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第17話 期待と不安

「――さん! ケイ――起き――」


 ん……? シルヴィアの声が聞こえる……?

 

「ケイタさん! 起きてください!」

「――んあっ!?」


 机に突っ伏して寝てしまっていた俺は、シルヴィアの声で目を覚ました。

 変な格好で寝てたからか、テーブルにめっちゃ涎が垂れてた。恥ずい。なんか、シルヴィアには恥ずかしいところ見られてばっかりだな。


「す、すみません。お呼びしても返事がなかったのでつい大きな声を……」

「あ、ああいや平気だよ」

「てっきり部屋に戻ってお休みになっているかと思っていたのですが、作業部屋にいらしたので驚きました」


 もう少しで完成だと伝えていたので、部屋に帰って休んでいると思うのは当然だろう。でも嬉しい誤算があったので、昨晩はやむなく徹夜することになってしまったのだ。


「ああ、ごめんね。ちょっと作業が増えちゃってさ。でもほら、ちゃんと完成したよ」


 俺は完成したプラモデル……いや、魔動人形(マギアドール)をシルヴィアへと手渡す。

 今、俺に出来る最大限の加工は施した。あとは天命を待つのみだ。


「わあ……すごいです。こんな綺麗な魔動人形、見たことがありません……!」

「そう? そう言ってくれると嬉しいな」

「やっぱりケイタさんはすごいです! 尊敬しちゃいます!」


 今回俺が手掛けた魔動人形は、暗めのグレーをメインカラーとした機体で、一部パーツにブラックのものがあるシンプルな配色だ。まあランナー数も少なかったしそんなものだろう。


 こいつはスマートな感じの機体ではなく、全体的にずんぐりむっくりとした造形だ。二足歩行ではあるが、足がそこまで長くない。二十二世紀のネコ型ロボットよりちょっと長いぐらいだ。


 それとハンドパーツは、人間の手を模した五本指のマニピュレータータイプではなく、三本のクローが合わさったクローアームとなっていて、物を掴むのに特化している。

 もちろん、武装の類いは手に持つことができないて。唯一の武装はというと、右肩部に装着された大きなキャノン砲っぽい武装だけだ。

 

 ……なんだろう。多分、重作業用の機体にキャノン砲くっつけて戦えるようにしました……って感じだ。動く棺桶とか呼ばれてそう。


「……勝てるといいね」


 心配半分、期待半分というあまり自信のない発言だったけど、シルヴィアはにっこりと笑って返事をした。


「はい。たとえ結果がどうなろうとも、私はケイタさんを責めたりはしません。あなたのおかげで戦いの舞台に立てるんですから。感謝しかありません」


 俺たちの間に流れる空気が微妙なのには理由があった。

 それは魔動人形の等級(グレード)に関係する。

 一対一の戦いにおいて、等級がひとつ上の相手にはまず勝てないと言われているらしい。もちろん相性や操縦者の技量などもあるだろうし、一概には言えないだろう。

 だが、過去のアリーナでの戦績に基づいて言うのであれば、二等級以上の差がある戦いで、等級が低い側が勝った記録はないそうだ。

 

 かろうじて用意できたのが一般等級の魔動人形の俺たちに対し、相手はどの等級でくるかもわからない。

 この力関係のセオリーどおりならば、銀等級以上が出てくれば正直『詰み』だ。しかし、あの狡猾なザコブのことだ、それぐらいは想定して然るべきだろう。


 微妙な空気の中、決闘を見届けるため、俺はヴァイシルト家の面々と共に決闘が行われる会場へと足を運ぶのであった。

 

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