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第15話 お手のもの

「ケイタさん!? どうされたのですか!?」

「ご、ごめん。ちょっと驚いちゃって……」


 俺が急に叫ぶものだから、シルヴィアに心配されてしまった。

 いかんいかん……落ち着け俺。深呼吸、深呼吸……。――よし、落ち着いた。


 改めて箱の中身をよく見てみる。そこには『ランナー』と呼ばれる、プラモデルを作るのに必要なパーツ同士が繋がっている枠組みがいくつか入っていた。

 さすがにランナーごとに個包装はされてなかったけど……うーん、どうみてもプラモデルだよなこれ。


 恐る恐る取り出し、触ってみるが、感触はプラスチックと同じだ。ある程度曲げられるほど柔軟性があり、かといって強度がないわけじゃない。けど、なんとなくだが少し違うような気がする程度の違和感もある。

 材質がプラスチックでなければ、厳密にはプラモデルとは言えないだろうけど……俺にそれを知る術はない。ただ少なくとも、俺の感覚ではプラモデルと同じ要領で作っても問題なさそうだ。

 

「ケイタさん……やはり難しそうですか? すません、設計図の入手もできなくて……」


 ランナーをいじりながら黙っていると、再びシルヴィアから声がかかる。いや、違うんよ。難しいというか……得意分野なんだよね。

 異世界でプラモデルをお目にかかるとは思ってなかったんで、ちょっと驚いてしまいぼーっとしてしまった。そうだ……シルヴィアたちには死活問題だったな。気を入れ直そう。


「うん、大丈夫。これぐらいだったら作れると思うよ」

「ほ、本当ですか!? ケイタさん凄いですっ!」


 設計図……まあ説明書か。シルヴィアはそれを用意できなかった無いと言っていたが、まあ問題ないだろう。今まで百を超えるプラモデルを作ってきたんだ。どのパーツを組み合わせるかなんてのは簡単に推測できる。


 それに、このキットは親父が子供の頃に販売していた、旧キットに近いな。ランナー数はわずか四つ。色も二色だけだ。難易度は高くない。

 

「ええと、朝までに終われば大丈夫かな?」


「そうですね、決闘は明日の正午から。その一時間程前に魔動人形(マギアドール)と操縦者の登録がありますので、それまでには完成していれば問題ないです」


 そうか、それなら寝なければまだ丸1日近くあるし、余裕だな。

 しかし、ホントにこのプラモデルがあの巨大ロボットになるのか。


 自分の作ったプラモデルに乗って戦うなんて超憧れるやん……男のロマンやん……。

 一瞬、「俺が乗ります」と言いかけたが、これは大事な勝負だ。素人の俺がでしゃばる場面じゃない。……全部終わったら俺も乗せてもらえるよう頼もう。絶対に。


「わかった。それまでには確実に完成させてみせるから、期待して待っていてよ!」

「……! ありがとうごさいます、ケイタさんっ!」


 感極まったのか、シルヴィアが俺に抱きついてきた。

 あ……いい匂い。そして柔らかな感触。……良い。


「――ゴホン!」


 クロードさんの咳払いでシルヴィアは我に返ったようだ。すぐに俺から離れてしまったが、顔が赤くなっているのを俺は見逃さなかった。


「……お嬢様。例え魔動人形が無事完成したとしても、こちらが不利なのは変わりません。相手は相応の機体を用意してくるでしょうからね」

「――そう……ですね。喜ぶのはまだ早かったですね。……でも、なんででしょうか。ケイタさんならなんとかしてくれる、そんな気がするんです」


 信頼してくれているのはありがたいが、クロードさんの言うとおりこのプラモデルはあんまり良いキットじゃないってのはわかる。

 多分日本だと五百円ぐらいで買える類いのキットだ。それがどう強さに関係するのかはわからないけど。


「……それじゃあケイタさん。くれぐれもよろしくお願いいたします。何か必要なものがあれば遠慮なく言ってくださいね。食事も用意しておきますので、頃合いになったらこの間食事をした部屋へお越しください。またご一緒しましょうね」

「ありがとう。楽しみにしてるよ」


 シルヴィアとクロードさんが退室するのを見送ったあと、俺はランナーを机に広げ、早速作業へと取りかかった。

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