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第二話 宿命という名の運命 上(Ⅲ)

文が上手くなーれで上手くなれたらいいんですけどね…、いっそ流行りのAIが俺の好きなキャラ達で、思い描いてる道中で、そして思い描いた結末を書いてくれてたらこんな事しなくていいんでしょうけど、多分そこまで一致する作品を作るまでAIに学習させるより、不格好な出来でも自分で纏めた方が早い気もするのが面倒くさい所。

 ツフギは心配そうな顔でこちらを顔を覗き見る。顔が近いよ、乙女の唇は運命の相手に取っておきなさいと言いたくなるが、顔どころか手まで使ってこちらの顔を確認するツフギ相手では、そんな言葉は出てこなかった。

「な、何か…、問題でもありましたでしょうか?」

「いえ、大丈夫です…、良かった」

 ツフギは安堵した表情でこちらを見て、そして慌てて距離を離す。ようやく自分が取った距離感に気づいたらしい。運命の人以外眼中に無い俺以外であればきっと危なかった。

「コホン、いいですかピースさん、魔力放出魔法はですね、この世で唯一顕現という工程を踏まずに全魔法を使う事ができる様になる魔法なんです」

「なんだ、凄い魔法じゃん。俺って実はすごかったの?」

 いきなり心配そうな顔をされたモノだから、こちらも死ぬんじゃないかと心配になった。

「良い部分だけ見ればという話です」

「あー、つまりだな兄ちゃん。魔力放出魔法って言うのは自分の魔力を際限なく放出してしまう魔法なんだよ、でヒトの魔力が0になった場合は死ぬ、普通は死ぬよりも前に魔力が少なくなった時の症状がでるんだが…魔力放出魔法を使っている場合それは出ない」

「そして魔力放出魔法を使ったヒトの多くは、魔法を自分で制御できていると勘違いして、常時自身の魔力を放出し続けてしまい、死んでしまうそういう人が多いんです」

 ん?俺普通に死ぬ可能性あったって事?あぶねーと心で思いながらも冷静に取り繕う。

「まぁ俺は制御出来ているんでしょ、なら大丈夫、大丈夫…」

「余裕ぶってますけど手震えてますよ…、それよりも昨日空を飛行していたのも、飛行魔法ではなく魔力を放出して飛んでいたって事ですか?なんて無茶な…」

「魔力放出覚えた時に、空飛べるかもと思ったら飛べたんだよ、いいだろ別に…」

「良くありません!そんな事をして本当に死んでしまったらどうするんですか?というかピースさんは冒険者になるとき魔力量測定しましたか?何故その時に…」

 魔力量の測定?何の話だろうか?そんな事をした覚えはないのだが…。そもそも自分の魔力量が知る事ができるというのも今しがた始めて知った。

「測定なんてしてないけど、冒険者になりたーい、おっけーでなれたし」

「「ハァー……、ハァー…」」

 こちらの顔を見て二人が一度大きなため息を吐いたと思ったら、今度は二人が互いを見合ってもう一度大きなため息を吐いた。

「兄ちゃん、それは…闇冒険者ギルドってやつだ、簡単になれる代わりに費用とか色々請求されただろ?普通はなるだけならそんな金はかからねぇんだよ」

 あの街は二度と行かねー、そう心に誓い。ツフギの青空魔法教室兼休憩時間は終わりを告げて、明日到着する筈の馬車は特等席の一人と、荷物と化した二人を箱詰めとしながらゆらりゆら、ガタゴトと次の街への旅路への歩みを進める。

「そういやおっちゃん、この荷物ってどこへ運んでるの?」

「言ってなかったか?ノケモノの街行きだげど、どこに行きたいとか希望あったのか?」

 おっちゃんが言う行先の希望なんてないが、それでも強いて挙げるのであれば。

「行きたい所はないけど、強いていうのであげるのであれば、俺が目を奪われた運命の人にもう一度会いたいかな?次の街で会えるといいな、なんて考えているけど」

「兄ちゃんは随分ロマンチストだな、それにしてもそこまでの相手なのに話さなかったのかい?」

 おっちゃんの言う事も正論で自分は酷くロマンチストだと思っているし、そもそもその自分が運命の人と思った相手も前世で一度会っただけの人、なんならストーカーとも呼べる執念かもしれない。

「ピースさんの運命の相手、少し私も気になります」

 こんな狭い荷台と御者台では、まだ恋も知らぬ生娘が興味を持つこともわかってはいた。

「まぁ、話す機会があれば話すよ、教える気はないけど…」

 故にここは逃げるが勝ちと言う事で、振動を受け続け悲鳴を上げ始めた腰を無視して、ピースは屋根のついた荷台から微かに見える月明かりを見ながらふて寝する。

 ガタンゴタンと夜の月明かりが朝の陽光へと変わり、涼しいどころか少し寒い空気から日差しによって暖かくなったような空気を感じつつ揺れを味わう。どこまでいってもまだ季節は春だ、暖かいと思っても少し寒い。よって寒空に布に一枚で晒された人間がどうなるかなんてものは、容易に想像が着く。

「ビエックシュ…」「クシュン」

 音は違うがタイミングはバッチリ合った二人のくしゃみが体を揺らし、そして太陽が昇り始めたその空にきっとウイルスを持った、飛沫が宙を舞った。

 街を囲う様に築かれた、もしくは山を繰り抜いて築きあげた街なのだろうか?それでなければ説明がつかない程の山々に囲まれた街に、振動が伝わり過ぎる荷台は止まった。

「ようやく着いたー、もうこの荷台生活は嫌だぁー」

「そうですねぇ、もうしばらくはあの振動は…腰が…」

 青髪の少女と赤髪の少年は駄々を漏らしながらも、荷台から積み荷を降ろし街を一望する、どんな街なのだろうか?ノケモノの街という位なのだ、きっとこの世から見放されたノケモノ達が居るに違いない、だって奴隷商人のおっちゃんを雇う人間なんて常識外れの野蛮人も良い所だ、きっと目には傷、体には刺青、そして体毛はもじゃもじゃ。

「何を考えているのか当ててあげましょうか?きっとここの住人に失礼な事を…」

「ノケモノの街って名前から、非合法な人間の集まりと思われる事も多いですからね」

 体躯2mを優に超し、額には傷があり、腕に刺青を掲げ、そして体毛が…濃い。

「ケモッ……?ケモッ!」

 思っていたヒト?とは違った、ヒトというよりはきっと獣に近い、獣と違う所を上げるならばヒトの様な二足歩行に、そして獣が決して発する事はできないであろう言葉を綴り、何よりもその街の名前とは裏腹にその対応は誰よりも紳士だった。

「ケモ?あぁ…この姿でしょうか?確かに初めて見る人には驚かれますね。では改めて自己紹介を…、先祖にヒトに獣の力を進化の一部を与える事はできないかという単純な疑問から生み出された獣人。昔は拠点を野に点々と築き一つの場所に定住しなかった事から、文書などでは、野に点在する獣族、故にノケモノ族と言われております。そしてここが皆の暮らしを安定させる為にいつかの長が作ったノケモノの街です。ようこそ、歓迎します」

 そう獣度3対ヒト度7の紳士的な態度を取る、ノケモノ族の一人が世間知らずの駆け出し冒険者と、自分を落ちこぼれと勘違いする二流魔法使いに挨拶をする。それはもう駆け出し冒険者の勘違いを鉄拳制裁する位には丁寧に、そして二流魔法使いを口説くかの様に。

「あはは…、ノケモノ族って野獣族だったですね…、すいません、あははは」

 ピースはツフギの襟を引っ張り、その場から逃げ去るように立ち去るお賃金は既に払って貰った後は自由時間、ある程度の時間が経てばこの街ともオサラバして、酷い誤解をしていた人間はオサラバ、そしてそれを予め教えなかった魔法使いとは…、どうなるのか。

「って、どこまで連れてくるんですか!自警団に突き出しますよ!」

「ごめんめさい、もうちょっとだけ魔法を教えてもらいたくて、逃げたかったのも…」

「後者が本音なのをもう少し隠す努力をしてください、っと」

「ふぁい、ごめんなさい」

 幾ら無理やりと言っても杖で殴る事は無いだろうに、でもまぁそれが魔法教室の駄賃になるのならばこの痛みも我慢しようと思えるが、最悪な事にこの魔法使いにも、そしてこの駆け出し冒険者にも今は払える駄賃があった。積み荷を降ろし終わり、街を見渡して、この街は野蛮ではなく、ヒトは人ではなく獣である事を訂正されて、居心地の悪さにその場から逃げてから、人通りの少ない路地裏で魔法教室を開く。時刻はきっと昼を回って、春らしくまだ陽は短くまだ昼だと思っていたら夕方を迎えそう、そんな時間。従って導き出される彼女が求める報酬はただ一つ。

「夜ご飯と宿代負担で手を打ちましょう」

「はいはい、それで俺のお賃金はほぼ0になるけれど、まぁそれで手を打ちましょう」

「では、お教えしましょう、魔法の基本のホ位の魔法の授業を。落ちこぼれの魔法使いの授業ではありますが、それでもよろしいのならばお教えしましょうとも」

 またそれだ、君は決して落ちこぼれではないというのに、何故か君は自分の事を劣っていると誤認している、それを間違いだと気づかせる事は可能だ同じ人生を加算すれば約60年余りの人生が、君の認識は誤りだという事を教えてあげられる。けれどそれをピースという人間の役割ではなく、君に金言を授ける人か、君の運命の人、あるいはツフギという君自身だ、事前に情報を知っている卑怯者の言葉ではない。けど心の内ではこう思う、君は決して落ちこぼれなんかではなく、間違いなくピースという人間が初めて見たこの世界に置ける天才魔法使いだという事を。

「それで何を教えてくれるんでしょう、第二回ツフギ魔法教室のツフギ学長は」

「学長なんて、私はそんな柄ではないです、けれど今回も見せた方が早いですね」

 こちらを碧眼ではなく赤眼で睨みながら、どことなくシンパシーを覚えるその瞳に少しだけ怯えながら目を逸らしツフギが魔法を使うのをただ待つ事にする、笑顔でその場を乗り切るそれが一番だと思った、だからその目で睨むのを止めて~。

「まぁいいでしょう、今回は…、召喚魔法ですかね?」

「いきなり難易度が上がった気がするけど、本当に順を追ってる?大丈夫?」

 植物を生成する魔法の次は、何かを召喚しようというのだ、順番あってる?と聞きたくもなるがまぁ植物の生成も実質召喚な気がしなくもない、多分大丈夫だろうと楽観的にツフギの話に意識を戻す。

「といってもやる事は前回やった事に一工程を加えるだけですが…、ですがこれはじっくり見た方がいいと思うので面倒くさいですが魔力を顕現させて見せますね」

 杖を前に掲げ、おっちゃんを縛る時に見せたように無詠唱で赤い魔力の塊を空中に顕現させる。魔力は淡い青色ではないんだと思いながらも、淡い赤色の物体ではないが気体でもないその形容しがたい塊を、変換し、加工し、顕現させた、その赤い姿は蝶だった。

 形を蝶にするならばきっと俺にもできる、けれどその蝶は紛れもなく蝶で、命を持ったように動き始めた、何もなかった場所から己の体内に眠る魔力だけを糧に、間違いなく生命を司った蝶を顕現させた、それも前回の花の様に大量の美しい赤色の蝶をその場に。

「すごーい、本当に無から生物が召喚されたー、魔力から生み出されただろうけど…」

「まぁ態々見せましたが、簡単に言えば創り出した器の中に生命に必要な器官を作り、そして命という名の魔力を込める。体裁を整える為に加工の加工をし、顕現後のスタートキーを用意する、ざっと言えばこれだけです」

 ツフギは瞬きと共に赤眼を碧眼に戻し、こちらが理解出来ない事をさも当然の様に説明し、証明して見せた。これを学んだからという理由で済ませていいのだろうか?間違いなくツフギは魔法使いとしての才を持っている、それだけは断言できた。

「まぁ一発では成功できないと思いますがやってみてください、ダメな所はそこから修正していきますので」

 ササ、どうぞどうぞと手をこちらに向け魔法を使うようにツフギは急かす、急かしたら出来るモノもできなくなってしまうのだから急かさないで欲しい。と言う事を口に出したらまた睨まれそうなのでここは一つ心に押しとどめて、れっつちゃれんじー。

「なんて詠唱にすればいいか…、そのままでいいか『召喚(サモン)』」

 軽そうな魔力をイメージし変換、蝶の形を意識し更に外殻の内側に中身を形成、そしてこのまま顕現させてもただの精巧な蝶の置物ができるだけだから、スタートキーとやらを生成する。どうやって?一先ず魔力を限界まで凝縮して魔力には困らないような感じで…。

「どうじゃらほい?」

 閉じていた目を開き、ピースは目の前を見る。そこにはポカンと口を開いたツフギが居るだけで蝶は居なかった、顕現の工程をしくじったかな?と思った矢先の出来事、視界を覆うように淡い青色の蝶がヒラヒラと花ではなく、こちらの鼻に留まる。

「正直驚いています、まさかできるなんて…、加工の加工を覚えるにはこれが早いかと思ったんですけど…、召喚魔法出来ちゃいましたね…、にしても不格好ですけど」

 花もとい鼻から再び飛び立つ蝶は、左右の羽の長さが違くその場に留まるのも困難な状態で何とか飛んでいる、間違いなく何もない場所から、魔法で蝶を創りあげた訳だ。

「不格好は余計…、イメージが良かったのかな?案外スタートキーの想像は簡単だった」

「それが一番難しい筈なんですけどね…、どういうイメージで形成しました?」

 どういう風に?いつも通り無意識にやってしまっていた事をどういう風に説明したらよいのか考えてみるが、いい案は思い浮かばないならば、ツフギが見せたように見せるのが手っ取り早いのかもしれない、それがいいのだろう。

「どうって、こう?」

 近くにある片手程の石ころをピースは手の内に乗せ目の前に掲げる。詠唱する必要性はなく、ただ一つの結果だけを引き起こす、生まれてから何故か持っていたその現象を引き起こす事にだけ特化した魔法の様なモノ。片手程の石ころは丸薬程の小ささまで圧縮した。

「能力……」ツフギはボソッと呟いた。


ここまで読んで頂きありがとうございました。

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