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第23話 下克上

「ぐ、ぬ……おのれぇっ!」


 爆煙が晴れ、姿を現したシルバライザーは右腕が完全に消し飛んでいたものの、未だ健在だった。

 くっ、照準がずれたのか!? それとも躱された!?


 ……でも、ライフルを持っていた右手は破壊した。これで遠距離での攻撃手段は失われたはずだ。よし、ここで一気に攻めきる!


「もう一発くらわしてやるぜ! いけっ!」

「――なめるなっ!」


 再びトリガーを引くと、同じように大口径砲が放たれる。

 しかし、今度は放たれる直前にシルバライザーが素早く横へと移動したので、かすりもしなかった。


 最初の一発は油断していて反応が遅れたんだろう。まさか銃口を向けられるとは思ってなかったんだろうな。

 でもそのおかげでこっちがかなり優勢になったはずだ。遠距離からどんどん撃ちまくろう。


「くっ、速いな! 当てられるか……?」


 機動力を活かしてアリーナ内を縦横無尽に動き回るシルバライザー。でもさっきので射撃の感覚は掴んだ……次は当てる!


「よし、ここだっ! ――――ん? 魔力充填中!? くそっ、クールタイムがあるのか!?」


 追撃を放とうと試みたのだが、トリガーを引いても無反応。おかしいと思って計器類を見ると、魔力充填中の表示があった。

 くっ、さすがにこの大口径砲の連射は厳しかったのか……!? たった二発で弾切れになるとは思わなかった。

 表示されたゲージは、じわじわと上昇している。でもこのペースだと再使用まで数十秒はかかる。くっ、こうなったら接近戦に持ち込むしかないか。


「ヒャヒャヒャッ、どうやら魔力切れのようだな! このまま仕留めさせてもらう!」


 敵は残った左腕に持った盾を捨て、腰部にマウントされていたショートソードを構えた。その刀身は、エネルギー的なものを纏っている。

 ……あれで斬られたらヤバそうだな。


「……だが、接近戦なら望むところだ!」


 機動力は圧倒的に劣るけど、装甲と馬力なら間違いなくこっちが上だ。受けて立つ!


「おおおおっ!」

「はあああっ!」


 ガキィィィィンッ!


 巨大な鉄と鉄とが正面からぶつかる音が会場に響く。

 相手の剣はこちらの肩部へと刺さるが、こっちも相手の片足をアームで掴むことに成功している。

 

 計器が赤く点滅し、警告音を発する。幸いなことに、エネルギーを纏った剣はこちらの装甲を貫通するには至らなかったが、警告を見るに楽観できる状況ではないだろう。

 

 だが足は捕えた。フルパワーでクローアームを稼働させるが、さすがに握り潰すことは出来ないようだ。が、しっかりと固定することはできている。これなら移動することはできないだろう。

 奴は片腕を失っている。今なら防御は出来ないだろうし、次の一手は必中……だがどこを狙えばいい!?


「――っ! やっぱりか!」


 ザッコブの機体を見た時に感じた違和感の正体……シルバライザーは流線的なデザインにも関わらず、ちょっとした突起物が多いように見えたのは、ゲート跡が残っているんだ。

 なんて雑な作り方だ、ちゃんとゲート処理ぐらいはしろよ!


 だがそのおかげで弱点を見つけたぞ……!

 胴体のところ……ゲート跡が干渉してパーツが完全に閉じきっていない、隙間があるぞ!


 俺は咄嗟にクローアームの先端をその隙間に滑り込ませ、出力全開で引き剥がそうと試みる。


「うおおおっ!」

「――はっ! 無駄な足掻きをっ!」


 メリメリと、装甲が剥がれる音が聞こえる。やはり、作りが甘いぶん、装甲が脆くなっているようだ。


「なっ!? おい、まさか……やめろっ!」


 慌てて剣を引き抜き、こちらの攻撃を妨害しようとするザコブ。

 ――だが、一手遅かったな。


「どりゃあぁぁっ!」


 ガコンッ!


 大きな音と共にシルバライザーの胸部パーツを引き剥がす。

 すると、あれが魔力核ってやつだろうか。半透明の球体のようなものの中に、ザコブが居るのを目視できた。

 

「あわ、あわわわっ……! 来るなっ! やめろ、やめてくれっ、降参する! 降参するぅ!」


 いや、別に何かする気はなかったんだが……まぁ生身の状態で至近距離からこいつのモノアイに睨まれたらビビるよな。

 ザッコブは降参したし、とりあえず……勝ちってことでいいのかな?


 戦いが終わってようやく周りの状況に気が配れるようになった俺は、機体越しに辺りを見回すが、観客はシーンとしていた。


「あ、あれ……? なんかまずかったか?」


 やっべ、なんかルール違反的なことしちゃったのかな。装甲を引き剥がしてはいけません、とか。


『――――はっ! け、決着です! まさかまさかの展開! なぁんということでしょう! 一般等級(コモングレード)の魔動人形が……銀等級(シルバーグレード)を下しました! こんな戦い、かつてあったでしょうか!? いいえ、ありません! 大番狂わせが起きましたぁ! まさに下克上! 史上初の快挙っ! 今日、今ここにいる私たちは、新たな歴史の証人となったのですっ!』


 実況の人が早口でまくし立てると、一拍置いて会場が一気に沸いた。


「す、すげぇもんを見ちまったぜ……! 俺、今日観に来て良かった!」

「私、感動しちゃったわ。決闘を見て泣くだなんて思わなかった……」

「ヴァイシルト家が木偶の坊で戦いに挑んだ時は勝負を捨てたかと思ってたんだが……違ったんだな」

「ああ、きっとお抱えの人形技師(ドールマイスター)の実力を見せつけるため、わざと一般等級の魔動人形を選んだに違いないぜ。例の武装を使わなかったのもその一環だろ」

「やっぱ英雄の家系はすげぇな……」


 いつまでも鳴り止まない歓声を受け、俺は自らの機体に手を振らせていた。


(やっべ……降り方がわかんねぇ)


 俺的にはさっさと退場したいのだが、どうやったら降りれるのかがわからなかったので、しばらくの間機体に乗ったまま、愛想を振り撒いていたのであった。

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