プロローグ
久しぶりの新作。
前作『おれは忍者の子孫』の続きに近い物語となっています。
最初の段階では前作とのつながりはほとんどありませんが、途中からは少しつながりが出てくると思います。
枕元のスマートフォンの長い振動で、僕は目覚めた。
目覚ましならば音が出るように設定しているはずだった。
そもそも今日は日曜日だ。
目覚ましなんて設定した記憶もない。
だから電話だろうと判断した僕は、恐る恐るスマートフォンを覗き込んだ。
「まさか、お祖母様?」
そう呟きながら。
しかし画面には祖母を示す文字は表示されておらず、そこには見慣れない番号だけが映し出されていた。
「もしかしたら、ということもありますからね」
僕は小さな希望を胸に、スマートフォンへと手を伸ばした。
2度目の教員採用試験にも落ち、この先の人生がどうなるかと不安になり始めていた僕は、藁にもすがる想いだった。
そんな僕の気持ちを察しているかのような優しい声が、スマートフォンを通して僕の耳へと届いてきた。
若くはない声。
だからこそとも言うべきか、その声は慈愛に満ちていて聞いている僕も心安らいだ。
でもその優しい声は、さらに僕へと希望を与えてくれた。
「我が桜花中学校で、教鞭をとっていただきたいのです。よろしければ、1度本校へお越し頂けませんか?」
「は、はいっ!是非とも伺わせていただま――いただきやす!!」
いつも意識している物静かな口調を忘れ、しかも若干噛みながらも僕はスマートフォンに向かって、叫ぶようにそう返した。