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第26話 一件落着

「確かに、所持していないのならどうしようもないですわね」

「そ、そうです! ありもしないものを寄越せなど……そんな要求は飲めません!」

「では、条件を対等にすればいいわ」

「……へ? それはどういう……」

「簡単よ。ザコブ・カマセーヌ男爵。あなたが相手に要求したものと同等のものを、支払えばよくってよ」


 ほう。それはつまりザッコブの領地やらなんやらを貰えるってことか。


「ま、待ってください王女殿下! つ、つまりポクの財産や土地全てを渡せと言うのですか!? それはあまりに横暴です!」

「横暴……? このわたくしに向かって、横暴……ですって?」

「ヒイッ! め、滅相もございません……!」


 王女様の鋭い目線にザコブはたじろいでいた。まあ、あんな顔されたらビビるよな。

 俺も横目で見てただけなのに息を呑んだよ。


「あなたの領地や財産は、ヴァイシルト伯爵家と比べたら大きな差がありますわ。本来なら不足分をその命を持って補っていただきたいところなのですが……わたくしの寛大な計らいで不問としていますのよ?」

「い、命……!? そ、それだけはご勘弁を!」

「でしたら、先程わたくしが述べたの条件で成立ですわね。諸々の手続きは後に王国の方で手配しますわ。ヴァイシルト家もそれでよくって?」

「はっ……仰せのままに」


 エドワルドさんは本心では納得していないのだろうな。結局家宝を取り戻すことは叶わなかった。

 あれだけ必死になっていたんだ、金銭的価値以上に思い入れが強かったのだろう。

 

「……もちろん、アイギスの所在は調査させますわ。我がアークライト王国に必要なものですからね」

「――っ! 感謝いたします」


 おお、アフターケアまでしてくれるとは。国のためと言いつつ、多分エドワルドさんを気遣ったのだろう。さてはこの王女様、ツンデレか?


「さあ、これにて今回の決闘は閉幕ですわ。各自解散しなさい。……ああ、そこの……ケイタ・サガミ、でしたわね? あなたは少し残ってちょうだい。話がありますの」

「へっ!? お、俺っすか!?」


 なんで!? 俺なんか悪いことしたのか!?

 王族に目をつけられるようなことはしてないと思うんだけどなぁ。

 ……あ、そもそも俺も来るように言われてたっけ。ここまで触れられずにいたから忘れてた。


「あー……サガミ殿、くれぐれも王女様に失礼の無いようにな」


 エドワルドさんは俺にそう言い残して、その場をあとにする。


 エドワルドさん行かないで! 一緒に居てぇ!


「そ、そんな……この決闘をきっかけに、ポクの成り上がりは始まるはずだったのに……嘘だ……嘘だ……」

「お前たち、この目障りな男を追い出しなさい」

「「はっ!」」


 全てを失い、退室もせずぶつぶつと独り言を呟いていたザコブは、両脇を護衛の人に抱えられ、どこかへ連れ去られた。つまり、今この場には俺と王女様の二人きりである。

 いや、何この展開。早く帰りたいんですけど。


「――では、単刀直入に言うわ。ケイタ・サガミ、わたくしのものになりなさい!」

「え、嫌なんですけど」

「なっ! なんですって!?」


 あっ、しまった。脊髄反射で返答してしまった。

 いやだって仕方なくない? いきなり自分の物になれって言われて、「はいわかりました」なんて言う人いないだろ。


 ……と、思ったけど相手は王族だ。嫌すぎて即答してしまったけど、不敬罪とかで捕まったりしないよな……?


「せ、説明不足でしたわね。事を急いてしまいましたわ。……ケイタ・サガミ、聞けば決闘で使用したあの魔動人形(マギアドール)は、あなたが製作したものらしいわね?」

「あ、はい。そうです」

「あなたの技師としての技術は相当なものだと見受けましたわ。等級が二つ離れた相手に勝ちを収めるなんて史上初でもの、感動すら覚えたわ」

「はあ……光栄です」


 まあ……あれはザッコブ陣営の機体の作り方が雑だったのも大きい気がする。

 それに、俺だってもっと時間と道具があれば更に高いクオリティのものを作れる自信がある。今回作ったのは完璧とは言えなかった。


「そこで、王宮専属の人形技師としてあなたをスカウトしますわ。わたくしの……いいえ、我が国のために働きなさい!」


 ああ、そういうことね。「わたくしのものになりなさい」なんて言うから、奴隷にでもなるのかと思ったよ。

 ……それでも、俺の答えは決まっている。


「お断りします」

「――はぁ!?」


 この世界にプラモデルがあるとわかった以上、俺はなんのしがらみもなく平和にプラモデルだけ作って暮らしたいんだ。冒険したら死にそうだしさ。

 王宮なんかで働いたら、絶対お偉いさんのいざこざとかに巻き込まれるだろ。そんで俺みたいな出自の知れない輩がいたらひがんてくる奴とか百パーいる。俺そういうの苦手なんだよね。


「……わ、わかりましたわ。無理強いはわたくしの主義に反します。ですが、諦めたわけではありせんわ。ケイタ・サガミ……覚えていなさい!」


 強制的に連れていかれたらどうしよかと思ってたけど、意外と物分かりのいい王女様で助かった。

 つっても最後に怖いこと言ってたな。……夜道には気を付けるとしよう。



こうして、王女様との会話を終えた俺は、みんなと一緒にヴァイシルト家の館へ戻った。

 最初は「誰だこいつ」的な感じだった使用人さんたちも、決闘の結果を聞いて大盛り上がり。最後は胴上げまでされちゃったよ。


 そしてこの日は、決闘の勝利を祝して勝利の宴か開かれた。さんざん飲み食いして満腹になったあと、俺はベッドに横になって物思いにふける。


 この世界に来て、最初はどうなるかと思ったけど……宴会の最中にエドワルドさんが「好きなだけここに居てくれていい」って言ってくれた。あんまり甘えるのもどうかと思うが、とりあえず俺が自力で生計を立てられるようになるまで、衣食住はなんとかなりそうだ。


 異世界と言ったらチートスキルで無双するのを想像していたけど、俺にとってはこのスキルの方が性に合ってる気がする。大好きなプラモデルもあるからね。


 ただ、プラモデルの代用品であるアーティファクトがかなり高価なのが難点だよな。

 ……よーし、まずはこの世界のことを勉強しよう。まだまだ知りたいことはたくさんある。魔俺だけにできるお金稼ぎの方法とかを見つけるために、やることは山積みだ。


 でも、俺は諦めない。できることは全部試してやるんだ。


 ――――すべては、異世界で趣味(プラモデル)を満喫するために!

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