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序幕 運命的確率な異世界転生とその特典

はい、前作を全て予約投稿し終えたので新しい物語を投稿します。

内なる中二病心と、文才の向上を目指す作品です、そしてなんか自分の書く作品ビターエンド見たいのが多いのでハッピーエンドにすると決めてます。

 人生で一度くらいは、劇的で運命的な恋をしてみたいというのは、ロマンチストの性だろうか?今の自分では考えがまとまる事は無い、まとまらないのが原因か少し苦しい。

 情熱的で過激的、そんな喜劇的なチョコに砂糖を振りかけた、甘露の様な恋でも。

 魅力的と脇役的、そんな悲恋的な決して甘くなく、レモンの如く酸っぱい恋でも。

 惨劇的で凌辱的、そんな悲劇的な救いのない、秋刀魚の内臓の様な苦い恋でも。

 猟奇的と破滅的、そんな絶望的な口にできるのは毒だけな、えぐみの様な恋でも。

 全部を味わいたいと望む訳でも、どれか一つを選択して味わいたいと望む訳でもない。そんな本の中でしかあり得ない、妄想の塊の様な恋や愛を一度くらいは味わってみたい、向かう先が甘美な楽園であろうと、底なしの沼であろうと、その恋や愛を味わう事があるのならば自分はどれだけ幸せなのだろうと考えた事が、一度くらいはあるのではないか?

 自分はその一人だ、このような状況に陥っても、まだそんな非現実的な事を考えている。ああいう恋をしてみたい、ああいう人生を歩んでみたい、それだけが自分の頭の中をぐるぐると回る。だがそうも考えていられないのが現状だ、別の事を考えなくてはならない。例えば免許証に移植の有無を書いていただろうかとか、そういえば今日は人生初めてのボーナスの日で通帳に記帳するのが楽しみな事を思い出したり、母の誕生日プレゼントをそろそろ決めないと渡し損ねる時期になっていた事も、昔一度しか会った事がないというか、あの日以来会えなかったけれど可愛い子が昔居たなーってどうでもいい事が頭をぐーるぐる。体は重くて動かなく、世界は半分赤いし真横に見える、頭の付近に水にしてはちょっとドロドロな水っぽさを感じて思い出す。

 そういえば自分は、確か大きな衝撃を受けて…、それから何があったんだっけ?考えがやっぱりまとまらない、あぁでも一つだけ口にしたい事があった。

「父さん…、母さん…、ごめん…ね」

 自分は運命だと受け入れられるが、残された者はきっとこれを運命だとは受け入れられないだろう、受け入れないでくれたら嬉しい。

 野次馬の声か、救急隊の声かも聞き分ける事ができないし、体に感じたこの感覚はもう一度何かにぶつかって衝撃を受けたのかもしれない。

 あぁ…、少し眠い、目を開けてはいられない。半分赤いだけの景色とは裏腹に、何故か見上げる事のできた空は、雲一つも無く、どこかへ行く事を祝福するような程青空だった。

 きっと次は今回よりは運命的な旅路になる事を祈って、ゆっくりと目を閉じた。


 死んだであろう人間が向かう場所は何処であろうか?天国、地獄、あるいは永遠の無?それとも輪廻転生の時までその場待機?どの選択肢も御免被りたいところだが、待つのは想像もしていない場所であった。あるのは何処までも広がる宇宙の様に広大な星空と、たった一つの星空に浮かぶ絢爛な玉座、そしてそこに鎮座する一人の少女。

「という訳で、貴方の人生が事実上終了した訳ですが、どうします?死を受け入れますか?帰す事はできませんが、新たな世界へ導く事と、その世界に持っていける特典の一つくらいは用意できますが、どうしますか?」

「という事で?どういう事で…今、ここで、俺が、新しい世界へ?どういう理由?そもそもどうやって?そもそもアナタは誰ですか?」

 この訳が分からない程美しい大銀河とも言える星空の中心で、いきなり話が進められても俺には理解が追いつかない、全部を教えろとは言いはしないが、何故ここにいるのか、それだけは知りたいというのは、果たして傲慢だろうか?

「えぇーめんどくさいですねー、貴方は別に貢献もしていなければ、ビックリするほど不幸な目にも合っていない、ただの運とちょっとした気まぐれによって、私という神の前に立ち恐れ多くも転生の提案を受けているんですよ?ご縁がありませんでしたと破談にしてもいい所なのに何様のつもりですか?」

 絢爛な玉座で自らの権威を振りまく、随分傲慢な神様も居たもんだ。そもそも何様と言われても俺は誰様かもわからないだからこそ知りたいのだ、この顔だけ良い傲慢女神め。

「私の容姿を褒めたという事実だけを都合よく切り抜いて、他は聞かなかった事にしてあげましょう、そうして次に貴方が言いたい事を言い当ててあげましょう」

「「何故口に出していないのに、わかるんだ?」」

 見事にシンクロして同じ言葉を、きっと一番美しい大銀河の真ん中で発し合う。

「まぁこれで理解したでしょう、そして貴方の問に答えるのも面倒ですが簡潔でよろしいのであれば答えてあげましょう、答えは解りきっているので聞きませんが」

 ドヤ顔でこちらをナチュラルに見下す、女神様はどこまでも性格以外は美しかった。

「コホン、三度目はないですよ?では貴方の人生を語りましょう。ごく普通の家庭に少しばかり遅めに授かった第一子、(はこび)(こう)(めい)さん。ぱっとしない幼少期から青年期を送り、就活中に困っている人を助けた結果、面接に遅刻し面接官にフルボッコ、そうして精神を病み約1年弱の診療生活の後に、就職にチャレンジ理解を得られる会社に入社し1年弱の丁度ボーナス日に交通事故により脳死の診断を受け今ここに、ついでに受けられる特典の一覧表をどうぞ、まぁこれで以上です質問は?」

 淡々と顔だけが取り柄の女神に自身の人生を語られるのは癪だが、いかに自分が平凡な人生を送ってきて、最初に女神が言った通りいかにこの世に貢献していないが、良く解るいい説明でした。この貢献度の無さであればこの微妙としか言えない特典のラインナップも順当だろう、悔しい程にその通りだが一つだけ女神が語り忘れている事を思い出す。

「女神さん、女神さん、面接に行った時に一人の女の子の命を救ったとも言える行動を忘れていやしませんか?あれは人類に対する貢献とも言えるのではなかろうか?」

 こちらの言葉を聞いて女神は呆れるように首を振り、美しい銀河に唯一浮かぶ絢爛な玉座で足を組みかえ言葉を発っする、そんな事は折り込み済みと言わんばかりに。

「知ってますよ?それがあって、尚且つ貴方に何も非が無かった交通事故なので、この特典が獲得できるのです、善行は積んで損はありません私が見ておりますので、しかしその善行が一人救った程度では特典の質の向上には繋がりませんよ?」

 さも当然の様に言い放つ女神に対して、俺は少し苛立ちを覚える、自分の人生が一度バラバラになる程の選択肢を選んだにも関わらず、得られる特典は少しだけ頭が良くなれる、少しだけ運動神経が良いetc、微妙としか言いようがない、これでは文句の一つも。

「いいですか?たった一人の命を救った程度でいい特典が得られると思わないでください、貴方如きが一人救うよりも、金持ちが無駄金を大量に使う方が世の中の為になっているのですよ?それに何もしていない人間が特典を得られるなんて創作物だけです」

 こちらが言葉を発する前に、顔がやたら良い女神にぐうの音も出ない程に論破される。言っている事が事実であるだけに悲しい気持ちになった、地獄の沙汰も金次第とはよく言ったもので、普通の人間が1個の物買うより、馬鹿が100個同じ物を買った方が確かに経済を回しいている、まぁ行先が地獄ではなく来世という違いはあるのだが。

「納得いただけなければ、いつか来る輪廻転生のその日まで無限とも言える時間を待つ事になりますが、どうしますか?」

 玉座に座る女神は笑顔で究極の選択でもない、対比効果とでもいうのだろうか?最初の条件でも大してうまみは無いが、更に悪い条件を出してそっちの方がいいのではと思わせる、が…順序が逆だった気もする、しかしこの女神はこちらがどちらを選ぼうともどうでもいいのだろう、どちらにしたって女神の労力はきっと同じで、大した違いではないのだ。

「じゃあ、ちっぽけな特典でその異世界とやらに転生させてくれよ」

「最初からそう言ってくだされば余計な質問も、会話もせずに次の仕事に取り掛かる事ができたのですが、まぁいいでしょうでは渡したモノの中から特典を選んでください」

 何処に床があるかもわからない銀河の上で腰を掛け、特典表に目を通す。正直な話をしてしまうと、最底辺の特典表らしく、目移りするモノは存在しない。これならば別に特典が無くてもきっと一緒だろう、それに何かを貰って努力を放棄するというのは、少しだけ、少しだけではあるが、気に食わない。けれど一つだけダメ元で女神に問う。

「女神様、ここに書いていないけれど、一つだけ確認してもいい?ダメだったら特典無しでそのまま、役目をはたして異世界にポイ捨てしてくれて構わないから」

「なんでしょうか?大きい要求をして、特典を少しだけ良くする交渉でしょうか?」

 先ほどの考えもやっぱり、女神には筒抜けだったらしい、そんな交渉術があった気がするだけという話で、決して自分が使おうとしている訳ではない。

 この綺麗な銀河の上に居る事、異世界という創作物の様な体験ができる事、それだけで俺はきっと誰よりも恵まれている。だけど前世というのか?今生というか、まぁ果たす事のなかった事、ただ一つだけ叶えたい願いがある。小さな願いかそれとも強欲過ぎる願いかは、きっと女神が決める。強欲過ぎだと特典を全部剥奪されようが、転生の権利を剥奪されようが、それは自分が辿る運命だと納得できるから、女神に一つ問う。

「俺が生きていた頃の記憶の保持、それが俺の願いなんだけど、どうかな?」

 銀河に浮かぶ玉座に足を組み座る、余裕綽々な女神が少しだけ驚いた表情で、手掛けに手を当て少し態勢を持ち上げる。それだけ不遜な願いだっただろうか?

「いいえ?不遜な願いではないですよ?ですが理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?神として人の子個人に肩入れする事は禁止されていますが、少しだけ興味があります」

 神に興味を持ってもらえるとは、そりゃ光栄な事だ。まぁ興味を持ってもらった所で特典が華やかになる事は無いと解っているのが、悲しい所だが…。

「俺には大切な記憶があってその記憶の中から離れない人が居る。きっとあの子はまだ死んでないし、そもそも転生とかが、あの子を待つかも解らない、そもそも名前だって知らないし、顔だってもう朧気だ、俺が生きていたとしもまた会えるのかも解らない。けどもし、もう一度そんな心に残るあの子と、異世界という遠い彼方で出会えたら?それはきっと運命的だと思わないか?俺はそんな運命的な体験をしたい、それを楽しみに生きてみたい、理由になっているかな?それとも聞いてみただけで俺の特典じゃあ記憶は無理?」

 少し動揺した女神は、銀河に浮かんだ多分一番美しい景色の中にある絢爛な玉座に今一度腰を掛けた後、コホンと咳払いした神の姿はどうしようなく美しい、ここまで美しいと思えるモノは一生拝める事はないだろう。なのに、きっとどの誰よりも美しいのに、俺の胸はときめかない。美しすぎる故か、それとももう既に俺の心は誰かに射止められているのか。それは今の自分じゃあ、解らない、解りたくもない、解ってしまえばきっと、運命的ではなくなってしまうと思うから。

「いいえ、実に良い心持ちです、その特典確かに私という神が受理します」

 銀河の中、自らが星となったような輝きを放ち、そして自らの意識というモノが少しづつ遠のいていく、これから始まる第二の人生の幕開けを予感させ銀河の星々に落ちていく。

 物語の主人公でなくていい、村人Aでいい。そんな存在でも数多の記憶の中、僅か数十分にも満たない彼女との邂逅が再び叶うのならば、きっとそれは運命だ、運命的な人生だ。


 広大な銀河に浮かび、絢爛な椅子に座る神を自称する女性が呟いた。

「良い旅路(じんせい)を、きっと貴方の旅が運命的なモノになるよう、私も祈らせていただきます」

 神は決して個人に肩入れしない、しかしかの者の魂であれば人ではない、だから神たる女性は祈るのだ、かの者の魂の終着点がどうか良い記憶でありますように…と。


ここまで読んで頂きありがとうございました。

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