまりに広大だ。
それにしても伝説等級か……俺も一度はお目にかかりたいものだな。
あとは魔法についても調べてみた。
魔法が使えればワンチャン自分でアーティファクトを回収しに行けるかも……と思ったけど、現実はそう甘くなかった。
俺には全属性の魔法適性が無かったのだ。
本来なら魔力を持つ者は、必ずいずれかの属性への適性があり、その属性に応じた修行をすることで魔法を習得することができるらしい。
……が、俺は適性が皆無。ゼロだ。
シルヴィアに頼んで適正を調べてもらったところ、俺には全属性の適正がなかった。魔力量については非常に驚かれたが、いくら魔力が多くても、魔法が使えないんじゃ宝の持ち腐れだ。
……いやまあ? ひょんなことで死ぬかもしれない迷宮になんか行きたくなかったし?
結果として助かったとも言えなくはないんじゃあなかろうか。
……その事実を告げられた晩、俺が枕を涙で濡らしたことは内緒だ。
とりあえず魔動人形を操るための契約ができただでも良しとしよう。あとはモデラーのスキル使用にも魔力使うっぽいしね。うん。
「あー、それにしても暇だな……」
ざっくり必要最低限な知識は頭に入れられたと思う。
あとはどうやって魔動人形を買えるぐらいの資金を得るか……いくら考えても思い浮かばない。
「これじゃただのニートじゃねぇか……」
ここ数日はメシ食って寝るだけの日々。魔動人形を作りたいのだが、高額故にエドワルドさんに譲ってくれとせびるわけにもいかない。俺自身の収入もないから買える当てもない。
ザコブから押収したシルバライザーと、決闘に使った一般等級の魔動人形は俺に預けてくれたのだが、今出来る範囲での作業を終えたのでやることがないのだ。
暇潰しにアリーナへ決闘を観戦しに行ったのだが、一回行ったらめちゃくちゃ人に囲まれて、くっっっそ疲れたからもう行かないようにしている。
なんかあの一戦以来、俺は一躍時の人になったらしい。いつの間にか顔も知られてた。
「こんなことなら、あのとき王女様の話に乗っかっとくべきだったか……?」
多分、王宮専属の人形技師なら、連日作り放題だったろうな。そう考えると惜しいことをしたか……いやいや、やっぱり気楽なのが一番だな。王宮にいたらストレスで絶対ハゲる自信がある。
「あーあ、なんかこう……一攫千金のイベントでも起きないかなー」
翌日、こんなフラグを立てるような台詞を吐いたことを本気で後悔することになるとは、この時の俺は夢にも思っていなかった。




